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福井安紀(ふくい・さだのり)著『職業は専業画家』読了(追記あり)

 福井安紀(ふくい・さだのり)さんの、『職業は専業画家』を読みました。
 例によって、感想は追記をお待ちください。

   追記・要約・感想

 それでは、付箋とマーキングを追いながら、本編の紹介と感想を、あまり具体的にならずに語りたいと思う。

 著者が、個人で活動し、個展を重ねながら30歳から50歳の20年間、専業の絵描きとして活動を継続してきたノウハウの記録。それが本編です。

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  1.  著者が、この本を書く理由
  2.  専業で生計を立てるには、出会いが大事
  3.  少年の頃は、描き続けるために、ヒモになることを本気で考えていた (天の章)Ⅰの2から
    1.  専業で活動できる作家を増やすための「話します会」 (天の章)Ⅰの5
    2.  自信をもって専業の世界へ踏み切ること (天の章)Ⅱ
  4.  絵を描き続けるためにーー必要な基盤と考え方 (地の章)
    1.  描くための環境づくり
    2.  結婚や子育てについて
    3.  その生活で創れる作品を創ること
  5.  引用を多用したくないので、以下は、注目した項目だけを記載します
    1.  Ⅱ 見ず知らずの方でも作品を求めるということ (地の章)
      1.  1 他人が作品を求めることは、特別なことではない
    2.  Ⅴ 収入を増やすための活動の拡大
      1.  3 グループ展はおすすめしない
      2.  5 貸し画廊と企画画廊を組み合わせて活動する
      3.  7 おのずから拡大する時もくる
      4.  8 見つけてもらう大切さ
    3.  Ⅰ 「自分のお客さん」をつくる (人の章)
      1.  2 出会える画廊を選ぶ
    4.  Ⅱ 接客に関すること
      1.  1 個展には必ず在廊する
      2.  3 住所を書いてもらう
    5.  Ⅲ お客さん獲得のための考え方と工夫
      1.  1 自分を「さらけ出す」こと
    6.  Ⅳ 目標は「自分の特別なお客さん」30人
      1.  1 たった30人
      2.  2 メジャーと地下(インディーズ)
    7.  心について (コラム)
      1.  スランプの時
  6.  まとめ・感想

 著者が、この本を書く理由

・多くの画力のある絵描きさんたちが、他の仕事をすることなく、描く活動に専念できるようになってほしい、という願いから。【一部本文引用】

・著者が自分のノウハウを気軽に話すことによって、作家間の情報交換が行われやすい、オープンな空気感がもっと一般的になることを願うから。【一部本文引用】(詳述は、本編に譲る)

 上記は、「はじめに」という前書きに書かれていたことなのだが、たしかに、私も同じことは思います。
 アルバイトでもしながら、または、正社員として働いて、余った時間に創作に励んだらいいとは、よくある見解ですが、一日の時間を、丸ごと創作活動に使うことが出来れば、作れる作品数も増えますし、作品の質も上がります。
 小説家などの場合、創作そのものにかける時間は短かったとしても、他の生業で疲弊してから創作するのと、万全な精神的・肉体的状態で創作するのとでは違います。
 そして、以下、本編内容で話すことですが、個展開催やそのための搬入、画廊とのやりとり、お客さんとのやりとり、など、創作以外にもやることは沢山あるようです。
 だったら、自分の作品がコンスタントに売れて、その収益で生活できて丸ごと創作に励めるほうが理想ですね。

 専業で生計を立てるには、出会いが大事

 この著書脱稿の時点で、著者・福井さんは、30年間で133回の個展を重ねていらっしゃいます。

・通りすがりに展示を見てくれた人
・画廊のお客さん
・画廊オーナー

 こういった方々との出会い。
 これが、専業で生活できている理由。

 やっぱり、絵描きが食べていくためには、個展をすることなんですよね。

 少年の頃は、描き続けるために、ヒモになることを本気で考えていた (天の章)Ⅰの2から

 中学生のころの著者は、「絵を描き続けることのできる生活」をしたいと考えていた。
 作品を販売することの可能性をまったく考えていなかったこともあり、「お金持ちの人の『ヒモ』になろう」というアイデアにたどりついた。【本文引用】

