自作原稿抜粋

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『バイク』(ショート・ショート)

『バイク』 僕はやっと賞が獲れたので、賞金の一部で中古の単車を買った。 中型免許しか持っていないが僕は身長が高い。 だから、車体の大きいオフロードタイプの250にした。 店の人が家に持ってきてくれて、弟も帰っていたので外でビールを飲みながら...
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自由詩

夜中に書いた原稿です。 自由詩      『無題』 がったんがったん 雨戸は鳴る鳴る がったんがったん こんな筈じゃなかった。 昨日は車がうるさかったから。 今日は雨戸を閉めたのに 風が強くて 雨戸は鳴る鳴る がったんがったん ひりひりひい...
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ラーメン

ショート・ショートです。 題して、『ラーメン』  夜中にラーメンを食べた。腹まわりに脂肪がついた。 翌日と翌々日、四十分散歩をした。 一日おいて次の日とさらに次の日、そしてさらに次の日、四十分散歩した。 腹まわりはどうにか、元の太さに戻った...
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超ショート(創作です)

『或る日の兄弟』 兄:「おい、今からスーパーに買い物に行ってくるけど、何か要るモン有るか?」 弟:「ああ兄貴、丁度、今、コーヒー切らしとるんやけど、給料日まえで金ないからエエわ」 兄:「そうか、金か。金はスーパーには売ってないなァ」 弟:「...
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『河口が見えたのに』ーーー39(最終話)

俺は、死んでいく。 先生さえ死んでしまったんだ。 熱い! 髪の毛の焼ける厭な臭いがする。 上の寝室で柱時計の時刻を知らせる鐘の音がする。 左手首のセイコー・スキューバは、四時四十分を指している。 死んでゆく。 顔の頬の肉が溶け始めた。(痛い...
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『河口が見えたのに』ーーー38

*   * 「ええ式やったな」 有希子が喜んで言う。「ホンマに、こんな、みんな喜んで繰れるとは思わへんだ」 昨日の婚姻届提出の際には焦った。 俺は、地元の市役所で既にもらっていた用紙に全てを書き込み、曳舟市で提出しても同じだと思って、曳舟市...
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『河口が見えたのに』ーーー37

そんな日が何日かつづき、お互いに増刷が決まったことを喜んだ翌日、六月三十日。 「先生、雨が止んだよ……。一遍外に出ましょう」 俺は、溜まった洗濯物、喀血の血が二人のどちらをも選ばず薄い朱に染めたそれらを干し終えて、縁側から路子を呼んだ。「先...
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『河口が見えたのに』ーーー36

昼から路子は写経をはじめた。「他の宗教は、理念的なものが分からへんねん。……それに、もう時間がないのに聖書を端から読んで理解してゆくのは無理やと思うし、……仏教かて教義は全然分からへん。……ただ、お経には、文字自体に力が有ると思うから……」...
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『河口が見えたのに』ーーー35

*   *  私と室井君は、昨日の部屋で朝食を食べた。 ここからでも見える。畑はめちゃめちゃだ。 数ヶ月前に蒔いた種は芽を出したが、その後、雑草の駆除も肥料を与えることもしていない。苺畑を囲む一番面積の広い私の茄子の畑。 雑草や害虫に養分を...
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『河口が見えたのに』ーーー34

俺は、路子の、そのひらつかせている左手首をぐいっと左手で掴んだ。 路子の表情が辛辣になる。構わず口を口で塞ぐ。 路子は、心の中で言った。(私は、自分から、今日は言えなかった。でも、すぐに抱いて欲しかった…)  華奢な体は、骨の構造力だけで保...
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