貴志祐介(きし ゆうすけ)さんの、『黒い家』を読みました。
うーん、気が重くなる。読後感が重い。毒がつよいエンターテインメントのホラーです。
例によって、感想は追記で書きますので、しばらくお待ちください。
追記・感想
ホラーというジャンルは、心霊とか超常現象を扱っているものだと私思いこんでいたのです。
この作品は、心理サスペンスですね。でも、こういう作品も広義にはホラーというのかも知れません。
数年前にTVドラマ化されていたという話を聞いていて、「そういえば、あれだったのか」と思いだしました。私、断片的にしかドラマを観ていなかったものですから。
サイコパスという言葉が出てきます。(ウィキペディアなどによると現在は使われなくなった言葉らしいのですが)
先天的な遺伝の異常か後天的な環境によるストレスを受けつづけたか、或いはそのどちらもによって、「相手の立場に置き換わって考えることを全くしない人間」というのが居るらしいのです。
主人公は、生命保険会社の保全部門(言葉が違っていたらご容赦を)に移ってきた役付の男性です。
保険金詐取目的の人物に翻弄され、何度も追い詰められる(命の危機に直面する)というお話です。
今回はあらすじは書きません。
初めて読んで、怖さを味わってみてください。
個人的には、主人公に会社に居残るように仕向けた犯人からの電話をかけさせられたトップ保険外交員だけは、何とか助けられなかったのか、ということが、何とも歯がゆく感じます。
どんな怪物よりも人間が一番怖い、ということを厭というほど教えてくれます。
以前、仕事場の上司と話したことがありましたが、「交通事故や予期できる災害には、事前に或る程度対策を練ることが出来るが、悪意を持った人間が何かをしかけてくる、という事には、完全な防衛はできないな」と仰有ったことを思いだしました。
この小説の内容を超える事件も実際に起きる世の中にはなってしまいました。
読後感は最悪です。それだけ読者にダメージを与える小説ですから秀作ですね。
私もよく悪い夢を見るのですが、人間というのは、起床から十分もすれば、頭のスイッチが切り替わって、夢の内容を完全に忘れます。モードが変わるというのか。
この作品は、逆に、起きている人の精神を悪夢を見ているときの状態にまで引きずり込む力を持っています。
という事は、少なくとも書いていらっしゃるときは、悪夢の精神状態のままひっぱられたのではないか、と思うわけですが、それはかなり、常人ではできないことですね。
話しが戻りますが、犯罪者が襲ってくるという危惧があるとき、それを出来ないようにする社会システムが、警察以外にも作られた方がよいように思います。せめて、公の場で簡単に誘拐や傷害が起こるというのを(作品中だけのことではなく、現実にも可能だと考え至るので)、阻止できる体制というのが何重にも創られるべきだと思いました。
どんな人間もやはり人間であることに変わりはない、という考え方を貫くのか、理屈も人情も通じない人間はやはり居て、そういう人が凶行に及んだとき、廃絶するのか、という議論も文中に盛り込まれています。
リアル恐怖でした。
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