万年筆おすすめ品紹介(用途・思い入れによる)

 初めまして、山雨乃兎(やまめ・のうさぎ)です。
 小説家の私が、用途・思い入れごとの万年筆の選び方・おすすめを紹介していきます。
 私の詳細プロフィールは、こちら→ 小説家・山雨乃兎

万年筆の構造

 万年筆の部位

 まずは、万年筆の各部位の名前を紹介します。(図と写真でご覧ください)

 書ける仕組み

 インクを毛細管現象と空気の交替作用によってペン先まで運び、ペンポイントから滲み出るインクで文字が書けるのです。

 (万年筆がおすすめ)万年筆と他の筆記具との違い

・鉛筆

 本体に入れられた芯を砕いていくことによって、黒鉛を紙に付着させる。(黒鉛は、紙に浸透はしない)

・シャープペン

 本体に芯を内蔵し、芯が削れて黒鉛が紙に付着することによって文字を書いていく。(黒鉛は、紙に浸透はしない)(鉛筆・シャープペンともに、芯の濃さによっては筆圧が要求される)

・マジック

 本体に内蔵されたインクを、フェルトなどに染みこませ、そのインクを紙に付着させる。(インクは、紙に浸透する場合と表面だけに載る場合がある)

・筆

 墨の水溶液を刷毛部分に保持し、その墨の水溶液を半紙に移す。(半紙には、墨が浸透する)

・チョーク

 黒板に、粉の塊だけで出来た本体を擦りつける。粉の塊である成分、炭酸カルシウムや石膏カルシウムを黒板に付着させる。(粉は、黒板内面には浸透しない)

・万年筆

 顔料や染料を含んだ水溶性インクを毛細管現象と空気の交替作用によってペン先まで送り、ペンポイントからインクを紙に染みこませる。(インクは、紙に浸透する。書き終わった紙は水に濡れると文字が滲んでしまう)
 書くときに、他の筆記具ほど力が要らない。基本的に、筆圧が必要ではない。 

 万年筆の醍醐味(万年筆をおすすめする理由)

 持つ喜び

 万年筆は、私の主観ですが他の筆記具に比べて格式が高いですよね。
 万年筆は、英語の筆記体を書くのにも適しています。
 ボールペンだと筆跡に太い部分から細い部分までの差はつけられませんが、万年筆は、ある程度それができます。
 署名の機会に、万年筆を胸ポケットからさりげなく出すと格好いいですね。(署名の場合、万年筆で書いた字は水に濡れると滲むので、ボールペンのほうがいい場合は、たしかにありますが……)

 親類や先輩にもらった万年筆は、一生の宝物になります。
 中学一年のときに、万年筆を父からもらったのを、今でも憶えています。自分が大人になった(大人と認められた)ように感じました。万年筆を子や甥に贈るのは、通過儀礼でもあります。
 万年筆は、使えばつかうほど、ペン先の削られ具合がその人の書き癖に沿う形状になってくるので、どんどん書きやすくなってきます。
 そういう意味でも、長年所持していると愛着が増してきます。
 胴軸が金属製の物は、重さもあります。そのずっしりとした重さが貴重な物であると思わせてくれることもあるでしょう。
 そして、他の筆記具にはないデザインの格好良さがありますね。色が変わっていたり蒔絵柄の万年筆は、希少です。きっと贈ってくれた方を思い出すでしょう。

 書く喜び

 筆圧をかけずに、滑るように書く喜び。また、インクフローが少ない万年筆の場合、紙に刻み込むような感覚を楽しめます。

 「留め」「はらい」が表現できます。太さの変化も表せます。つまり、感情が滲み出た筆跡で書くことができます。

 インクの色を変えることによって、気分を変えられます。

 「文書」とくに「原稿用紙に書く文書」が書けたとき、作業をやりきった感を味わえます。

 書いた結果の喜び

 恋人への手紙、万年筆で書くと感情が伝わります。(相手から、いい返事をもらう喜び。手紙をもらったときの喜び)

