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『点と線』読了(追記あり)

 松本清張さんの、『点と線』を読みました。


点と線

点と線

  • 作者: 松本清張
  • 出版社/メーカー: 新潮文庫
  • 発売日: 1971/05/25
  • メディア: 文庫

 例によって、感想は追記をお待ちください。

 

   追記・感想

【お断り、(大変申し遅れましたが、感想はネタバレを含むので、御作品を愉しまれたい方は、本編を先に読んでから、あとで感想をお読みください!】 

 

 

 

 犯人が列車で移動したと思いこんでいた刑事でしたが、真相は知己の役人を使ってのア

リバイづくり、と飛行機での移動。これによって、事件が起きたその時刻には現場に居な

かったことを証明していたのでした。

 トリックだけに限って言えば、西村京太郎さんの作品にもよく用いられる手法です。勿

論、松本清張さんの方が先輩ですが。

 官僚が汚職事件を隠すため、というのが殺人の動機です。こういうケース、露見してい

ない現実の事案もあるのではないか、と思いました。

 情死では、単なる自殺と思われてしまう。情死という状況だと、事件性を疑わない。

 その情死に不可解な点。情死に至るまでの二人の行動に不可解な点があることから、地

元の刑事、さらには警視庁の刑事が独自に探っていくのですが。

 警視庁捜査二課というのは、××省の汚職事件の方を調べているのですが、必然、情死

した官僚、トップの補佐役でたたき上げであるが故に内部情報に精通しているその人の死

が仕組まれたものではなかったか、と探っていく訳です。

 ですが、一旦、情死事件の方はケリがついていて、どこにも綻びがないというのに、こ

れだけの時間を割いて、警視庁の捜査二課の課長と部下が捜査に取り組むケースがあるの

だろうか、という点が、不自然に思えました。

 最後まで状況証拠しか掴めず、肝心の犯人と思える人間が、またしても自殺してしまう

結末。だから、本ストーリー自体が想像・憶測だったかも知れないという疑いは消えない

訳です。まあ、飛行機への身代わり搭乗手続きの件は明らかになっていますから、何のた

めに安田が飛行機に乗ったのかが、犯行がなかったにしろ何かを安田が決行したことには

間違いはない訳ですが。

 思うに、安田が捕まって自白させられる場面というのは、無くてよかったのでしょう。

それを書くと、本編がくどくなるだけだから、という計算が清張さんにはあったのでしょ

う。

 社会悪というのが背景としてあって、推理物でありながら、そういう社会悪の方をあぶ

り出させている。

 サスペンス性充分で、ページを捲りたくなる物語展開です。

 推理が進んで進展したかに見えると、また、そのすぐ先で壁にぶちあたって振り出しに

戻ることの繰りかえしです。

 全編を通して、それぞれの人の心内が刑事の推察ではあるが見事に描写されていた。省

の役人の心理。その省への納入業者の心理。また、女性の心理。

 清張さんには社会経験があるのでしょう。机上の想像だけで、このような心内描写は描

けないよ。

 一気に読ませて頂きました。

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