2024-03

自作原稿抜粋

『第一回、東京家出の記』ーーー10

僕は、就職活動をする。  僕の借りた(新聞屋さんが用意してくれた)アパートは、三畳一間のつくりだった。他に、小さな流し台スペースがあるのみ。  部屋の壁が薄いので、隣りの声が丸聞こえだ。  隣りの片方は、夜中に電話をながながとする男性。 「...
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『第一回、東京家出の記』ーーー9

杉並での生活にも大分慣れてきた。  まだまだ、哲学科の大学生の先輩の後について回るだけで手一杯だった。  所長と、どれだけルートを覚えたかを確認される行程に出た。  新聞屋の仕事の場合、次の配達先への地図というのが、ト(隣り)、とかY字とか...
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『第一回、東京家出の記』ーーー8

次の日、俺は、夕方に目覚めた。  ホテルのチェックアウトを過ぎた延滞料を払って、ホテルを出た。  もう、俺には余裕がなかった。  第一条件として、住み込み(寝るところ有り)で待遇してくれる所であれば、どこでもいい気になっていた。  求人情報...
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『第一回、東京家出の記』ーーー7

銀行は三日連続で休みなのであった。  月曜日が祝日だったから。  眠っていない土曜日を過ごし、夜中じゅう歩いた後の日曜日。その夕方には、流石に俺は観念した。  ともかく休みたい、一旦眠りたい、そう思った。  警察に教えてもらったけど、質屋の...
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『第一回、東京家出の記』ーーー6

次の朝になって、俺は、面接に動く、とM君に伝えた。 「そうか、頑張れよ」  俺が、彼のアパートを出かけると、M君は、 「楽器、置いて行けよ。動き回るのに邪魔だろう」  と言った。  俺は、彼の助言には従わなかった。 「いいや、大丈夫だ」  ...
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『第一回、東京家出の記』ーーー5

次の朝、例の喫茶店に行った。  だが、まだ早かった。  一度、店を出、散歩し、(出来るだけ東京の各所も見ておこうと思って)二時間位時間を潰したが、結局、喫茶店に戻るしかなかった。  大阪からミュージシャンになる為に家出してきている同年代の男...
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『第一回、東京家出の記』ーーー4

東京駅に着いた。  金は充分にある。  とりあえずはねぐらの確保だ。  まずは、友達を作る動きにつくつもりだし、(デビューするにはバンド形態の方がいいかも知れないなどと思っていた)そうなれば、渋谷がいいか、と思って、僕は渋谷を目指した。  ...
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『第一回、東京家出の記』ーーー3

次の朝、ーーーお盆休みが十五日までだったと考えると、十七日になるがーーー僕は、個人が経営してる小さなスーパーマーケットで(コンビニというのは、当時はなかったと思う)サンドイッチとおにぎりと缶コーヒーを買って朝食をホテルの部屋で済ませ、チェッ...
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『第一回、東京家出の記』ーーー2

僕は、いつものように、その日の朝、会社に向かった。  しかし、途中で、やっぱり前日まで考えていた家出が頭をもたげた。  もう少しで会社というところで、僕は車をUターンさせ、家出の道筋に入った。  隣りの市まで走ったとき、或る考えが頭をよぎっ...
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『第一回、東京家出の記』

僕は、定時制高校を卒業してから、或る自動車会社のセールスの仕事に就きました。  定時制の時代は、学年がだぶっていて、不眠症とか事故の後遺症であったのもあって、大学に行かしてもらったんだ位に考えて、アルバイトぐらいしかしていませんでした。  ...
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