 お世話になった人へ、感謝をしたためる封書。心のこもった万年筆の文字は、先方の心を打つでしょう。

 最初に万年筆で起こした原稿、それをパソコンで活字化し、賞レースで評価されたときの喜びは、ひとしおでしょう。

 人前で、署名したとき、他人から筆跡を褒められる嬉しさ。

 私が小説原稿を、最初は手書きで起こす理由

 文体を意識できる

 漢字を、わざと「ひらがな」に直すのを、「ひらく」と言うのですが、難しい漢字だから「ひらく」という理由の場合もありますが、読んでる感覚がなめらかになる、あるいは読むスピードがそこで落ちる、ということから、簡単に読める熟語なども「ひらく」ことがあります。その、「ひらく」べきなのか、漢字で書くべきなのかが、手書きで書くほうが意識しやすいのです。
 二つ三つの熟語を、全部ひらいて、ワンセンテンス「ひらがな」にすることもあります。

 「文節」、つまりワンセンテンスの長さを、手書きのほうが意識することができます。
 「この辺で、読点、打とうかな。まだ打たないで引っ張ろうかな」という見極めが、手書きのほうが、より意識できるんです。

・読点をほとんど使われない(センテンスが長い)文体の作家さん→ 村上龍さん
・「ひらがな」を多用される作家さん→ 「いしいしんじ」さん

 脳で浮かべる文章。手書きだと浮かべてから書く。ワープロだと打つ速度のほうが速い。

 脳で考えて、言葉を決めてから文章を書くのですが、パソコンのワープロソフトだと、喋る速度かそれ以上の速度で打ててしまうので、考えがあとからついてくる感覚です。
 手書きだと、言葉が浮かんでくる速度より書く速度のほうが遅いので、書いてるうちに文を、「だ」と書くつもりだったのが、やっぱり、「だが、」と書き換えて、一文を短くしたり長くしたりというような、吟味した文体の変化が起こります。

 著者の場合、ワープロ打ちだと、フィクションが書けない

 自身でも、よく理由がわからないのですが、ブログ記事とかエッセイとかノンフィクションならワープロ打ちでスイスイ書けるのですが、小説の場合だけ、手書きでないと、まったく書けません。

 コレクションも楽しいけど、一番大事なのは、自分に合った一本を見つけること

 万年筆の蒐集は、楽しいものです。
 ショーケースに並べて、思い出を思い出しながら、一本一本を手に取る。
 そして、今の感慨を、紙に書いてみる。
 来訪した友人に見せるのも嬉しいでしょう。

 ただ、万年筆を持つ、もっとも重要な意味は、それを生活のなかで有意義につかうことです。
 私の例で言えば、書く癖が染みついた一本で、毎日原稿を書くこと。その書いているときの体中で感じる喜びです。

 自分に合った万年筆。書き味。筆致の太さ。書いてるときに手指に受ける感覚。それが、自分にとってベストであれば、一生、喜びを感じて生きてゆくことができます。

 自分に合った一本を見つけることです。
 それは、最初の一本かもしれないし、数本目のものかもしれません。

 私が使ってきた万年筆

 そんなに多くは、体験していません。
 一番始めは、父から、中学時代にもらった万年筆。セーラーの14金、細字、ショート軸です。当時は、胴軸がショートなのが多く出回っていました。
 その次が、地元町内会(子供会)の卒業記念にもらった万年筆。プラチナ製の18金、細字、ショート軸でした。これは、25年ほど使いました。

 そして、次は、縫製のデザインの仕事をしていたとき、会社からの帰りに文具屋に立ち寄り、将来小説家になることを予想してパイロット社製の胴軸の長いタイプの14金の中字を買いました。当時の購入価格\7000-でした。商品選びに時間がかかってしまい、文具屋の店長に、「もう仕舞いますよ」と言われたのを憶えています。この万年筆は、現在も小説執筆につかっています。一番思い入れのある万年筆です。

   長年愛用 パイロット

 その後、オークションで落札しては、結局売って手放した万年筆が数本あります。
 ジンハオ製・中字・細字。(ジンハオの万年筆は、私には合いませんでした。持ちにくいです)
 モンテベルデ社製・ショート軸・細字・ペン先イリジウム。胴軸のデザインが海を思わせる青とその他のパステルカラーがグラデーションになっていて芸術的でした。ペン先が極細だったので、執筆には向きませんでした。手帳用としてつかっていました。

