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『第一回、東京家出の記』ーーー11

 次の日、朝八時から仕事に就いた。

 体育館のような造りの工場だ。

 体育館の八倍くらいの容積がある。

 その工場が二つ、敷地内にあった。

 僕が行かされた工場は、鉄を押して成形するところだった。

 オレンジ色の鉄が、左奥の場所から出てきて、それを、ローラーで圧迫してL字型に成形してゆくのだ。

「君、こっち来て」

 と言われて、中二階の剥き出しの場所に行った。

「基本的に、ボタンを押してくれたらいい仕事だから」

 そう言われて、直属の上司は、圧延ローラーの制御ボタンを押しはじめた。

「よく、見ていてよ」

 そう言われて、僕は操作を見ていた。

 ボタンは二つか三つが対になっていて、傾斜のついた坂を鉄の溶けた棒が滑ってくるのを圧延ローラーに通す。ボタンを順行の向きに押すと、鉄がローラーに吸いこまれて成型される。

 但し、規則的に、どんどん鉄の溶けた棒は出てくるのである。

 前の鉄を一旦、途中で止めて、待たせて、先の鉄を流す。

 血液の流れのようなものと言えば分かりやすいだろうか。

 鉄が坂を下ってきて、ローラーに入ろうという寸前には、もう順行の向きにしていないと停滞して、溶けた柔らかい鉄なので、圧迫されてローラーの前で垂直に立ちあがるのだ。

 そして、そうなると鉄は、東西南北どこに向くか分からない方向で倒れる。

 完全に冷め切っていない鉄が、行路の傍で作業をしている人に向かって倒れかけるのだ。

 とは言え、そんなに困る自体もなく一日目は終わった。

 昼休み明けは、半端な長さで残っている鉄を、現場でガスバーナーで切断した。

「僕、溶接とか、免許持ってないんですけど…」

 そう言ったが、

「大丈夫、大丈夫、酸素とガスの出すタイミングを間違わなければ問題ないよ」

 と言われて、鉄を裁断した。

 昼から、西陽が工場にはいってくると、鉄粉が空中に舞っているのが見えた。

 工場全体に細かい鉄粉が舞っていた。

 もし、ここに永久就職したら、肺の病気になるかもしれない。何故か僕は、俯瞰して自分を客観視していた。

 ドラマーになる為の、一時的な仕事だ。

 健康に害が及ぶほどの期間は、この工場に居ないだろう、と自分に言い聞かせた。

*次話は、こちら→  『第一回、東京家出の記』12

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 私はこのブログで万年筆の魅力を綴ってきましたが、実は長年、その万年筆を相棒に物語を紡いできた小説家でもあります。

 インクが紙に染み込むように、人の心の奥底にある「光と影」をすくい上げたい——。そんな想いで書き上げたのが、私の代表作**『閉鎖病棟』**です。

 閉ざされた場所で交錯する、剥き出しの人間模様。 作家として「本当に面白い、価値のあるものを届けたい」という一心で、一文字ずつ丁寧に命を吹き込みました。

 万年筆を愛するあなたなら、きっとこの物語の「手触り」を感じていただけるはずです。

 画面を閉じる前に、ぜひ一度、私の本の世界を覗いてみてください。

自作原稿抜粋
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