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TVの感想

 先日観た映画について

 柳生十兵衛を題材にしたフィクションのドラマか映画を観たが、最後が衝撃だった。
 家光に忠義を尽くすことのみで、自身の良心を納得させてきた大目付のまえに、十兵衛から家光の生首がとどけられるのである。
 大目付の発狂。
「おのおの方、お騒ぎなするな! これは、夢でござる!」
 と、自身は右手を十兵衛に切断されて、残った左腕で上様の生首を抱きながら叫ぶのである。
 大目付としては、先代の将軍から任された徳川家を護るという事が、一番の肝心ごと。 ナンバー2が亡くなったとしても、何とか家臣を落ちつかせ、城内の平静をとりもって、新しい策を練り、士気を高めることはできる。
 が、しかし、上様の生首をわたされたのである。
 これは最早、どうとり繕うこともできない。
 正に、一瞬にしての人格の破綻である。
 正に、発狂だ。
 R指定程度のインパクトではない。
 視ている方は、大目付に感情移入して、ここまで物語についてきたから、我が事のように辛辣な気分になる。
 脚本家は、剣豪宮本武蔵の成長物語のように、柳生十兵衛を描きたかったということが伺える。
 武家の勢力が強く、未だ戦国時代を少し引きずっていた時代の、終わりのない、攻撃とそれを上回りつづける度を超した報復合戦のなかで、人は規範をどこに据えればよいのか分からなくなっていた。
 あの物語の終わりは、一身上の恨みを刀で返す柳生十兵衛がスカッとやってくれた、と視聴者にカタルシスをもたらすものだが、私にとっては、まったく反対の感想になってしまった。
 何と、むごいのか。
 さて、貴方は、どうだろう。
 誰に感情移入するかによって、物語のテーマの中心は、大きく変わってしまう。
 しかし、久しぶりに前代未聞の名作を視たと思えた。

 私はこのブログで万年筆の魅力を綴ってきましたが、実は長年、その万年筆を相棒に物語を紡いできた小説家でもあります。

 インクが紙に染み込むように、人の心の奥底にある「光と影」をすくい上げたい——。そんな想いで書き上げたのが、私の代表作『閉鎖病棟』です。

 閉ざされた場所で交錯する、剥き出しの人間模様。 作家として「本当に面白い、価値のあるものを届けたい」という一心で、一文字ずつ丁寧に命を吹き込みました。

 万年筆を愛するあなたなら、きっとこの物語の「手触り」を感じていただけるはずです。

 画面を閉じる前に、ぜひ一度、私の本の世界を覗いてみてください。

真夜中のつれづれ記……
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