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『溶けていく暴力団』読了(追記あり)

 溝口敦(みぞぐち・あつし)さんの、『溶けていく暴力団』を読みました。


溶けていく暴力団 (講談社+α新書)

溶けていく暴力団 (講談社+α新書)

  • 作者: 溝口敦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/12/06
  • メディア: Kindle版

 例によって、感想は、追記をお待ちください。

   追記・感想

 暴力団と警察が、完全な敵対関係になって、警察は威信をかけて暴力団を排除しようと

した。その動きが徹底していたので、今は暴力団は、その存続自体が風前の灯火になって

いる。

 一方で、「半グレ」と呼ばれる玄人ではないが悪事をはたらく組織が台頭してきている。

 暴力団は、ヤクザであることを公に誇張して見せることによって、その存在と力を行使

できたのだが、半グレは、普通の一般人に溶け込む。服装も、一般人と変わらない。そし

て今や、暴力団構成員でも、なるべくヤクザと思われない服装を心がけるように変わって

きた。

 暴力団排除条例というのも、暴力団側から警察への挑発が何度かあり、警察も後へ引け

なくなった。その結果、徹底した条例の行使になり、暴力団は活動しにくくなった。

 しかし、これは、警察の捜査四課にとって、面白くない事態を起こしている。捜査四課

にしてみれば、抗争があるたびに構成員を検挙していたから成績を評価されていたのだが、

その抗争も今や激減している。警察のなかで、捜査四課の威信が減ってきている。

 暴力団は、数が多いことで、周囲に威圧をかけ、それがシノギにも繋がっていたのだが、

今や数が多いことは、構成員が不始末を犯したときにトップが責任をとらなくてはならな

いという面から考えると、あまり多すぎるのはよくない。

 本編では、九州の工藤會が例に取り上げられ、丁度よい数だとされていた。

 また、月に一度の組長を集めた会議でも、十分な内容が話し合われている。山口組の場

合、トップ・トゥ・ダウンのみで、いいアイデアがあっても本部に具申するというシステ

ムがない。

 工藤会は、警察の行き過ぎた圧力に対しては、訴訟をすると言ったり、YouTubeに動画

を投稿して民意を問う、などの動きをする。海外のメディアに取材された工藤会の実態も、

その動画を日本語に訳してふたたびYouTubeにアップロードするなどして民意に訴えか

けている。

 工藤会構成員は、血気盛んで、一般人に対しても暴力があるのかもしれないと思えるの

だが、トップは、末端の構成員に対して監視・教導を徹底はしない。警察に対しては、挑

発的である。工藤会の仕業かもしれないという事件が起こっても、証拠がない限り、反発

して警察を批判する。

 テキ屋などの営業まで、警察は、暴力団のシノギだとして排除する動きになってきてい

る。テキ屋は、暴力団とは、直接は結びついてはいないのに、一斉に取り締まり、祭りな

どからも排除する。その結果、祭りが面白くないものに変わってきている。

 暴力団対策法によって、暴力団は、儲からない仕事になっている。

 今や、残っているシノギのセクションは、麻薬密輸やアダルトサイト運営ぐらいだろう。

 「半グレ集団」は元気である。

 振り込め詐欺をやっているのも、半グレ集団で、世間と溶け込むことによって、悪事を

していることを隠して上手くやっている。

 中卒や高校中退でぐれた者たちが、暴力団にはいるという図式があるが、半グレにはい

るのは、大卒で、就職してから挫折したような人も含まれていて、以前には、暴走族から

暴力団へ、という図式があったが、半グレ集団にはいるのは、一般の人のようである。

 一般の人で、倫理観が下がってきている人が半グレにはいる。

 格差社会が顕著になってきたのだから、金持ちの老人から金を奪っても、騙されるほう

が悪いのだ、という理屈をつけて、自身で納得して悪事をはたらいている。

 暴力団と警察の対立が激化したので、結局、暴力団対策法の行使が行き過ぎた形になっ

てきた。もう、この傾向は後戻りできない。

 暴力団は弱体化し、溶けていく。

 今後は、警察も、半グレ集団を敵としていくだろう。

 感想。

 アメリカでも、半グレの犯罪や、一般人の犯罪が主流になってきている。

 アウトローな生き方として、映画の題材にもなって一般人に夢を与えた暴力団だが、そ

ういう形は、今後なくなっていく。著者も語られていたが、それは寂しい。

 今後は、見えない犯罪者が増えていくのだろう。

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コメント

  1. 山雨 乃兎 より:

    >teftefさん
    >enigumaさん
    >makimakiさん
    ナイスを有り難うございます。(^。^)

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