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『乙女の密告』読了(追記あり)

 赤染晶子さんの、『乙女の密告』を読みました。


乙女の密告(新潮文庫)

乙女の密告(新潮文庫)

  • 作者: 赤染 晶子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/09/05
  • メディア: Kindle版

  感想は追記をお待ちください。

 

   追記・感想

 

 『初子さん』を新人賞受賞されたときに読んで、今回芥川賞受賞作の『乙女の密告』を読んだ。

 既に漏れ聞いていた或る感想情報によって推測していたのだが、バッハマン教授というのはて

っきり女性だと思い込んでいたが、男性であった。

 そのバッハマン教授の人物造形が充分であった。バッハマン教授がインパクトのあるキャラク

ターなので、外国語女子大学の風景が目に浮かぶ。

 麗子さま、という留年を何度かした年嵩の先輩が出てきたり、クラスの中で「すみれ組」と「黒

薔薇組」に分かれていたりして、女性だけのコミュニケーション社会の構図が大変興味深い。麗

子さま、と言うと、漫画『エースを狙え』のお蝶婦人を思い出してしまうのだが。

 後半になると、教授がいつも肌身離さず持ち歩いて、ときどき話しかけてもいた人形がなくな

るのだが、その辺りから、アンネ・フランクの隠れ家生活・密告者・ゲシュタポによって連行さ

れる、という一連の出来事と主人公みか子の現在を重ね合わせて描いていく。

 正直なところ、私にはこういう乙女の内的精神世界は完全には理解できない。だが、現在進行

形の日常と過去のアンネの生活をシンクロさせて描くというのは上手いと思った。個人のアイデ

ンティティを掘り下げることを主人公にも当てはめていく訳だから、書き手自身が内省のなかに

入り込んでいないとなかなか書けるものではない。

 全編に、無駄な文章がまったくない。

 それだけに、読み手を飽きさせない。

 私は大学生活は経験がないが、この作品を読むことによって追体験したような気分になった。

 女性でなければ書けない、女性の感覚が伝わってきて、女の内心とはこうなのか、と垣間見る

ことも出来た。

 特に、「真実はどうでもいい」乙女の潔癖さを確定する周りの評価、という点(私なりの言葉

に置き換えています)に、女性、特にこういう世代の女性の価値観を理解させられた。

 今回も殆ど内容の紹介になってしまいました。

 一気に読ませるスピード感があります。

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