『くもんのまんが古典文学館古事記』読了(追記あり)

くもん出版、平田喜信氏監修、森有子さん作の、『くもんのまんが古典文学館古事記』を読みました。


古事記 (くもんのまんが古典文学館)

古事記 (くもんのまんが古典文学館)

  • 出版社/メーカー: くもん出版
  • 発売日: 1990/04/01
  • メディア: 単行本

例によって、感想は追記をお待ちください。

追記・感想

文字によって書かれた書物のなかで現存する日本最古のものが『古事記』らしい。

『古事記』ができるおよそ百五十年ほど前、聖徳太子と蘇我馬子が、皇室の歴史につい

て書いた『天皇記』、古くから伝わる神話や伝説を集めた『国記』をつくったが、「大化

の改新」のときに燃えてしまったそうだ。

天武天皇が編纂プロジェクトを開始し、それが、姪である元明天皇に引き継がれた。天

武天皇の下に、語り部として仕えていた稗田阿礼(ひえだの・あれ)が暗唱していたも

のを、太安万侶(おおの・やすまろ)が文字にしていった。中国から伝わった漢字で表す。

漢文だが、太安万侶は、変体漢文という新しい漢文(音だけを表す漢字を含む書き方)で

表した。中国語で読める漢文で日本の古代を描いたのでは、けっきょく中国から見た日本

になる、と考えてのことだそうだ。この辺りは、プライドを感じる。

『古事記』は、同時代に書かれた『日本書紀』と比べて文学としても優れている。

神や天皇が、恋をしたり、やきもちをやいたり、憎しみを抱き、怒る。残酷な場面もあ

る。また、『古事記』は、変体漢文で書かれているから、余計文学的だとも言える。この

変体漢文が、後の平仮名を生みだす源となっている。

奈良時代には、多くの文学作品が生まれている。『古事記』『日本書紀』、国ごとにまと

められた、その国の成り立ち、国名の由来、地勢、産業、山や川の名の由来などが書かれ

た地方誌『風土記』、皇族、専門歌人、名もない人々が詠んだ和歌を集めた『万葉集』、

貴族のあいだで流行した漢詩から漢詩文『懐風藻(かいふうそう)』。

奈良時代は、日本から遣唐使が何回も唐へ行き、唐の制度や文化をもちかえった。奈良

時代は、唐を手本として、全国を統一した朝廷が、中央集権国家を作り上げていく時代。

しかし、文化に目覚めた日本だったが、庶民の暮らしは、前時代と変わらず、竪穴式の住

居に住み、飢饉や病気に悩み、重い税に苦しむ人々が大勢であった。【以上、本編後半解

説より、一部本文引用】

さて、本編漫画から、感想を交えて。

天の浮き橋というのが、天橋立なのですね。

その天上と下界をつなぐ天の浮き橋から、イザナギとイザナミは、海中を矛でかきまわ

す。そのときのしずくで出来たのが淡路島らしい。

そこに降り立ち、二人は生活を始める。結婚式をするのだが、その科白は、「好きだ」

というような告白ではなく、相手を褒める言葉だった。

しかし、女のほうから先に声をかけたことが失敗で、死んだ子供しか産まれず、アメノ

ミナカヌシノ神から神託があって、やりなおしたら子供がつぎつぎに産まれた。

やはりアプローチは男性から、というのが日本の一般的な考え方だが、ここから来てい

るとも言える。

つぎつぎに産まれた子供が、そのまま島になった。いやはや、神を人間のように描きな

がら、神の子が島にもなるとは、神話は絵を浮かべにくい。

さらに、その後産まれる子どもが、「家の神」や「川の神」「海の神」になっていく。

三十五番目の神が、火の神で、それを産んだためにイザナミは死んでしまう。女陰(ほ

と)が焼けて死んでしまった、とは車谷さんのエッセイで読んだことがある。火の神はイ

ザナギによって斬られるのだが、斬られた火の神からも、また「剣の神」「竜の神」など

が生まれる。

イザナミに会いたいので、黄泉の国に下りていくイザナギ。

死者に直接会えるという設定も凄い。

黄泉の国から命からがら帰って、イザナギが禊ぎをしたときに、その水しぶきのなかか

らも、三人の神が生まれる。アマテラス、ツクヨミ、スサノオ。

アマテラスは、例の天の岩戸の事件を起こす。

スサノオというのが、とんでもない暴れん坊で。でも、だんだん回心して成長していく

のですね。

スサノオの子孫の話へと、話はつづきます。

全編は紹介しません。お話の紹介は、この辺で。あとは本編を読んでみてくださいね。

聖書なら、預言者や王のことは書かれているが、神そのものについてのストーリーはな

い。人間が起こすことに神が対応される形だ。

古事記は、神そのもののストーリーが描かれている。しかも、その神々は、人間くさい。

嫉妬もしたり暴れたりする。トヨタマ姫が、実はサメだったなど、全編ファンタジーであ

ると思った。アメワカヒコが地上へ偵察の使命を帯びて行ったのに、地上の生活に満足し

きって帰ろうとしない、などという今昔普遍の人間の心理(既得権益を離さない人々とも

似ている)なども描かれている。人間模様を描きながら、それぞれが神なので、一つこと

が起きると事態が大きくなる。だから面白い。

皆さんも、原典を読むまえに、漫画から読んでみては、如何でしょうか。

・その他の歴史関連本の感想→  『知らないようでやっぱり知らない日本のしくみ』

『キリスト教と戦争(「愛と平和」を説きつつ戦う論理)』

『新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論』  『一冊でつかむ日本史』

『平家物語(くもんのまんが古典文学館)』  『一度読んだら絶対に忘れない日本史の教科書』

コメント

  1. タックン より:

    こんばんは。
    ご訪問ありがとうございます^^
    この「古事記」はマンガなのですね。
    古事記の内容を知りたいと思って何度か手にしたことがあるのですが
    いつも途中で挫折^^;
    これなら何とか読み通せそうですね。

  2. 山雨 乃兎 より:

    >タックンさん
    お久しぶりですね。^^
    この本は、漫画で、後半に蘊蓄も載っていました。
    それだけに、書評、まとめきれるのか心配です。(汗”)
    追記、少しお待ちくださいね。
    また、お寄りしますね。(^。^)

  3. タックン より:

    なんともドラマチックですね~
    ますます読んでみたくなりました。

  4. 山雨 乃兎 より:

    >タックンさん
    原典を読めば、もっと深く感銘できるのに、ということを作者から言われているような気がします。
    一度、大学ででも原典を借りてきたいと思います。
    今回の漫画も得るところは多かったです。
    また、お寄りしますね。(^。^)

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