『たかじんのそこまで言って委員会』に、前回か前々回に小企業の社長さんが出られていて、ご自分のお孫さんには、夏休みの間、島根の田舎の家庭に、何度も連泊させた、ということを仰有られていたわけです。
都会では、仕事は充分な負荷がかかりますが、仕事以外の部分では殆ど何もしなくてもいい、という生活になりますから、敢えて、お孫さんを田舎の一般家庭に宿泊させられたのだと思います。
それで、そういう体験をすると、人間しなきゃならないことが多数あるのだな、ということに気づきます。
そういうことを経験するのが、情操教育には必要なのだ、という考え方なのですね。
また、職場に少年を行かせると、職場も迷惑ですから、家庭に逗留して、大人の、しなければならないことや、生活する苦労というのを知ることは大事だと思うのです。
ここから、僕の普段の生活を辿って、田舎暮らしが、いかに大変かを紹介しましょう。
よく、小説や新書などの著者で、「あの当時は、精神的にまいっていて、昼頃起きて、一日中本を読むだけの仙人のような生活をしていました。あの生活があったから、今の一段高い到達があるのだと思います」というような科白を聞きますが、
それは、基本的に都会に住んでいるからでしょう。
田舎に住んでいれば、しなければならないことが、次々と押し寄せてきて、丸一日、本を読んだり執筆したりというようなスケジュールは組めません。甘いです。
まず、一年のうち、冬以外は、ムカデが頻繁に室内に出現します。
これは、同じ西脇市に住んでいても、地べたの都市部では出ないのです。
山際だから出るのです。
ムカデというのは、室内にも入ってきます。
寝ていても、天井から、最悪の場合、顔に落ちてきます。
最近、売られている、家のまわりに撒く防虫剤はかなり効きますが、雨が降って防虫剤が流されると効果は減ります。
しかも、ウチの場合、家の屋根の上に松の枝が張りだしているので、その枝から屋根に落ちて、家のなかに侵入します。
これを、どうやって退治するかですが、
僕の場合は、箸でつかんでいます。
箸でつかんで、牛乳瓶やウイスキーの壜に入れるのです。
壜に水を張っておかなくてはなりません。
空の壜に、ムカデを入れると這い上がってきますから。
箸の使い方は上手です。父に教えてもらったのですから。炊いた小豆でも難なく掴めます。
夏場は、とくに風呂などにヒルも出ます。
ヒルというのは、人間の(哺乳類の)血を吸う単体動物です。
これは、熱湯をかけて殺します。
吸いつかれても慌てることはありませんが。
春になると、溝掃除です。
溝掃除も、最近は溝がU字溝になったので、しかも、生活排水が下水に流れるようになったので、溝を直接掃除する必要はなくなりました。だから、割と楽ですが。
溝掃除のときは、溝の上に生えている草をひきます。
溝から掬った泥と、小道に生えている草を引き抜いたものを、一カ所に集めて、集配車を待ちます。
雪が多かった時期は、雪かきもありました。流石に屋根に登ってというところまではありませんが。
春から夏にかけては、二回は草刈りをします。
そして、何と言っても、家の裏の竹を刈らねばなりません。
これが一苦労です。
刈った竹は、或る程度の長さにさらに刈って、ゴミの収集センターに出すのです。
夏場は、蛇も出ます。
普段、自分の家に帰る道で出るのです。
蛇は、毒蛇の場合もあります。
ハメやハブも居るのです。
早い時点で、蛇が居ることを察知して、後退して、別のルートから帰ります。
夏は、カメムシも出ます。蟻も出ます。
勿論、ゴキブリもです。
ゴキブリや蟻を殺すのを躊躇していてはいけません。
殺生になるとか美談めいたことは考えていてはいけません。
だって、蟻だってゴキブリだって、家の外のものを食べて生き延びることも出来るのですから、人間の家のなかにはいってきた奴は殺されて当然だからです。
冬、とくに最近は、冬眠が上手くできない熊が、家の裏に来て声を出すこともあります。
熊からは、生活時間帯を工夫することによって、避けることが大事です。
僕の住んでいる中途半端な田舎でも、これだけの脅威があります。
田舎が閑静で風光明媚で羨ましい、と思われる方もあるようですが、一軒家を維持していくのもメン
テナンスの意味で大変です。
また、働けない状態だからといって、何もしないで、自分の目的のことだけをしていればいいという
生活にはなりません。
毎日、最低限、米を炊かねばなりません。
洗濯物も取り込まなくてはなりません。ときには、洗濯そのものもします。
天気が悪い日がつづくと、家族全員の洗濯物を持ってコインランドリーにも行きます。
そして、洗濯物を全部たたんで持って帰ってきます。
ゴミの収集日には、そのときだけの種類のゴミ、たとえば壜などを出さねばなりません。
家の者が食事をつくる余裕がないときは、自分の食事をつくります。
それに、場合によっては自治会の会議に出なくてはなりません。仕事をしていても、仕事が終わってから会議に出るのです。
最低2時間はかかる会議です。
都会に住んでいれば、近所づきあいすらないでしょう。
これらのことの上に、原稿を書き、本を読んで書評記事も書くわけです。
田舎に居候でもいいから厄介になると鍛えられます。
コメント
>ビター・スイートさん
ナイスを有り難うございます。(^。^)