監督:緒方明さん 原作・脚本:青木研次さん 出演:田中裕子さん 岸部一徳さん 仁科亜季子さんの、映画『いつか読書する日』を観ました。
例によって感想は、追記をお待ちください。
追記・感想
日常を丁寧に描いた文学的作品だが、隠された過去と大きな展開もある
ゆっくりと進行していく文学的作品。
前半は、日常の描写を積み重ねていく。
主人公は、50歳の女性。未婚。朝に牛乳配達をし、昼にスーパーのレジの仕事をして生計を立てている。
冒頭で、「地味な人だな。なぜ結婚しないのかな。その気にならないからなのでは? こんなことではアカンで」と思ってみていましたが、どうやら結婚しないのには理由があって、その理由がだんだん本編で明かされていきます。
文化好きには堪らない、細かい舞台設定
主人公、大場美奈子(田中裕子)の自宅の一室が三方本棚で、蔵書がぎっしり。文学が多かった。海外の文学全集もズラッと並んでいます。
僕も、あんな風に本で埋め尽くされた部屋を作りたいなァ、と思いました。ただ、大場も多く所蔵していたのは、古書です。古書は紙魚がいる場合があるからなァ。痒いしなァ、と思いました。
主人公の亡き母の友人の夫(元英文学者)の自宅の一室も、百科事典を含め本が沢山所蔵されていました。
主人公が書店で立ち読みをしているシーンも出てきます。
主人公がラジオ番組に投書して、手紙とともにリクエストしたのは、洋楽です。題名は憶えてないのですが、この映画は、そういう舞台装置(印象を与えるサブアイテム)にも拘っているなと思いました。
この映画は、2004年制作ですが、それにしてもその当時でも、もう廃れかけていた牛乳配達、新聞を読む生活が描かれています。
新聞を読み、牛乳を飲む。それが、それぞれの人々の暮らしのなかで、しみじみと味わう生活行動の一部になっている。
綺麗事ではない、現実の辛い生活をも描く
主人公・大場美奈子は、幼い頃に父を亡くし、高校生の頃に母を亡くしている。元英文学者が、今は初期の認知症になっていて、家族は翻弄されているし、本人も奇妙な世界が自身のなかに始まっていることに不安を感じている。30年来、お互いを秘かに愛しつづけたその美奈子の相手、高梨槐多(たかなし・かいた)(岸部一徳)は、役所の児童課勤務。親から虐待を受けている子供を、親から引き離す、という辛い仕事もしている。そして、余命短い妻の介護もしている。また、この高梨も高校生の頃、父を亡くしている。そういう辛い現実を多く鏤めている映画だった。
誰もが期待するハッピーエンドではない。それが却ってリアル感を増す
そして、最終的に結ばれた大場美奈子と高梨槐多だったが、最後にまた悲劇。高梨は、いい人なんですよ。功利主義的には生きない。美奈子もそういうところに惚れたのでしょう。
それにしても、二人が過去のわだかまりを解し、肉体的にも結ばれるシーンは、「そんなに好きだったのか。嬉しいんだろうな」と思わされました。
奇想天外なストーリーの映画も楽しいですが、現実味のある淡々と進行する映画もいいですね。
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