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『「できる人」の相談する技術』読了(追記あり)

福田健(ふくだ・たけし)さんの、『「できる人」の相談する技術』を読みました。


「できる人」の相談する技術 (角川oneテーマ21)

「できる人」の相談する技術 (角川oneテーマ21)

  • 作者: 福田 健
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2012/10/01
  • メディア: Kindle版

例によって、感想は追記をお待ちください。

追記・感想

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 相談することの必要性 相談を持ちかけるハードルを下げる

誰にも相談せずに、自分だけで物事を進めるという方法では限界がある。

任せるところは任せて、頼るところは頼り、また、自分だけで答えを出さずに相談する

と別の新しい答えが出る、ということがある。

しかし、そうは分かっていても、相談はなかなか出来ない。出来ない理由にもいくつか

の種類がある。

相談できる相手がいない。つまり、みんな忙しそうで、話しかけてくれるな、という雰

囲気を出しているから。というのが一つめ。

「言おうかどうしようか」迷う。つまり、相談すると自分を拒絶するか否定する答えが

返ってくるだろうと、先に予見してしまうから。

恥ずかしくて言い出せない。つまり、相談したり助けを求めること自体が「恥ずかしい」

か「格好悪い」と思ってしまうからである。

「言ってもムダ」と諦める。つまり、自分が期待した答えが返って来なかったことが多

いので、「どうせ、あの人に相談しても」と思ってしまうわけである。しかし、実際には

相談される側の人が多忙であったか、たまたまその時不機嫌であったか、他のことに気を

とられて上の空であったか、などが往々にしてよくあるパターンらしい。

「自分のことは自分で」と、頑張りすぎ。書いてその通りである。ただし、これは自分

で出来る範囲のことを言うのに、何もかもを一人で抱え込む人が増えている。

全編のほとんどで語られるのは、相談するほうは、どう切り出し、どう対話するのがすっと

行って人間関係的にもぎくしゃくしないのか、という方法。そして、勿論、相談されるほ

うも、自分から相手が相談したいことがあることを察知してやって相談に乗る場合、また

は、相手から相談されてそれに乗る場合に、どう対話するのが、お互いの益になり人間関

係的にもぎくしゃくせずに済むのか、ということを、例を出して論説展開されている。

この部分が本編のほとんどだが、この書評では敢えてそれは読者が読むことに期待して

書かない。

以下、本編後半で気になったところをピックアップする。

 本編で気になったところの抜粋

 ・気軽に頼みごとができる人

現代は、一人の仕事量が増えているのでどこの職場でも気軽にものを頼める雰囲気では

なくなっている。それで大概の人は相談すること自体を控えているのだが、ダメモトで頼

んでみよう。とのこと。それが第一歩。頼むことに慣れよう、というのが狙いだ。その次

の次元としては、「頼み方を工夫」することで応じてもらえる回数を増やすことである。

・話しながら、相手の様子に気を配る

この項は、実話を例に語られるのだが、商社営業部長Tさんが、夜のお客の接待が中止

になったので、自宅に早く帰る気になれず、後輩を飲みに誘った。その席上で、Tさんは、

商社マンの心得や自分の体験などを一方的に語り、実は、「自分は、この仕事に向いてい

ないのではないか」という悩みを募らせていた後輩の相談を、後輩が何度も、「実は、部

長」「あのー、ちょっと」「わたし、いま」などと切り出していたのに、「うん、まあ聞け」

「わかってる、わかってる」と会話を制し、一方的に話したのであった。それで、翌日後

輩は辞表を提出した、という話なのだ。会話は双方向のものであり、相手が何か相談した

がっていることに気づかねばならない、という教訓を教えるよい例となっている。

 ・助言が的外れになるのを防ぐには

①すぐに助言しようとしない

②相手のことは何もわかっていない

③相手は本当に言いたいことを話したがらない

④「問題は何か」を知るには、「もっと話してくれるように」質問するのがよい

⑤相手が本当の問題に気付いていない場合もある

【上記本文引用】

相手のことがわかれば、適格な助言ができるの項のなかで

・日頃の観察がものをいう

人間は、自分が抱える問題が何であるかわかっていない人が少なくない。いらいら状態

にあって、余裕がなくなれば、ますます、その傾向が目立ってくるが、本人にはわからな

い。自分のことは自分がよくわかっているというのは、間違いである。自分より、相手の

ことのほうがよくわかる。人に相談する理由も、ここにある。【本文引用】

些か耳が痛い。が、しかし、目的に向かって煮詰まっていく状態にあるときには、客観

的に自己を見極めようとするのは難しいのかも知れない。簡単な例でいくと徹夜での継続

した仕事は、一旦眠ってから客観視する必要がある。と、確かに私自身も思う。

この項を読んでいてさらに思うことは、人間の考えというものは、他者との議論で正さ

れていく、ということで、自分一人だけで反問を繰りかえしても圧倒的に材料が少ないの

で高邁な次元や深い洞察には至らない。角度の違う意見と、自分にはない材料を持った他

者との対話のなかで、新しい回答が導かれる。そのことを強く思った。

相手とほどよい距離を保つの項のなかで

 ・こんな助言は依存心を強める

相談に乗っていると、自分で問題を解決する姿勢を捨てて相手に頼り切ろうとする場合

が出てくるので、そこは途中で突き放したほうがよい、と書かれていた。

それよりも、その先で例として挙げられたエピソードで、小川洋子さんと河合隼雄さん

の『生きるとは、自分の物語をつくること』という対話でのやりとりが面白かった。

小川:私、先生のご本の中で印象深かったことがあるんです。京都の国立博物館の文化

 財を修繕する係の方が、例えば布の修理をする時に、後から新しい布を足す場合、その

 新しい布が古い布より強いと却って傷つけることになる。修繕するものとされるものの

 力関係に差があるといけないとおっしゃっているんです。

 河合:そうです。それは非常に大事なことで、だいたい人を助けに行く人はね、強い人

 が多いんです。

これは、往々にしてあることだと思う。聖書の「新しいぶどう酒は新しい革袋に」とい

うキリストの言葉と同じで、力関係で同程度でないと力の弱いほうが結局は弱ってしまう。

上から目線での同情を受けても、相談した方が救われるわけでなはないからだ。同様に、

「こうしなさい」という正論や理想の姿を強要しても救われない。相談される方には相手

を斟酌することが大事だと思った。

 ・否定から入るな

・正しい助言だからと、押しつけない

正しいことでも 押しつけるのはわがままである

・聞かなければ相手のことがわからない

これは、まったく同感した。話題のタイトルを持ち出しただけで、すぐ自分が決めてい

た返答をする。じっくりと相手の話を聞くと、相手が困っている根本原因が実は相談を受

けるほうが予見していた内容と違う場合もあるからだ。

以上で、本編の紹介が殆どになったが書評を終わろうと思う。

簡単なことが敢えて指導してあったが、この本を読めば普段あまり意識せずに素通りし

ている自分の考え方や意志の決定の仕方などのマズイ部分が再認識されると思う。

是非本編を読んでいただきたい。

 「あとがき」の中のポイント

最後に、「あとがき」の中のポイントをそのまま紹介して終わりとする。

1 人に相談して、他人の力を借りることは、すばらしいことであり、それによって、

仕事も人間関係も前進する。

2 人の相談にのるのは、相手を支援すると同時に、自らのコミュニケーション力を向

上させることにつながる。

3 相談する、相談にのる姿は、お互いが等身大の姿で向き合うことである。

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