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『厭な小説』読了(追記あり)

京極夏彦さんの、『厭な小説』を読みました。


文庫版 厭な小説 (角川文庫)

文庫版 厭な小説 (角川文庫)

  • 作者: 京極 夏彦
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2020/05/22
  • メディア: Kindle版

例によって、感想は追記をお待ちください。

追記・感想

『厭な小説』。タイトルが既に、厭な感じな訳です。

今回、私、初めて京極さんの小説を読んだのです。

これまでには、何度か他の作品をかじり読みはしていたのですが、何せ、漢字が難

しい字を多用されるので、敬遠していました。じっくり腰を落ち着けて読む気分にな

ってから読もうと思っていました。

今回のこの本に関しては、そんなに難解な漢字はあまり出てきません。

また、難しい漢字や当て字にもルビがふってありました。

『厭な子供』『厭な老人』『厭な扉』『厭な先祖』『厭な彼女』『厭な家』『厭な小説』

とラインナップがあります。

それぞれの作品ともに、それぞれの主人公が精神的に毀れていく、というお話で

す。

そのお話しのなかには、必ず幻想的怪奇現象が交ざっています。

ここからは、少しネタバレになりますが、

『厭な子供』では、やはり子供を流産させてしまった悔いが、主人公男性(夫)の方

にあるのでしょう。

『厭な老人』では、老醜に対する嫌悪がテーマにされているように思います。

自分は、ヒューマニストだと思いたいけれど、現実には老人や男性の生々しさに対

して嫌悪している、という現実を知らされる。構成としては、主人公だけが、夫に懐

柔されて厭な、老人の世話を、しかも見知らぬ老人の世話をさせられていた。という

ありえないフィクションになっていますが。

『厭な彼女』は、読んでいて、うんざりしました。

彼氏のことが好きなのに、その彼氏の嫌うことが分かると、そのことばかりを繰り

返して実行する彼女。これは、ターミネーターじゃないのか。それか、完全に悪意を

持った存在です。

法律上は、それに対して暴力をふるった自分の方が悪くなってしまいます。

つまり、逃げようがない、厭な現実です。

『厭な家』は、怪奇現象の要素が強かったです。

エンターテインメントの場合、別に、寓話的なテーマというのは意識して書かれて

いないのでしょうが、それでも、死んだ嫁が何かを訴えかけているようにも思えます。

ネタバレになりますが、チェストを除けても、ずっとチェストがあった場所で同じ

足の小指を打って骨折が酷くなってゆく。

最後は、その厭な事が繰り返し再現される家で、主人公はとんでもない事に…。

さて、最後の『厭な小説』は、本編中に掲載されたそれぞれの短篇を纏めて謎解き

するもの。

タイトルの『厭な小説』が、「オオ!」「これだったのか」と、実際に作品中に出

てきます。

帯に、京極さんご自身が、「知りませんからね。読んで後悔しても。」と書かれて

いますが、ここまで徹底した厭な現象には現実では遭遇しないでしょうが、どの短篇

も、分かる分かる、そういう事オレにもあるわなぁ、と思えましたし、主観的な感情

のまま本編に翻弄されることはなかったので、結論を言えば読んで愉しいエンターテ

インメントです。

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