   モンテベルデ


 パイロット社製の胴軸の長いカスタム。14金、太字。コンバーター式。(これは、作家気分を味わえました)

   パイロット カスタム


 クロス社製、クロス・タウンゼント・メダリスト。正確には覚えていませんが、ペン先鉄で21金メッキでした。胴軸は長く、金属製で持った感じ重いです。中字。ペン先が鉄なので、しなりません。書き心地は硬いです。(インクフローが渋かったのでしょう)総重量が重いので、小筆のように角度を遷移して書くのではなく、本体の角度は変えずに、水平に動かせます。

   クロス・タウンゼント・メダリスト

*私がつかっていた万年筆以外を含む筆記具について→ 2007年当時の筆記具

 用途別、おすすめする万年筆の特徴

 手帳用なら細字 原稿書くなら太字か中字

 手帳用として使うなら、胴軸が細く、かつ胴軸が短いのがいい。ペン先は、細字がおすすめ。

 公の場面で、署名(サイン)するときに使うなら、胴軸が長く、ペン先は太字がいい。(書く書類によっては、ペン先が細字を推奨する場合もある)

 小説をB4原稿用紙に書くなら、ペン先は、太字。胴軸は長いほうがいい。(デスクペンほど長くなくていい)

 小説を、最初にA4普通紙に書き起こすには、ペン先は、太字か中字がいい。

*小説執筆に必要な他のものについて知りたい方は、こちらの記事をご覧ください↓

    小説の書き方講座2「道具」

 金ペンか鉄ペンか

 ペン先の材質は、ペン先が、しなるかどうかに係わってくる。しなるほど、書き心地は、なめらか。しならないと、書き心地は、硬い。

 私は、金ペンを推奨する。
 金ペンは、しなる。
 金の純度が上がるほど柔らかいが、14金でも充分である。

 鉄ペンは、筆圧の高い人に推奨する。
 金ペンで、かなり筆圧をかけると、ニブがしなって壊れてしまうこともある。鉄ペンのほうが頑丈です。
 鉄ペンは、独特の書き心地がある。
 鉄ペンは、紙に刻み込むような書き心地の場合がある。(鉄ペンであっても、なめらかな書き心地の場合もあるが……)こちらの書き心地が好きな人には鉄ペンがいいだろう。

 「しなり」の差は、ニブの材質だけが原因ではなく、ニブ(ペン体)の形状(ニブを断面でみたとき、弧を描いているか、どちらかというと平たいか)などが作用している。

 ペンのすべりの善し悪し

 鉄ペンが、すべらないで、金ペンは、スラスラとすべる、と思いがちだが、実際に紙に当たっているのは、ペン体ではなく、ペンポイントなので、ペンポイントは、ほとんどの場合イリジウムで出来ているので、「すべり」に、ペン体の材質、鉄か金か、は関係してこない。
 ペン体の材質の差は、「しなり」の差なのだ。
 「すべり」の差は、インクの毛細管現象と空気の交替作用の状態の差(つまり、インクの出方が速いか、ゆっくりか)である。

*ペンのすべりの善し悪しは、紙との相性の問題もあります。
 万年筆と紙の相性については、こちらの記事をご覧ください↓
    万年筆に合う紙。原稿用紙・便箋・はがき・色紙?

 インク充填方式の違い

 おすすめは、コンバーター方式。カートリッジ式の万年筆のほとんどが、コンバーターを取り付けることが出来ます。
 瓶からインクを吸い上げる、執筆家の気分が味わえます。カートリッジより多量のインクをストックできます。

 次が、カートリッジ方式。
 インク充填が楽です。
 手も、まったく汚れません。

 吸入式。万年筆の同軸内部に、瓶から直接インクを吸い上げます。
 インクが大量に、一度にストックされますから、充填の頻度を下げられます。ずぼらな人には楽です。ただ、充填のための吸い上げがそれなりに難しい。手が汚れる可能性もあります。
 文豪の大御所なんかは、このタイプの万年筆をつかってきたでしょうね。

