木村恭子さん、カツヤマケイコさん共著の、『知らないようでやっぱり知らない日本のしくみ』を読みました。
知らないようでやっぱり知らない日本のしくみ―政治のイラモヤがすっきりする! 爆笑★コミックエッセイ
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版
- 発売日: 2012/09/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
例によって、感想は追記をお待ちください。
追記・感想
中学・高校の『公民』の教科書で習うべきこと、それも現代日本社会の構造について、
が、学校ではあまり履修されないまま、誰もが大人になっている。
だから、政治に関して、この本で書かれているような基本的なことも知らない人(私も
含めて)が多い。
政権与党が内閣府として行政を行う。国会は、法律をつくる審議をするところ。法案の
提出には、或る程度の人数が要る。法律をつくる審議を行っているのは、主に委員会であ
ること。衆参両院で審議される場面では、委員会ですでに可決されている。
このようなことが、基本的な抑えておくべきこと。
『イラモヤ』と題されて、国の政策で、わからないところ、すっきりしない疑問に、漫
画本編で木村女史とカツヤマ女史が議論しあって読者に解説する、という方法で全編が進
行する。
政策プロセスをチェックしておくことが大事。だが、忙しくて新聞を読む暇もテレビの
ニュースを見る暇もない、という向きもあるだろう。気になる政策テーマをキーワード登
録すると自動的に記事を収集してくれるサイトもある。(日経電子版など)
53ページ 野田首相の名前が間違っている誤字。
政策のアイデアを出すのが、各省庁の官僚だった。これをシンクタンクと言う。これを
政治家がやろう、とする動きもあった。だが、今までのところ、ことごとく失敗している。
もしくは尻すぼみの結果となっている。
2012年7月に来日したIMFのラガルド専務理事は、高齢化が進む日本が成長をつ
づけるには「未活用の、よく教育された女性労働力が大事」と発言している。政策のアイ
デアを発想するときにも、多様性が大事だと思わせる。(外部のほうが、よいアイデアを
持っていることもある)
日本の場合、政党政治だが、寄り合い所帯のため、政党政治が成り立たなくなっている
現状がある。
「原発が怖い」「消費税が上がるのは納得いかない」という直感は大事だが、「原発を
ゼロにして温暖化問題は、どうするのか。電気料金が上がるのは嫌ではないのか」「消費
税増税反対なら、年金の財源はどうするのか」と、深く考えることが大事。
フランスの思想家ルソーの名言「英国の人民が自由なのは議員を選挙する間だけのこと
で、議員が選ばれるやいなや、英国人民は奴隷となり、無に帰してしまう」があるが、こ
れは、今の日本にも言える言葉だろう。この本を読んでいる間に思ったことは、法案の成
立を、すべて国民投票で決める、という方法もアリなのではないか、ということだ。
消費税増税に関しても、財源が要るのでとりあえず先に増税する。というやり方をする
のではなくて、やはり、税収を社会保障に充てるという計算書が表されていなくてはおか
しい。どんな法案も、とりあえずのことで決めるのではなく、システムとしてどう作動さ
せるかを、国民に詳しく説明しなくてはならない。景気対策にお金をばらまくという方法
よりも、経済を根本的に活況に戻すにはどうするか、の方が大事なのだ。
デモは、運動にかかわる人が母数の百分の一を超えると、社会にインパクトを与えはじ
める、という説があるそうである。本当に社会を変えたかったら、それぐらいの規模のデ
モをする必要がある。
イギリスのマニフェストは、各政党が2年程度かけて、党大会や党内で議論を経て、一
般議員も含めた議論を集約されたうえで作成されている。【本文引用】
日本のマニフェストは、有権者から票を獲得するために、その時点で思いついた実現不
可能かもしれない政策を表明している。
イギリスと日本の政治は、委員会と本会議の重心が違う。(詳しくは本編を)
イギリスでは、増税というと、高額所得者の税負担が増すことを連想するらしい。だか
ら、反対は起こらない。
「**を無料にします」とマニフェストが出れば、イギリス国民は、「それなら、財源は、
どこから?」と発想するそうです。政治家にお任せという日本人と意識が違う。
イギリスでは、国会議員の候補になるまでが大変らしい。試験を受けたり、党員を前に
ディベートをしたり、と。しかも、議員になれるかどうかは、その後の党員投票で決まる。
世襲で議員が決まることもない。有権者の一票も大きい選挙区の人口になっている。
本を読んでいて感じたことは、原発をゼロにした国が、現在上手くいっているのか、と
いうことを日本国民も考えなくてはならない、ということだ。たとえば、再生エネルギー
で先行しているドイツでは電気料金がものすごく上がって、家計が大変なことになってい
る。
セレンディピティ力をつけることが大事。これは共感した。
「運よく見つけられる能力」と訳せる。ネット検索なら、自分が知ろうとする情報を知
る、に留まるが、新聞を読む習慣があれば、自分がもともと興味がなかった記事も目にす
ることになり、そこから興味が喚起されてくる。雑誌や書籍、テレビ放送などもそうだろ
う。つまり、これが、「アンテナを張っておく」ということなのだなぁ、と思った。それ
で、情報を、「広く・深く」得ることができる。
最終章の、『政治の傍観者から当事者になる』の項では、木村恭子氏が私たちに、普段
からできる姿勢について述べられていた。①歴史に学ぼう ②他国を見よう ③自分で考
えよう
本編では、カツヤマ氏が、国会を見学された様子が書かれている。
誰でも見学できるそうなので、読者諸氏も一度見学されてはどうだろうか。(私は、た
しか修学旅行のときに見学したが)
この本で、立法と行政の制度の最低限の知識を抑えた上で、しかも、現代の時事問題に
ついても取り上げて議論が行われているので、読者は、読んだ上で、個々に考えられては
どうかと思う。
知識を得て、周囲の人と議論し、考え抜いた上で、意見を新聞やインターネットに発表
する。そういう動きも、世論の形成にかかわってくる。
二院制にもメリットはあるし、意外にも諸外国に比べて国会議員の数が多いわけではな
い、といったことも改めて知った。
政治がどう変わるべきか。政治に自分の声を反映させるには。そういったことを考えさ
せてくれる本だった。
・その他の歴史関連本の感想→ 『キリスト教と戦争(「愛と平和」を説きつつ戦う論理)』
『くもんのまんが古典文学館古事記』 『新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論』
『一冊でつかむ日本史』 『平家物語(くもんのまんが古典文学館)』
コメント
>ビター・スイートさん
ナイスを有り難うございます。(^。^)