自作原稿抜粋

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第一回、東京家出の記ーーー17(最終章)

語りにくい部分を先延ばしにしていましたので、大分空いてしまいました。  季節は冬になろうとしていた。  東京でも、僕は以前から通っていた新興宗教の集会に出た。  そこでは、バンドマンからやっと足を洗えた人が体験談を述べていて、僕は、スティッ...
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第一回、東京家出の記ーーー16

圧延所の仕事では、もう少し残業をしてくれないかと打診され、六時に仕事を終えてから、隣の工場で二時間働くことになった。 といっても、仕事の内容としては相変わらず、ラインのモーターの制御ボタンを押すことがメインだった。  ある日、休日出勤して、...
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第一回、東京家出の記ーーー15

池袋の駅に、何度か行った。  ある時、駅前で、早口で話しかけてくるキャッチセールスに遭った。  僕は、Bくんとの待ち合わせには時間があるし、話しを聞いてやるくらいいいだろうと思って、立ち止まって相手の話しを聞いた。 「お兄さんネ、ウチは××...
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東京家出の記ーーー14

僕とBくんは、バンドを創ろうと、本気になって、僕が雑誌に募集をかけた。  連絡先は、彼の家の電話だったと思う。  三組から連絡があった。  僕は、その内の一組と会った。  相手はテープを用意してきた。  Bくんも同席したので、その場(喫茶店...
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第一回、東京家出の記ーーー13

仕事にも慣れてきた。  本来、一時間の残業を含めて六時に終わりだった仕事も、もう二時間残業してくれ、と頼まれるようになった。  沖縄から出てきた出稼ぎの意味で仕事をしている中年の人には、よく訊かれた。 (出身地が思い込み間違いでした) 「*...
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東京家出の記ーーー12

毎日は規則正しく流れた。  朝に工場に出向き、昼に寮生に用意された弁当を食べる。  五十代くらいの食堂のオバチャンは愛想がよかった。  お茶は、四リットルのやかんから自分で汲んで飲む。  夕方5時。遅くとも6時には仕事を上がれる。  仕事を...
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『第一回、東京家出の記』ーーー11

次の日、朝八時から仕事に就いた。  体育館のような造りの工場だ。  体育館の八倍くらいの容積がある。  その工場が二つ、敷地内にあった。  僕が行かされた工場は、鉄を押して成形するところだった。  オレンジ色の鉄が、左奥の場所から出てきて、...
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『第一回、東京家出の記』ーーー10

僕は、就職活動をする。  僕の借りた(新聞屋さんが用意してくれた)アパートは、三畳一間のつくりだった。他に、小さな流し台スペースがあるのみ。  部屋の壁が薄いので、隣りの声が丸聞こえだ。  隣りの片方は、夜中に電話をながながとする男性。 「...
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『第一回、東京家出の記』ーーー9

杉並での生活にも大分慣れてきた。  まだまだ、哲学科の大学生の先輩の後について回るだけで手一杯だった。  所長と、どれだけルートを覚えたかを確認される行程に出た。  新聞屋の仕事の場合、次の配達先への地図というのが、ト(隣り)、とかY字とか...
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『第一回、東京家出の記』ーーー8

次の日、俺は、夕方に目覚めた。  ホテルのチェックアウトを過ぎた延滞料を払って、ホテルを出た。  もう、俺には余裕がなかった。  第一条件として、住み込み(寝るところ有り)で待遇してくれる所であれば、どこでもいい気になっていた。  求人情報...
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