*万年筆のインク漏れとその対処法の記事は、こちら→ 万年筆 インク漏れとその対処方法

 万年筆は、どこで買えばいいか(私がおすすめする買い方)

 お店(実店舗)で買うのがベスト

 断然、実店舗で買うべきです。
 理由は、店頭で試し書きができるからです。
 胴軸の材質がわかっていて、重いか軽いかがわかっていたとしても、実際に手に持ってみるのと想像とは違う場合があります。
 ニブの材質をあらかじめ選んだとしても、ニブの材質は、「しなり」に関係するだけで、ぬらぬらとした書き心地なのかサリサリとした書き心地なのかは、個体に触れてみなければわかりません。(どこのメーカーが、割と、ぬらぬらの書き心地だ、という傾向はありますが……)

・親戚や恋人に贈る場合も、できれば一緒にお店に行って選びましょう!

*試し書きで、やってはいけないこと

 ペン先の「しなり」具合を確認したいからといって、高い筆圧で、ニブ(ペン先)を紙に押さえつけないでください。ペン先が大きく開いて破損してしまうことがあります。
 ペン先を垂直に立てて、紙に向けて叩く、というのも、絶対にやってはいけません。
 お店の人も、貴方が試し書きしたあとの商品を売るのですから、わきまえましょう。

 どうしても、ネットで買いたいときの、押さえておきたいポイント

・ペン先(ニブ)の材質

 おすすめは、金(金ペン)です。18金か21金がおすすめ。次いで14金。鉄ペンとは、「しなり」が全然ちがいます。

・ペン先の太さ

 オークションなどの場合、商品紹介ページに、ペン先の太さが書いてないことが意外にあります。
 その場合は、出品者に確認しましょう。
 中字・太字と、細字・極細は、まったく別物と考えましょう。
 小説原稿を書くなら、断然、中字か太字。
 手帳などの書き込み用なら、細字です。

・メーカー

 中国製の万年筆は、私は、個人的主観ですがおすすめしません。(持ちにくかったり、切り込みネジの留まり具合がゆるかったりします)
 パーカーは、おすすめです。比較的廉価で、しっかりした作りで、デザインもいいからです。
 日本製の、パイロット、セーラー、プラチナは、断然おすすめです。とくに、日本の漢字が書きやすいように作られています。
 海外ですが、ペリカン社製もおすすめです。しっかりしていて、価格が高すぎないからです。
 海外の高級万年筆、金銭的に余裕があるなら、買うことに非常に意味があります。モンブラン、ウォーターマンなどは、胴軸にエボナイトなどの高級素材をつかっている物もありますし、デザイン性にも優れ、インク充填方式も吸入式の物もあります。日本製の万年筆で高級にするためには蒔絵装飾がほとんどですが、海外の高級万年筆の場合、形(フォルム)のバリエーションにこだわっている傾向があります。
 ファッションブランドが、制作を他社に委託してつくっている高級万年筆は、私見ですが、あまりおすすめしません。機能性よりイメージで高級感を演出しているからです。

・書き心地 ぬらぬら サリサリ の傾向

 無難な書き味 パイロット  (現行の)モンブラン

 ぬらぬら(スイスイ)インクフローが多め  セーラー  パーカー

 サリサリ(書いているときに少し抵抗がある感じ)  プラチナ 

 無難な書き味だが、書き味に意識が行く(余談だが、重量バランスがよい)  ペリカン

・胴軸の太さ・長さ

 長時間書き続けるなら、胴軸は太いほうが楽です。
 長さは、ポケットに携帯するなら短いほうがいい。初心者も含めて、おすすめは、スタンダードな長さのものです。ある程度長い胴軸で、書く喜びに浸ってください。

・胴軸の材質

 主に、プラスチック製、金属製、木製、エボナイト製があります。
 エボナイト製は、高価です。
 木製は、好みにより好き嫌いが分かれます。
 おすすめは、プラスチックか金属製。
 プラスチックのものは軽く、金属製は重いのが特徴です。

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