『サブリミナル・インパクト』読了(追記あり)

 下條信輔(しもじょう しんすけ)さんの、『サブリミナル・インパクト』を読みました。


サブリミナル・インパクト―情動と潜在認知の現代 (ちくま新書)

サブリミナル・インパクト―情動と潜在認知の現代 (ちくま新書)

  • 作者: 下條 信輔
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2008/12/01
  • メディア: 新書

 例によって、書評は追記で挙げますので、しばらくお待ち下さい。

 

   追記・感想

 

 この本、私には難しすぎました。

 よって、本編の紹介より感じたことを多く書きますね。

 サブリミナル・インパクトという題名だけど、サブリミナル効果のことを説いた本ではありま

せんでした。

 人間の選択、好悪の判断は、親近性と新奇性の両方が作用しているということでした。

 つまり、なじみ深いものに愛着を感じて、そういう物を選ぶということと、目新しいものを刺

激に感じて、その刺激欲しさから目新しいものを選ぶ、という、両方の行動を人間はとっている、

と。

 人間は、脳の報酬系の欲求によって行動をしていく。

 報酬系というのは、食欲や性欲や物欲だけに限らず、例えば数学の問題が解けたときのスッキ

リ感のようなものを、再び得ようとして同じ刺激に向かっていくという事でした。

 

 政治や自分の未来への選択行動でも、実は、この報酬系の欲求が知らず知らずの内に働いてい

る、という事でした。

 ところが、同じ刺激だと、より過度の刺激を求めるようになる。それが或る閾値を超えると、

「快」であった筈の刺激がストレスになってしまう。

 こういう人間の特性がCMなどにも意識的に使われている、という事でした。

 

 下條さんのこの本、検証や実験データなども出てくるのですが、そうかと言って、導き出した

答えが、そう言い切れるものではない、と自ら仰有っています。だけど、とりあえず、こうでは

ないのだろうか、と、ご自身の多分人間とは世の中とはこうなのだろう、という仮説に則って、

どんどん話しを進めていかれます。

 こういう書き方が、哲学とよく似ていると思いましたし、考えを推し進めていく事自体が、そ

の道程が、読んでいて愉しいです。

 

 創造や発見/発明というのは、知らされてみると以前から気づいていた、と知らされる側も思

うことが多く、だけど、それを抽出できなかった、と知らされる側は思って、発見した人を偉い

と思うのですが、となると、全く知らない世界(無意識)から取りだしてきた、というのでは話

しの辻褄が合わなくなる訳です。そこで、フロイトも途中から考えだした「前意識」というもの

が人間にはあると気づくらしいのです。無意識でも顕在意識でもない領域ですね。

 

 全てが(政治も含めて)報酬系が喜ぶ為にコマーシャルに引っぱられている、とまで考えると、

理性的な自分で決断して行動することが実はない、という結論にまでなってしまいますが、下條

さんは、この本は、自分の仮説の上に仮説を導いてきた論旨なので、決してそうではない、と仰

有ります。たとえば、善い行動を起こすときにも、報酬系の作用はあるのですから、と。

 

 感想と言ってたのに、やはり紹介になってしまいました。

 特に首肯したのは、コマーシャルはTV、新聞、ラジオ、インターネット、看板、雑誌、店頭

の陳列などが、全部連動しているということでした。物の種類が多いので、売り手側に選択肢の

幅を初めから狭められるという商戦が現在は一般的だそうです。何かを買った人に、それを買っ

た人が好む商品を薦めるといったようなことですね。

 敷衍して考えるとコマーシャリズムで世論を操作することも可能ということも首肯しました。

 

 本編が難しかったので、この辺でご勘弁を。

 では、また。

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