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『ねずみ』(ショート・ショート)

 トイレの戸を開けた。

 ねずみが居たので、威嚇して閉じ込めた。

 用を足してねずみが逃げ出さないように、急いでふたたび戸を閉めた。

 それが、昨日の十一時のことである。

 朝起きて、トイレの戸を開けると、便器にねずみがいてこっちを見ていた。

 退治するのはこのときとばかり水洗をながした。

 が、排水溝につまって水があふれだした。

 仕方なくすっぽんでねずみをとったら、すでに溺死していた。

 お騒がせのねずみを退治したわけだが、ゴミ袋に入れて棄てるには回収の日まで遠い。

ねずみが腐ってきたら衛生上よくない。

 そう考えて、玄関先でねずみを燃やした。

 そこへ、Bさんがやってきた。

「山雨、何しょんどい? 朝から」

「いや、ねずみ燃やしよるねん」

「ほーん、どうでもエエけど。何か、オモロイ話ないこ」

「別に、これといってないよ」

「それ、食えんのこ?」

 Bさんは、面白くなかったらしく早々にかえっていった。

 こんなもん食べたら、病気になるよ。

 おれは、悟った。

 ねずみを燃やしても、全部灰にすることは無理だと。

 それで、途中まで燃えたやつを土中に埋めることにした。

 だけど、近頃は、どこも舗装されているので穴を掘る場所がなかった。

 仕方がないので、家の庭に埋めた。

 長年我が家の食材を食べて丸々と肥ったねずみ。

 太く短い生涯だった。

 最期はあっけなかったな。

 南無阿弥陀仏。

 私はこのブログで万年筆の魅力を綴ってきましたが、実は長年、その万年筆を相棒に物語を紡いできた小説家でもあります。

 インクが紙に染み込むように、人の心の奥底にある「光と影」をすくい上げたい——。そんな想いで書き上げたのが、私の代表作『閉鎖病棟』です。

 閉ざされた場所で交錯する、剥き出しの人間模様。 作家として「本当に面白い、価値のあるものを届けたい」という一心で、一文字ずつ丁寧に命を吹き込みました。

 万年筆を愛するあなたなら、きっとこの物語の「手触り」を感じていただけるはずです。

 画面を閉じる前に、ぜひ一度、私の本の世界を覗いてみてください。

自作原稿抜粋
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