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本気の奴と組まないと、バンドは前に進まない。

 色々なメンバーと、バンドを組んだり別れたりを繰りかえしたのですが、そのなかで、ぜんぜん前に進まないバンドがありました。

 組んだメンバーは、雑誌で募集したボーカル女子と、他は、すべて同級生。

 それまでバンドになんか、何の興味もなかった同級生が、突如、「バンドしよう」と誘ってきたのです。
 その子は、ベースをやりたいというので、丁度昔から知っていた同級生のギターの弾ける奴も呼んで、雑誌で募集欄に応募してきた女性ボーカル希望の女の子と、即席でバンドを組んだんです。

 ギターの奴が、どうしてもこの曲をやりたい、と言うので、ゴダイゴの『モンキーマジック』を練習することになりました。

 でもね、肝心の歌の歌詞が手に入らない。
 当時は、今と違ってインターネットもありませんから。
 だったらスコア譜でも買えばよかったのですが、誰一人、それを用意しようとしない。

 だから、ボーカルがきちんと歌えない状況でした。

 それはともかく、ベースの奴はまったくの初心者です。
 しかも、自分の楽器を用意しない。
 それで、僕の2つあるベースのうちの、ネックが酷く順ぞりしている奴を貸したのですが、当然それではマトモに演奏できません。

「そっちのベース貸してーな」
 と奴は言うのですが、本気でバンドをしたかったら自分の楽器を買うべきでしょう。
 初心者用のベースなんて、新品でも1万5千円ぐらいで売っていますよ。

 練習の合奏は、メタメタです。

 何がいけないのかと言うと、ギターの奴がまったく舞台度胸がないのですよ。
 舞台度胸どころか、人前で大きな音を出すのが怖いのです。
 自分の家ではマトモに弾けてるのに、合奏の場になったら、極端にボリュームを絞るんです。
 しかも、思い切りのない性格ですから、たとえば僕がカウントを出して、いざバンッと音を出す場面でも、思い切りがないからタイミングが遅れる。

 このバンド、一回全体練習しただけで、こちらから断りましたよ。

 舞台度胸がないなら、バンドじゃなくて別のことをしたらいいですよ。
 ベースの奴にしても、31になってから、急にバンドしようと言いだして……。
 だいたいバンドする奴って、高校生の頃から始めてます。

 プロになる人って、「絶対になってやる。誰よりも目立ちたい」という想いが強烈ですから、こんなヘッポコな奴らは、自室でギター弾いといてください。

 たまに、バンドマンでも、性格が内向的な人、人前で目立ちたくない人もいます。
 そういう人が、どうやって人前で演奏する気になるのかと言えば、それは、もの凄く練習するからです。
 気まぐれで10回、同じフレーズを弾いても、10回とも絶対に失敗しないレベルまで練習して技術を上げる。
 だから、人前で弾くときにも躊躇しないんです。

 今回のギターの同級生にしても、舞台度胸がないなら、絶対に失敗しないレベルまで練習することが大事です。

 まあ、この二人は、楽器を演奏することに関しては、永遠にオナニーですけどね。

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