勝間和代さんの、『断る力』を読みました。
感想は、例によって追記をお待ちください。
追記・感想
コモディティ(汎用的人材)でなくスペシャリティー(他の人には置き換えられないスキルを持った存在)になる為に、仕事は言われるままに引き受けるのではなく、自分のスキルを磨く時間を持つ為に或る程度断りましょう。という論旨。まったく共感した。
しかし、著者は日本の企業の有りようについて、極度に誤解している部分もあるように思う。
私が三菱自動車の新人研修に行ったとき、今から27年ほど前(1983年当時。この書評を書いているのが、管理人47歳の時点)だが、その当時でも研修でシチュエーションを仮定して出された問題に、こんなものがあった。
A君は、その日の定時終了時間までに仕上げなければならない書類を作っていました。昼頃に
なって直属の上司から別の課題を与えられました。それも、定時までの仕事でした。自分の抱え
ていた仕事と直属の上司から頼まれた仕事をこなすには時間的に窮屈でしたが、頑張れば何とか
なりそうなので引き受けました。仕事に取り組んでいたところ、三時頃になって直属の上司の上
の課長からもう一つ仕事を言いつけられました。それも定時までという仕事でした。正直、どう
見ても、三つの仕事を時間までに仕上げることは無理に思われましたが、仕事を断ると上司に嫌
われる、と思って承知してしまいました。夕方定時終了時間になって二人の上司がA君のところ
に仕事を受けとりに行くと、二つの仕事ともまだ出来ていませんでした。課長の出した仕事の方
は取引先にこちらのプランを説明する為の書類でしたから、しかも商談は定時終了後の6時から
でしたから、とても今からでは間に合いません。A君は、直属の上司にも課長にも叱られました。
さて、A君は、本当は、どうしていれば良かったのでしょうか。
上記のような問題です。研修生と指導員でディスカッションして答えを発表し合いました。
つまり、日本の企業であっても、頼まれた仕事を全部受けることが全ての場面で正しいとは教
えていないのです。27年も前の当時から。
A君のとるべきだった行動は、少なくとも三つ目の仕事を申しつけられた時点で、「自分は、
他にも期限の迫った仕事を抱えているので、課長の仰有る仕事はとても間に合いそうにありませ
ん。もし、私にお命じになるのなら、誰かサポートを付けて頂けないでしょうか」という返答を
する、というのが答えです。
勝間さんの仰有ってる断るということは、上記のような例だけではなく、むしろ、自分の研鑽
を積む時間をとる為に、積極的に時間の余裕がある状態にまで仕事の量を制限しておく、という
事かも知れません。これも、とても大事なことです。
前に読んだ本の内容とも共通することですが、幼い頃、親から虐待を受けていたとか親から充
分な愛情を受けずに育ったとかだと、病的に「人からどう思われているかばかり気にする。人か
ら嫌われることが極端に怖い」という精神状態になることが多いそうです。そういう人は、とも
かく、社会へ出てからは枠の有りようが一気に変わるので、この「断る力」を是非身につけまし
ょう、ということでした。
自分がメランコ型かシゾフレ型かを知るテストもあるそうです。【和田秀樹さんの「シゾフレ
・メランコテスト】いかに他人に同調しやすいかを計るテストだそうです。
自分がどういう人間かを把握しておく。その為に、周りに忌憚のない自分への印象を訊いてみ
る、とか、専門的なテストを受ける、とか、はたまた、自分の名前で検索して掲示板の書き込み
などを読んでおく、とかがあるそうです。
まあ、しかし、自分のマイナスの印象も俯瞰して把握しておくと言いますが、2ちゃんねるな
どの書き込みを見に行く勇気は、僕にはありませんが。
この本の帯にも書かれていたことですが、34歳のときに離婚を経験されてから、断る力を身
につけることが出来た、と確信されたとあります。この件、本編全体を読んでいると、どうも、
勝間さん、ご主人からDVを受けたからというのが離婚の原因のように読めてしまいます。まあ、
このことは、本編の論旨とは関係ありませんが。
それにしても、ブックカバーの表紙にこんなに器量のよい女の人の写真が載っていたら本編の
内容まで余計好意的に受けとってしまうなぁ、などと思っていたら、本編にも「男女のバイアス」
という項目で、女性の場合は若い内は器量のよい方が実際の実力より高く評価されるので、器量
がプラスされて評価が高いことに気付いているならば、30を過ぎてからでも、スキルそのもの
の評価でライバルに負けないようにスキルアップを潜行して行っておくべきだ」とありました。
30代前半までに、自分の軸を持つことが理想。30代後半~40代後半、仕事の完成期。5
0代~仕事をまとめ、後進を指導する。ということが書かれてあり、まったく仰有るとおりだと
思いました。残念ながら、自分に当てはめて考えると、始めの時期にドラマーを目指して鍛錬し
ていたのに挫折し、大事な期間を棒にふって出遅れたことになります。この説明から行くと完全
に人生設計からは逸脱してしまっている僕です。
妬みを持つ、というのはクセだから、ある人には有るのだと割りきる、という事も勉強になり
ました。
アシスタントの人とのエピソードが関係者が読めば誰のことだか推測できてしまうから本人が
傷つくから書くべきでない、という意見もアマゾンの書評にはありましたが、あれぐらいの事は
書いても何の問題もありません。私小説の場合でも、書いていけないのは、本人がトラウマにな
っているような案件を他者である著者が曝露することです。それ以外は、実名を名指ししない限
り問題はありません。
全編、内容は濃かったです。
僕にとっては、この本が救世主になった、というほどではありませんでした。普段から断ると
ころは断る生き方を、僕自身がしている所為かも知れません。
でも、手許に置いておいて、ときに読み返す、人生の辞書的な意味はある本だと思います。
では、また。
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