『作家養成講座』読了

 若桜木虔(わかさき けん)さんの、『作家養成講座(それでも小説を書きたい人への最強アドバイス)』を読みました。


作家養成講座―それでも小説を書きたい人への最強アドバイス95

作家養成講座―それでも小説を書きたい人への最強アドバイス95

  • 作者: 若桜木 虔
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 1998/02/01
  • メディア: 単行本

 これを読んで、非常に暗い気分になりました。

 新人賞に応募する場合、これだけはやってはいけない、という項目で沢山のやってはいけないことが書かれているのです。

 読みすすむ内に、自分の今までの作品は、若桜木さんの眼鏡にかなっているだろうか、と思って、読み返してみました。

 三人称神様視点はできるだけ避ける。視点の移動をできるだけ同一作品内に出さないようにする、という点ではクリアしていましたが、その他にも色々若桜木さんから見れば気になることがあるようです。

 最低限のことをアドバイスされているのかも知れませんが、これだけ注意点を言われると、書けなくなります。

 それでも、若桜木さんの意見と一致したのは、新人賞で受賞を狙おうと思ったら、今までに読んだことがない内容をぶつけることが大事だという点です。

 言うは易く、行うは難し。

 そういう題材になかなか巡り合えませんが……。

 この本、投稿生活にはいっている人は、あまり読むべきではありません。

 細かい注意点を指摘されつづけて、折角の創作意欲が萎えるからです。

 でも、基本的に、現代国語で9や10の成績をとってきた人だったら、この本を読まなくても、間違った文章というのは書かないと思います。

 それと、下手な文章であることも強みである、という事を特に思います。

 文法的に間違っていない文章だけで書いている小説家ばかりではありません。(例えば、大江健三郎さんの小説は、文法的に間違っている文章も敢えて使われています)

 全編を起承転結に分けて、さらに節を設けて、全体を16分割で構成してプロットを創れ、と仰有っていますが、全編をあらかじめ決めて書く書き方はエンターテイメントの書き方です。中間小説や文学の場合は、何も全編の骨組みを決めてかかる必要はないと思います。

 以上です。

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コメント

  1. K より:

    こんにちは。
    初めてお邪魔しました。Kと申します。
    えーっと……。
    若桜木さんって、元々、「エンターテイメント小説」の指導をされている方ですよね?
    若桜木さんが主催している、小説講座のHPの一部にも書かれていましたが、「エンターテイメント小説なら、どんなジャンルでも指導します」「純文学は指導できません(専門外だからだと思います)」と、キッパリと言っていますし。
    なので。若桜木さんの指南本が、純文学とか、純文学ふう??の小説を目指す方々に合わないのは、当然かも知れませんよね。
    私も作家を目指していますが、若桜木さんの指南本は、初めから、ジャンルは何であれ、全てが「エンターテイメント小説」対象。だと思って読んでいます。

  2. 山雨 乃兎 より:

    >Kさん
    確かに、僕も公募ガイドの『作家養成講座』で、「エンターテインメントの場合は」という科白を見ました。
    純文学や中間小説では、あまり粗筋を最後まで決めて書く人は少ないです。
    全体を起承転結に分けて、さらに、それぞれの章のなかに起承転結か起転結をつけたプロットを創るというのは大変そうです。でも、エンターテインメント(特にミステリー)の作家などは皆、それくらいはやっているのでしょうね。頭が下がります。ストーリーテリングに徹した書き方は、結末を一番先に決めるらしいですね。
    文学のほうにも共通するのが、視点の揺れをなくす、という指南でした。
    けれども、僕も客観目線と一人称視点は多少交さってしまうし、例えば、主語をはぶいてある文章に全部仮に主語を復活させて文を再構築した場合、主人公が感じたのか客観的にそう見えたのか、情景描写などでは曖昧な文章も挟んでしまいます。
    若桜木さんの指導は徹底して厳しいので、意識しすぎると書けなくなります。
    若桜木さんご自身も言っておられましたが、初稿を脱稿する段階では、あまり深く考えずに書いていって、推敲・校正で瑕疵を直せばちょうどいいとも思います。
    けれど、それでも、悪文(文法的におかしい)と言われる文章を積み重ねて一つの作品に仕上げる人もいるので、どうなんだろう、と思ってしまいました。
    Kさん、また、お寄りくださいね。
    では。(^。^)

  3. K より:

    お返事、ありがとうございました。
    山雨さんは、純文学系を執筆されておられるのですか?
    お邪魔したばかりなので、過去記事を読んでいなくて、スミマセン……。
    私は完全な、ノンジャンル現代小説を書いています。
    とは言うものの、まだまだ素人。キャリアも浅いです。だから。
    ミステリーとかSFなんかは難しくて、とてもとても書けません。
    時代小説は考証が難しくて、初めから書く気になれないですし。
    純文学は高尚で、知的レベルが足りません……。
    プロットに関しては、初めは私も、全体を通した粗筋的なものしか組みません。
    でも私の場合は、やっぱり、早い段階でラストが浮かんだほうが書きやすいです。それに向けての、一貫したストーリーが組めますし。
    更に、ラストにおいて登場人物たちが、どんな言動や行動を取っているかによって、また、その精神・感情面を思い浮かべることにより、早くからキャラ達の取るべき方向が見えてきます。
    となれば、キャラも立てやすいですし、結果的には、書きやすくなるのかな?などと思っています。
    な~んて言いながら……。
    これがキチンと出来ていれば、きっと今頃は堂々と、新人賞を狙っていたことでしょう!
    小説って、難しいですね……(大泣)

  4. 山雨 乃兎 より:

    >Kさん
    僕は、自分の書いているものが正確にどのジャンルになるのか判然としないですね。
    一応は、純文学と、作品によっては中間小説やエンターテインメントだったりします。
    ノンジャンル現代小説と仰有っていますから、Kさんの場合は、群像とか宝石とか、小説すばるに応募してみるのがいいと思います。小説すばるだと、ジャンルの幅が相当広く、自身でジャンル分けが分からない作品でも応募作として該当しますから。
    ミステリーやSFは、やはりストーリーを完全に決めて、読者を裏切るように、物語りを二転三転させる必要があるようです。
    時代小説は、歴史小説と違って、或る時期というのを選び出して、その時期の背景に問題がなければいいので、しかも、その時代のどこにでも居そうな町人などを主人公にすると、そんなに難しくないと確か、山本一力さんが仰有っていました。
    純文学も高尚とは限りません。
    一般の人が知らない世界を、生活者の視線で描けばいいと思います。
    綿矢りささんのような、閉じた世界でもいい訳ですし、難しい熟語を必ずしも使う必要はなく、文法的に間違った悪文を重ねていっても、主人公の気持ちや人物描写が出ていれば、よいと思います。
    新人賞は、尺に(応募原稿の長さ)に色々ありますので、ご自分に合う長さの賞もきっとあります。
    是非、新人賞に応募してみてください。
    では、また。(^。^)

  5. 作家養成講座―それでも小説を書きたい人への最強アドバイス95

    作家養成講座―それでも小説を書きたい人への最強アドバイス95

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