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映画『三文役者』完視聴(追記あり)

 原作・脚本・監督:新藤兼人さん 主演:竹中直人さん 荻野目慶子さんの、映画『三文役者』を観ました。
 例によって感想は、追記をお待ち下さい。

   追記・感想

【このレビューは、ネタバレを含みます。】

 最後のシーンで号泣しました。
 僕の年齢だからドハマリします。若い人がこの映画を観ても、そんなに共感しないかもですね。

 役者・殿山泰司さん(タイちゃん)の人生を描いた作品。
 本編には、殿山さん出演映画の映像も挟み込まれます。
 どこかで観たことあるお顔だな、と思いました。沢山の日本映画に出演されているので、僕自身も目にしている役者さんでした。
 語りに、何度も殿山さんと共演されている、乙羽信子さんが出ておられます。殿山さんやその妻に話しかけるという設定です。

 何人もの監督と仕事をしてこられた殿山さんですが、よく一緒に仕事をされた監督は、夏に決まって撮影をする。全編、真夏の炎天下の撮影の状況が出てきました。暑そうです。夏だからこそ、役者の躍動感が伝わる映像が撮れるのでしょうね。

 荻野目慶子が、半裸になるシーンが多いです。というか、全裸シーンもあります。荻野目慶子ファンには、堪らない作品でしょうね。

 喫茶店で、ウェイトレスに身の上話を打ち明ける主人公。
 そのあとの動きも含めて、アプローチが積極的です。
 これくらい積極的にならないと、意中の女はゲットできないのだよ、と今の若者に教えてやりたくなりました。(大きなお世話かw)
 二十年くらい年の離れたキミエと内縁関係になります。
 しかし、タイちゃんには、既に内縁の妻・アサ子がいて、アサ子は婚姻届を出し、養女まで迎える。
 タイちゃんの生活は、キミエとの家庭メインですが、要所要所でアサ子にも逢う。
 映画で数々の賞に輝いたり、酒好きが昂じて肝臓病を患ったり、手当たり次第に飲み屋の女とねんごろになって、キミエに見つかり修羅場になったりします。

 キミエが、酒を止められず、仕事も減って自棄になっているタイちゃんに言うのは、
「アンタには、向上心は無いのか」
 ということ。
 しかし、映画を観ていて、タイちゃんには充分に向上心があると思いました。

 酒が好きで、終盤は、お腹が膨れてくるんですよね。肝硬変の腹水ですよね。
 緊急で病院に搬送されて、いよいよ命が終わるかもしれない、という状況になったとき、アサ子は、病院へ見舞いに行くことは断って、神社でお百度参りをするんですね。
 タイちゃんは、キミエにとられたようなものだが、婚姻関係もあるし妻であるという自負と、何よりタイちゃんを本心から愛しているのですね。
 キミエは、結婚指輪を用意して、臨終寸前のタイちゃんに、「嵌めてほしい」と頼んで嵌めてもらうのです。
 もう、この両方のシーンで号泣。

 東京の色んな場所が出てきて、観光地や隠れスポットを知る意味でも良かったです。
 ジャズ喫茶や新宿PIT INNなどのライブハウスなども出てきて興味深かったです。

 脇役が仕事の殿山さん。美形の顔ではないし、颯爽とした感じでもありませんが、仕事のお呼びがかからないときは、ミステリーや外国文学を読まれるし、前衛ジャズなども聴かれる、演じる時代劇の時代背景も勉強されてるし、教養人だなと思いました。

 スナックのママが自らタイちゃんを寝間に誘うシーンもありました。
 中年以降になってくると、女性も性欲が強くなるらしいですが、まあ、それは人によりけりでしょうが、女の方から誘ってくる、いい男だということですね。タイちゃんは。役者として名が売れているし、大きな賞もとっているし、何より人柄がいいからでしょうね。

 何かをやり切った人生、何より楽しい人生、「良かったねー、タイちゃん」と心から思える映画でした。

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