 江戸時代の絵師も、もちろん専業で活動していた。 (天の章)Ⅰの3

 専業で活動できる作家を増やすための「話します会」 (天の章)Ⅰの5

 兼業作家さんたちは、簡単に生活できるだけの糧を生んでくれない創作と発表を繰りかえし、歳月を重ねた結果、どこか諦めムードが広がっている。
 その諦めムードをくつがえし、専業で活動できる人を増やすために、著者の活動で経験し蓄積したノウハウなどを素直に話し伝え、情報を共有するために「話します会」を始められた。【一部本文引用】

 自信をもって専業の世界へ踏み切ること (天の章)Ⅱ

 感想として思うのは、もちろん技量が初心者の段階での話ではないだろう。
 充分に研鑽を積んで、しかも、個展開催の経験を経て、買い手が出てきた辺りからの話だと思うのですが、専業に踏み切ることを躊躇していると、次の個展を楽しみにされているお客さんの期待に応えられない状況が出てくる、ということのようです。

 人が本当に何かを望んだ時、本気でがんばって行動すれば、誰かが手助けしてくれたり、偶然が作用して何とかなるものだと思っています。【本文抜粋】


 思い切って決心することの大切さを書かれていました。
 是非、本編をお読みください。

 絵を描き続けるためにーー必要な基盤と考え方 (地の章)

 描くための環境づくり

 学生の間は、描くためのスペースが学校の中に確保されている。
 卒業したあとは、自分で確保しなくてはならない。
 ご自身の例を紹介されている。
 ・サラリーマン時代の寮
 ・結婚後の借家
 ・その後、購入した住宅

 読んでいて思いましたが、ご自身が、どんな大きさの絵を描かれるかにもよりますね。
 それから、とくに大きな絵の場合は、搬出できることを最初に確認するべきだそうです。

 結婚や子育てについて

 詳細は、本編に譲ります。
 結婚して子育てが始まってからの生活というのは、「てんやわんや」だと表現されています。
 そういう生活のなかから生まれた作品は、純度の高い作品と言えます、と語っておられます。
 そのような作品を愛されるお客さんもおられる、ということですね。

 感想として、まさに仰有るとおりだと思います。
 小説でも、現実の生活の「てんやわんや」を書いた作品は、読者の心を打ちますから。

 その生活で創れる作品を創ること

 この項には首肯しました。
 創作者に限らず、人には誰でも経済的事情や環境の不自由はあるものです。
 仕事が忙しく、創作の時間を一日に一時間しかとれない、という悩みには、「その1時間だけで描ける絵を開発してください」と答えられます。
 アパートが狭く、大きな絵が描けない、という悩みには、「その部屋だけで描ける絵、できればより小さな絵にトライしてみてはどうだろうか」と提案されます。

 引用を多用したくないので、以下は、注目した項目だけを記載します

 Ⅱ 見ず知らずの方でも作品を求めるということ (地の章)

 1 他人が作品を求めることは、特別なことではない

 Ⅴ 収入を増やすための活動の拡大

 3 グループ展はおすすめしない

 5 貸し画廊と企画画廊を組み合わせて活動する

 7 おのずから拡大する時もくる

 個展のレベルが一定以上になると、活動が勝手に大きく回転するようになります。【本文抜粋】

 8 見つけてもらう大切さ

「自分で売り込んで得た出会い」と「見つけてもらった出会い」ではお客さんの熱量に大きな差があります。【本文抜粋】

 Ⅰ 「自分のお客さん」をつくる (人の章)

 2 出会える画廊を選ぶ

 Ⅱ 接客に関すること

 1 個展には必ず在廊する

 絵を求めてもらうことは、ほぼ考えず接客をしている。
 絵を求める人の確率があまりにも低いのが、現実としてあるから、というのが一つの理由。もう一つの理由は、絵を求めることを促すような、変な空気感を著者が好きにならないから。その変な空気感のなかでは、絵を楽しんで鑑賞してもらいにくい、と著者は考える。

