『インターネット天文台ー美里から世界へ』読了(追記あり)

 尾久土正己(おきゅうど まさみ)さんの、『インターネット天文台ー美里から世界へ』を読みました。


インターネット天文台―美里から世界へ

インターネット天文台―美里から世界へ

  • 作者: 尾久土 正己
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1999/10/25
  • メディア: 単行本

 例によって、感想は追記をお待ちください。

 

   追記・感想

 

 私の思いこみによって、本編の内容と微妙にずれている紹介が混ざってしまうかも知れ

ませんが、その点、どうかご容赦ください。(詳細は、本編をお読みください)

 

 著者、尾久土正己さんは、兵庫県立西はりま天文台(私も行ったことがある。入館はし

ていないのだが)から和歌山にある、みさと(美里町にあるが、岡山の美星天文台と字面

が似ているので、ひらがな表記にされたそう)天文台に移られた。

 そこで、天体のライブ映像による天体観測を中心にした学校(主に中学、高校だったと

思うが)での授業に奮闘される顛末を記したのが、この書です。

 

 1987年に始まった環境庁による「星空の街コンテスト」と、1989年から実施さ

れた竹下内閣による「ふるさと創生一億円事業」によって、全国に天文台が建てられる建

設ラッシュとなった。しかも反射鏡の口径の大きさを競い合うものだった。

 しかし、それは、社会人向けのアプローチでしかなかった。

 

 理科など、或いは、生物や化学などの授業をしていて、一番生徒が興味が湧くのは実験

を自分で体験することである。

 ところが、天文の授業は、昼間には当然、星空を見ることが出来ず、そのライブ感を味

わうことが出来ない。

 

 尾久土正己さんが、その当時は、まだ不十分な環境だったインターネットを使って、全

国や世界の天文台とのデータのやりとりを実践され(当然、インターネット環境の整備に

も自ら係わられた)、日蝕の様子や、惑星や、月によって星座が消される星蝕の様子など

を、日本国内同士では夜の観測は夜に、そして、海外へは、こちらの夜空を昼間の現地へ

見せるなどの二点同時授業をされるまでの経緯を書かれている。

 

 その当時は、段々とインターネット技術が進歩していた頃で、インターネット電話(ウ

ェブカメラによる)を使って、観測者自身や望遠鏡の動く様子、そして、画像をCCDカ

メラに切り替えて、実際の星空も中継する。当然、文字や音声などを同時に通信すること

も出来るので、質問に答えながら天体を紹介することが出来る訳です。

 

 そこまで行くのに、自治体から費用が出せないなどの問題も幾多も経験され、それでも、

確実に願ったことが実践されていく。

 

 そして究極は、「生徒が実験に参加するから楽しい」つまり「遠隔地で星空を見ている

子供たち自身が望遠鏡を操作できないだろうか」という考えに至られ、インターネット通

信を使って、遠隔地から画面を見ている生徒に望遠鏡を操作させる授業にも成功されまし

た。

 

 何度も計画が頓挫しそうになると、突然協力者が現れたりして、或いは技術が追いつい

たり、プログラムのバグを会ったばかりの人に教えてもらったりして、事がどんどん進ん

でいきます。

 

 高校教諭から、もう一度自身が大学(院生)に戻りたいと思い、何とか古巣の大学に学

生として戻り、ご自分の実家のすぐ傍に天文台が出来ると知るや高校教師に戻られた。そ

して、西はりま天文台の職員となられる。その後、みさと天文台の館長にと熱い誘いを受

け、みさと天文台の館長に就任される。

 やはり、ご自身の、みさと天文台のインターネット環境をどうにかしてあげたいという

思いや行動、ご自身のこれまでに蓄積されたインターネットに関する知識。そして、無論、

天文に関する知識、観測ノウハウ。それに、何より、子供たちが喜ぶ顔が見たい、という

思いが、インターネット授業の成功やご自身の軌跡にも繋がっているのだなぁ、と思いま

した。

 好きが勝つ、と苦にならない、ということもあると思います。

 

 折角の天体ショー中継が、雨で、或いは曇りで伝えられなかったり、という不遇も何度

も経験されています。

 世界の様々な土地の天文台が、同じ天体ショーを追っているので、そういう時は、逆に

他の地点からの映像を観測させてもらえるという事もあるのが、何とも頼もしいですね。

 

 この本が上梓されたのが、1999年ですから、それからもインターネット環境とそれ

に繋がる天文台の数は増えているのだと思います。

 今では、個人のコンピュータで天体のリアル映像を呼び出せるようになったようですね。

 

 さきがけの努力を知る一冊でした。

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コメント

  1. 山雨 乃兎 より:

    >shinさん
    ナイスを有り難うございます。(^。^)

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