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夏目漱石『こころ』読了

夏目漱石先生の『こころ』を読みました。


こゝろ (角川文庫)

こゝろ (角川文庫)

  • 作者: 夏目 漱石
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2004/05/10
  • メディア: 文庫
 
 
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 文学を読むべき年齢

ええー、今ごろ? と言われそうです。
私は、若い頃、読書癖がなかったので、古典(近代文学など)は未だ少ししか読んでいません。

最後まで読んで一番感じるのは、三田誠広さんがご著書のなかで述べられているように、作品によっては若い内に読まないと意味がないという事です。逆に、作品によっては或る程度の歳にならないと理解できないという場合もあります。

 ネタバレを含む、あらすじ紹介

大学生である「私」が、暑中休暇に鎌倉に海水浴に出かける。
そこで、「私」が先生と呼ぶ人と出会う訳です。

「私」は、先生に惹かれていく。
何も仕事をしていない先生。奥さんと暮らしながら、ときどき(月に一度)墓参りにだけ出かける。それも、たった一人で。ひたすら読書だけをする生活をしている。

先生は、奥さんにも言わない一人だけの苦悩を抱えている。それを是非、打ち明けてくれ、と迫る「私」

「私」は、実父の具合が悪いとの電報を受けて、実家に帰る。

実父は、腎臓を患い、帰省中に遂に実父は危篤となる。

大学を卒業したばかりの「私」は、両親に勧められ、先生に就職口の世話をお願いする手紙を書く。

父の状態が悪いので、先生の「来てくれ」という電報にも応じられず、ついに父危篤となった段階で、先生から長い手紙が届く。

その手紙には、先生が大学生の頃に経験した苦い思い出と、明治天皇が崩御されたので自らも自殺すると書かれている。

果たして、先生の過去とは何なのか。それが、手紙形式で後半繰り広げられる訳です。

手紙のなかでは、もう一人の主人公と言える先生が「私」という主語で文章を展開します。

 「先生」の人生背景

先生は、若い時分に伝染病で両親を亡くし、叔父に世話になり大学へも通わせてもらうが、その叔父が、両親の財産を相当横領していたことが後に判る。いくらかは自分の取り分として押さえ、株などの利子と貯金で何とか一人でやってゆけるようになる。叔父とは絶縁。

そんな先生が、借家を探し、或る素人下宿に入ることに。

そこには、戦争未亡人とその娘だけが住んでいた。

「私」(その当時の青年である先生)は、お嬢さんに恋する。

そこに、中学高校との親友であるKを、「私」は一緒に住まわせる。

Kは、養子に行った家から学費を出してもらって、医者を目指すように薦められておりながら、養父にそれを隠して、他の学部に入学し学生生活を送っている。途中で養父にその事がばれ、実家からも養父からも絶縁されたKは、働きながら復学する。が、ハードスケジュールが祟って、神経衰弱気味になる。Kは、元々、仏教的に生きることを旨として禁欲的・克己的に、過ぎるほどに生きるモットーであった。「私」は、それを見ていて、気持ちの余裕を持たせようとして、自分の下宿に同居を勧めた訳だが…。

あー、イカン。これ以上書くと、全部筋書きを語ることになるのでやめます。

 あくまでも、私の感想

基本的に、「私」(大学生である過去の先生)に、全く共感できなかった。

Kがお嬢さんに惚れているだろうか、とか思うなら、先に自分から手を打つべきでしょう。お嬢さんに告白すべきです。それが、遅すぎます。

奥さん(お嬢さん)のお母さんに、お嬢さんを下さいと言って、それが受け入れられたら、その後、Kが自殺しようと、自分の心が苦しいなら、妻となったお嬢さんに打ち明けるくらいしてもいいでしょう。

綺麗なものが汚れるのが赦されない、などと、何を変な理屈を言っているのでしょうか。

明治末期だから、恋愛に関して世間の常識が違っていたのかも知れないし、けれども、お母さんにお嬢さんを下さいということは、もっと早く言えた筈です。

センチメンタルもいいところ。もうちょっと益しなセンチメンタルなら理解できるけど…。

等と、44の小父さんが読むと、こういう結論にしか成りませんでした。(笑)

 裏構造を埋め込んだと思われるミステリアスな部分

しかし、一つだけ、読み方によっては、非常にミステリアスな部分がありました。

それは、Kがお嬢さんへの気持ちを「私」に告白し、夏の上野行きで、「私」がKを論議でやり込め、安堵から久しぶりに熟睡した夜、Kが夜中に襖を少し開け「私」に「まだ起きているか」と聞いた場面です。
それまでのお嬢さんとKの親密ぶりからすると、その夜にお嬢さんとKの情交がKの部屋であったのではないか、とも考えられる点です。

そこまで考えると、Kはお嬢さんを「私」にとられた強引に急に婚約したのを見せつけられた故に気が滅入って死んだ、というシナリオの他に、自分は親友の「私」を彼の知らないところで既に裏切っている穢している、という罪の意識が自殺の理由だったことも考えられる。

そこまで考えると、恐るべし、夏目漱石。

と、これは、僕の勝手な読み方かも知れませんが…。

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コメント

  1.  最近、自分は全然本を読んでいないですw
     恩のある先輩から、太宰治は読んでみればと薦められたので、機会あれば読んでみようと思います
     今年はお互い充実した年にしたいものですね^^
     自分は今年狙う賞をピックアップしてみました
    http://sky.ap.teacup.com/tomoichiro2/111.html
     山雨さん、また色々情報交換しましょう

  2. 山雨 乃兎 より:

    >岩上さん
    今年は、僕の方も努力が実れば、と自身で自身のことを祈っています。
    まだまだ賞を狙いますか。他の賞を受賞していても受け付ける賞もありますね。
    四大文芸月刊誌の賞を是非獲ってください。僕も狙います。
    すばる、小説すばる、新潮、群像、のどれかを獲ると芥川賞候補に近道です。
    今年は、お互いにブレイクしたいですね。お互いに計算もした上で投稿してきていますから、きっとブレイクしますよ。
    済みません。昨日、夜更かしして徹夜明けです。文章が乱れてたら、どうかお許しください。
    今年は、ホント、来ますよ。(^。^)

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