 3 住所を書いてもらう

「気に入ってくれた度」をチェックする。

 Ⅲ お客さん獲得のための考え方と工夫

 1 自分を「さらけ出す」こと

 スーパーに売っている肉を自分に例えて、容器のなかに肉があり、ラップが一枚だけピンと貼られている状態がベスト。
 これが、お客さんとの理想的な距離の取り方(自分の「さらけ出し方」)だそうです。

 Ⅳ 目標は「自分の特別なお客さん」30人

 1 たった30人

 2 メジャーと地下(インディーズ)

 心について (コラム)

 スランプの時

 自分がいかに不完全かということを前提にして考えれば、より積極的にスランプに向き合えると思います。
 描く気力がなくなったときは描かない。「断描き」をする。眠れない時は寝ない。自分との我慢比べのようなもの。【一部本文引用】

 まとめ・感想

 本編を、要約的に紹介してきました。
 感想としては、最初に書いたとおり、作家(画家や小説家や漫画家を含めた創作者)は、プロになりたいと思っている人は居ます。
 技量充分なのに、創作物の収益だけでは生活ができない人も多いのですが、それは、その人の技量が不十分という場合だけではない、と本編でも語っておられます。
 自分の作品を、2作以上買ってくれたお客さんを、「自分の特別なお客さん」と、ご自身で定義されています。
 その「自分の特別なお客さん」が、30人になってくれば、絵描きとして生計が立てられますよ、と語っておられます。
 自分のすべてのお客さんを氷山に例えると「自分の特別なお客さん」は、氷山の海面から見えている部分ですから、「自分の特別なお客さん」が30人居る状態になれば、氷山の下に、その他のお客さん(数の多い)がいらっしゃるわけです。1作は買ってくれた人、じっくり観て、芳名帳に住所を記す人、作品をじっくり観る人、ギャラリーに入って作品を見る人、外からガラス越しに作品を見る人、ショーウインドウの作品をチラッと見る人、という多くのお客さんが居る状態になっているのだそうです。
 本編に語られていますが、絵の世界でも、音楽の世界でも、メジャーとインディーズ(地下)の世界があります。
 福井さんは、インディーズで活動されています。
 メジャーだと、まず賞を取ってスポンサーがついて事務所がマネジメントしてやっていきますが、露出は自動的に大きくなりますね。
 インディーズでは、お客さんを自分で獲得しなくてはならない、ということがあります。
 自分の技量を高めると同時に、多くの人に存在を知ってもらって自分のお客さんを獲得する必要があります。
 そのノウハウが、詳細に書かれていました。
 福井さんの画法・絵の具にも斬新さを感じました。
 小説の場合も、大手出版社から出さないとメジャーではありませんので、たとえばKDPでの出版後の戦略にも共通するところがあるなぁ、と興味深く拝読しました。
 一番思うのは、「よくやってはるなぁ」と思ったことです。
 社会経験を得ようとサラリーマンを経験されますが、30歳で専業になると決めて、会社員時代からその下準備を始められて、30歳で実際に専業になられている。そこから50歳までの創作と収益の安定・成長をつづけられたこと。なかなか出来ることではありません。
 もう一つ思ったのは、「どうやったら専業でやっていけるのか」という疑問に、一人で苦しんでいる人たちに、実際に専業でやってきた人(とくにインディーズで)から、そのノウハウが伝えられるのはいいことだと思いました。
 もちろん、ノウハウが伝わったところで万人が成功するわけではないのは周知の事実です。でも、せっかく技量のある人が、専業としてのやっていきかたを知らないばかりに花が咲かないのは良くないですよね。
 最後に、この本の内容で、著者が一番伝えたかったことを、私なりに推測してお伝えします。
 新しいお客さんや、開催している画廊以外の画廊オーナーに出会うことが大事。そのためには、二階部分や百貨店の画廊ではなく、外の道路(路面)に接している画廊でも個展を開こう。そして、グループ展では、自作の売上には繋がらない。ということです。
 本編では、ノウハウは、より具体的に沢山書かれていますので、是非本編をお読みください。
 帯にも書いてあるように、この本は、「すべてのフリーランス&クリエイターにオススメ!」の本です。

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