内田樹(うちだ・たつる)さん、名越康文(なこし・やすふみ)さん、橋口いくよさんの鼎談、『価値観再生道場 本当の仕事の作法』を読みました。
この本の構造
作家の三人が鼎談した内容を橋口いくよさんが起こした本。
付箋を追う
『詐欺師に学ぶ、後ろ姿にある秘密』
松下幸之助が言った、経営者に必要なもの三つ。「愛嬌」「運が良さそうに見えること」「後ろ姿」。
詐欺師は、突然居なくなる。後ろ姿を見せない。
『終わっていると決めることの大切さ』
仕事の完成をイメージする。そこへ向かって引っぱられる感じで仕事をするとよいらしい。
『ある日突然、仕事がなくなってしまったら』
頑張っているときや宣伝しているときには、仕事の依頼は来ないものらしい。注文にはタイムラグがある、ということ。
『お金にならないことが日本経済を再生する』
橋口さんがネクタイを結べないでいたら、お店の人が親身に時間をかけて教えてくれた、というお話。
利益に結びつかないサービスをするから、巡り巡ってそれが利益に結びつく、ということですね。
『男の嫉妬はすさまじい』
極道は、他人同士が精神的に親子関係を結ぶ。ヤンキーは、兄弟の関係。上(親)を尊敬して目指すから、嫉妬が起こらないそうです。
『満員電車の乗り越え方』
他人同士が、声を掛け合えば、お互いにイラッとしないのではないか、という結論でした。そういうコミュニケーションって大事ですよね。「今日も、ホントに混んでますね」とかね。
『ブラック企業が灯す明かり』
企業が、利益だけを考えているか、社員の幸せを第一に考えているか、ということ。
「即戦力募集!」というのは、企業が社員を育てる気がないということ。使い捨てられる。
『釣り文句に気をつけろ!』
人材募集のときに、いかにも良さそうな文句で釣る。入社してみると、そうではないこと。
新幹線のグリーン車に乗った人は、8号車と9号車の間から出る。他人にグリーン車に乗っていたことをアピールするため。感想としては、そんなしみったれた根性があるのか、と思ったが、大抵の人がそうするらしい。
『前代未聞の自分なんて人には伝わらない』
ミュージシャンや芸術家は、他人が望むキャラクターで居ようと努力する。
『好きなことから少しずれてみる』
親のためにその職業を選んで頑張った人が、すごい成績を残したりする。自分の夢を追いかけるのではなく、他人の夢を追いかけたり、他人に言われるとおりにやってみると上手くいくことがある。
『勤労の権利と義務について』
あとがき、の内田樹さんの、『勤労の権利と義務について』。
仕事とは、権利であり義務であるらしい。そう憲法にも書かれているらしい。
絶対に働かなくてはいけない、とは、憲法でも言いにくいらしく、「権利」と「義務」を両記させているらしい。そこは、個人に任せるということだろう。
内田さんのあとがきでは、「働かない・働きたくない人は、市民のロールモデルにはなれない」ということが、強調して書かれていた。
別に働かなくてもいいが、そういう人には、社会を良くするにはどうしたらいいですか、などの意見を求めることがないそうだ。つまり、発言権がない、ということ。
政治に、選挙権という形で参加することはできるが、それ止まりだと仰有る。私も、意見を言える側で居たい、と思った。
感想
全体の感想としては、仕事は、好きなことを仕事にするよりも、他人から求められることを仕事にしたほうが上手くいくのだな、と思った。
勿論、好きなことを仕事にするのも素晴らしい生き方だが、需要がなくてはならない。好きなことと少しずれたところが仕事になっている場合が多いらしい。また、それが、やっているうちに愉しくなってくるんだろうな、と思った。
マニュアル通りに仕事をするよりも、決定権を現場に下ろしてもらって、臨機応変に他人に喜ばれることを利益がなくても仕事の一環としてする、ということが仕事なんだなーって思いました。
人に喜ばれる仕事、いいですねーー。
*内田樹氏の他の本の感想は、こちら→ 『「おじさん」的思考』