佐伯一麦さんの、『ノルゲ』を、やっと読了しました。
レビューは、少しお待ちください。(追記記事で感想は挙げますので、今しばらくお待ちください)
追記、レビュー
Norge(ノルゲ)というのは現地語で、ノルウェーの意味だった。
佐伯さん自身が奥さんの留学に同行してノルウェーに滞在された期間の出来事を綴った内容だった。
佐伯一麦さんは、ご自身のことを私小説作家だと言っておられるので、この作品もご自身の体験を書かれたものだと推察できる。しかも、僕が読んでみて感じたのは、全編実際の現実の体験そのままが何の虚もなく描かれているようだったということだ。こういうタイプの作品を確かに私小説と分類するのだろう、それは、私小説という範疇であることは間違いないが、エッセイ、或いはノンフィクションの旅行記と言い換えても問題がないのではないかと思えるほどだった。
全体の分量が長い。しかも、特別な出来事があまり起こらないので、しかも、一文一文が長文なので、読むのが正直しんどかった。でも、こういう作品こそが文学の部類にはいるのだと思う。推理物やエンターテインメント指向の方にはつまらないかも知れない。
『The Birds』という文学作品のことが、主人公の心のなかの回想や思念として本編中にはさまれるのが、全体の展開のスピードを緩めさせることになり、それが、ほのぼのとした雰囲気を創り出していてよかったと思う。また、『The birds』の全編訳を主人公が完遂させているのがなかなか興味深い。あとがきの中で、翻訳に関しては田幸早穂さんの協力を得た、とあるが、佐伯さんご本人が翻訳されたことに変わりないと思うと、その向学心に頭が下がる思いだ。
夏になると日が極端に長い。冬は、午後3時には日が暮れてしまう。(済みません。この反対だったかも。地球儀を思い描いても日照の範囲の画が浮かばないんです。間違ってたらご指摘ください)
白夜には上手く睡眠が摂れない。その反対に、日が短い季節は気が滅入る。という感覚も描いてありました。麻薬常習者が多い、という現実もあるらしいです。
佐伯さんが、生前懇意にされていたテキスタイル作家(織物で美術作品を創作する人)の方のお墓に参るシーンが、この世(人生)の無常感を表していました。
ノルウェー滞在中に、日本の出版社とやりとりをする為に、電話線のコネクター部分を開けて、パソコンと配線を直に繋ぐシーン。流石、元電気工事士。
パソコンの動きが鈍くなってきたので、リカバリーしようとするが、ウィンドウズのシリアルナンバーをどこにもメモってないことを嘆き、それでも、セーブモードからDOSベース画面の中を探しまわって番号を探し出す、というシーンも、僕もパソコンには泣かされつづけているので同情して読みました。
ストーリーは、様々な人たちとの邂逅が主なんですが、僕の頭には全体のストーリーは残りませんでした。ちょっと読むのに時間がかかり過ぎての事かも知れません。
全体として、一番、痛烈だったのは、佐伯さんご自身の病歴のことです。
電気工事士時代に、電柱の上から落下事故を起こされているそうです。
アスベストが問題視されていなかった時期に、或る現場で大量にアスベストを吸引したのではないかという、自身の健康に対する危惧。その時の工事仲間がご自分以外の二人は亡くなられている。
元々あった喘息。
鬱病にもなられていて、今回のノルウェー行きも、医者の薦めから。(独りで居ないほうがいいというアドバイスから、奥さんの留学に同行)
自殺未遂のことも、数行出てきます。
そして、今回の滞在中に突如襲った、群発頭痛。(眼の奥に、熾火のような痛み)
気の滅入りを紛らわせる、一杯のビールも飲めないという辛い現実。
もの凄く痛切に、読み手である僕に伝わってきました。
余談ですが、ノルウェーには「ルートフィスク」という魚料理があるそうです。ノルウェーの人はあまり好きでないそうですが、主人公は気に入ったようです。
日本で言うと「鮒寿司」のようなものらしいですが、どんなものなんだろう、と興味が湧きました。
以上、殆どレビューにも感想にもなってませんが、この辺で。
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