追記・感想
定年間近か、定年を迎えたあと、無職でいるよりも仕事をすることが生き甲斐になる。
著者が、多くの人に取材した、定年後の新しい仕事と、その経緯や大変さ、やりがいなどを詳細に描いたルポルタージュ。
版が古いので、丁度十年前の取材時期だが、大いに参考になると思われる。
現役時代のスキルを活かして独立、あるいは、前職とは関係なく元々好きでたまらなかったことを追究して新しい仕事を始める、など、形は様々だ。
本格的に大規模に事業展開する人もあれば、こぢんまりと、たとえば年金などの収入がベースにあった上で、趣味の延長として店を営業する、という人もいる。
読んでいて感じたことだが、どの人も、新しい仕事をするために、その修行や勉強を徹底的にされている。プロと呼べるスキルに到達していないと、簡単には開業できないな、と感じた。
とくに印象に残ったところを、以下に本文を引用する。
「人が老いていくということについて、色々考えさせられました。(中略)ストレスをため込む生き方をすれば、歳をとってから必ずしっぺ返しがくる」【パソコンの先生になる(本文121P)】
少しでもパソコンの知識がある人なら、自分で変換作業を行って、市販の画像ソフトを使えば過去のすべての写真を一括管理することが可能だ。だが、【デジタル写真の統一規格をめざす(本文257P)】
要するに、写真をデジカメからパソコンに取り込んで、アルバムとして残すとき、データの記憶形式が各メーカーのデジカメによって、すべて違っていた。メーカーが用意したソフトを使わないと、ふたたび写真を見ることも適わない状態だったので、各メーカーの記憶形式を統一しようとした。そういう仕事。
水を使わずに現像する方法はないかと考え続けていた。(中略)そんなとき小星さんは知人との会話の中で、ダブル不倫の話を聞く。(中略)三角関係が続いていたとき、魅力的な別の男性が現れ、女性の一人がその男性と恋に落ちた。その途端、三角関係は簡単に解消したという内容の話だった。(中略)鉄と強く結びついているEDTAを引き寄せる触媒さえ見つけられれば、鉄との結合は瞬時に解け、変色が止まるのだ。【デジタル写真の統一規格をめざす(本文261P)】
「仕事としてやっていれば、雑用係をさせられても、少なくとも腹を立てずに済みます。それがいかに大事なことかよくわかりました」【高齢者用住宅を建てる(本文273P)】
以下、「あとがきにかえて」から論考する。
仕事とは、どんな仕事でも楽ではない。一生遊んで暮らしたいとは、皆が一度は思うことである。とした上で、だが、仕事というものは、神が人間に科した罰といえるような、本当に苦痛に満ちた作業なのだろうか、と。
たしかに私も思う。
仕事は、どんな仕事でも、ある一定の負荷はかかるが、作業をしている手や腕の感覚を現在進行形で楽しむことも出来る。
若い時代にする、「金銭欲」「名誉欲」「生存欲」が理由の仕事。
第二の時期にする仕事は、楽しむことを中心にした、もっと自由度の高い心から生まれている。
資本主義社会の発展に伴う産業構造の複雑化。「企業戦士」と言われる、社会のためではなく、自分が所属する会社や組織の利益のために供せられる。
しかし、今現在は、経済は右肩上がりではなくなった。組織の歯車として働くことに意義を感じない人も多いのではないか。
この本に登場する、50代60代から第二の仕事を始めた人のケース、動機などは、これからの若い人の生き方に大いに参考になるのではないか、と著者は仰有る。仕事は、自己実現の舞台にもなるのだ。
全部で28人に対する取材だ。
色んなケースがある。
どの人も精力旺盛だな、と思った。
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