「富んでいる者は、益々増し加わり、無き者は、無きがごとくになるであろう」という聖句が、全編を観ていて浮かびました。
家庭の経済的状況で、学校へ通えなかった人たちが、夜間中学という制度があるのを知り、読み書きそろばんを覚えていくというストーリーです。
登場人物のなかで、イノさんという人が一番不遇に思いました。
最低限の読み書きそろばんが出来ないと、底辺の仕事をするしかない。仕事にあったら便利な車の運転免許もとれない。毎日が、しんどい仕事で、病欠で有給という仕事でもない。
学力の差が、そのまま生活レベルの差になってゆくのだな、と思いました。
そして、その底辺の生活から、なかなか抜け出せない。
義務教育の段階で脱落した人が、もう一度読み書きそろばんを習得する。そんな場所は、夜間中学しかないのでしょうね。
田中邦衛演じる、イノさんが、竹下景子演じる、田島先生に、「お嫁さんになってください」と葉書で告白しますが、田島先生が、「誤解を受けるほど、近い距離の接し方をした自分に責任があります」と悩んでしまいます。
イノさんが、子供だな、という感想はもちろん持ったのですが、或る本にも書かれていましたが、先生は、生徒から恋愛感情を抱かれるのが当然ということを思いだしました。教師が生徒に教える図式は、知らないことを教えるということなので、自然に尊敬が生まれ恋愛感情が生まれます。
悩んでいる田島先生を助けようとして、田島先生が求婚には応じられないことを代弁した黒井先生でしたが、この箇所は、観る人によって感想は違うと思います。
私の感想としては、たとえ分不相応な関係性での告白であったとしても、きっちりと本人が相手に、それには応じられないという意思を伝えるべきです。プライドを潰されたイノさんの気持ちが分かります。
他に思ったのは、夜間中学にしろ定時制高校にしろ、全日制の中・高校とは違って、先生は、ほとんどの場合、自分よりも社会経験豊富な年上の人に教えなければならない、ということ。
生徒に対して失礼にはならない接し方で、尚且つ、教えてくれる人だと思われて尊敬されることが大事です。
主人公、西田敏行演じる、黒井先生の授業は、生徒との肉薄するコミュニケーションの授業です。
学ぶということは、単に知らない知識を伝達してもらうということではないことを再認識させてくれます。
それにしても、この映画、骨が太かった。
Amazonプライムで観ましたけど、継続して観るのがしんどくなり、何度も一時停止して再視聴を翌日にしました。扱っている内容が、重い。そして深い。
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