辻仁成さんの、『愛をください』を読みました。
感想は、例によって、追記をお待ちください。
追記・感想
してやられました。
本文中に、大どんでん返しが仕掛けてありました。
記憶がおぼろげで本編を正確に紹介はできないかも知れませんが、書きます。
養護施設に暮らす主人公は、自殺未遂を繰りかえしていた。そこで、同じ養護施設に居
たことのある若い社会人の男の人に、その娘に向けて手紙を養護施設の先生が書かせた。
そして、二人の文通が始まっていきます。
文通といっても、この小説の舞台設定では、もうメールも携帯もある時代です。しかし、
娘は、文通の良さを理解して同意するのです。
養護施設で虐待を受けて、父母には捨てられた過去を呪い自殺未遂を繰りかえす主人公。
社会人の男は、娘の心をほぐしていきます。
娘は、勉強はできるのだけれど、大学には進学したくなくて、周囲の反対を押し切って
保母の資格をとり、保育園に就職します。
そこからの人生にも、一波乱あるのですが、社会人の男は的確にアドバイスします。
それで、こういう感じに進んでいくのか、最終的には二人は会うのだろうな、と読んで
いきますと、大どんでん返し。
後半は、泣かされました。
やはり、不治の病、死別、を描くのはカタルシスを誘われます。
著者は、病気のことについても詳しく調べて書かれています。
読者には決して明かさない仕掛けを内包して書きすすめられる。
全編、手紙のやりとりを描いた作品なのですが、その手紙も、二人の親密感がだんだん
変化していくのを文体の変化で描かれています。
これが書かれた年代だと、「養護施設」「虐待」なども、時代のキーワードとしてあっ
たでしょうが、それを独特の切り口で作品にされている。
本編中の様々なエピソードも、実にリアルに表現されています。
面白かったです。泣かされました。
現代小説の一つの形でしょうね。
コメント
人間はひとりでは生きられない。をしみじみ感じます。
乗り越えたい課題があるからこそ、本来の姿が意味を為す…、場合がありますね。困難を乗り越えることとして自分には何が欠けているかを感じます。
>有希さん
主人公が成長してゆくのがメインの話です。
たしかに、人間はひとりでは生きられませんね。
また、お寄りくださいね。(^。^)