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『孤独の価値』読了(追記あり)

 森博嗣(もり・ひろし)さんの、『孤独の価値』を読みました。


孤独の価値 (幻冬舎新書)

孤独の価値 (幻冬舎新書)

  • 作者: 森 博嗣
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2014/11/27
  • メディア: 新書

 例によって、感想は追記をお待ちください。

   追記・感想

 仕事も勉強も、本来、一人でするものだ、という論旨。

 学校のはじまりは、軍隊のシステムをそのまま導入して、共同生活に慣れさせるという

ことを主眼に、今の授業形態ができた。

 映画作りでも、建築でも、最初の設計図を書くのは一人で、一人だからこそ矛盾のない

設計図を書くことができる。

 人間は、好調と不調を往還している。グラフにしてみると分かるが、不調のときに全力

でもがいていて、その努力が後に報われる、という形になる。

 現代は、仲間をつくって、その仲間に気に入られるようにしないと生きにくい、という

時代ではなくなった。仕事でさえ、人と会わずに済むやり方ができてきた。

 森さんは、家族以外とはほとんど会わず、仕事上のやりとりはネットを介して行うとい

う生活をされている。そういう形で生活ができるように、努力もし工夫もされてきて、だ

んだんシフトされた、ということだ。

 隠居している感覚はときどき仄かにある。二十代と三十代は、猛烈に働いたし、四十代

も嫌々仕事を引き受けた。それらから解放されたのだから、隠居にはちがいない。【本文

引用】

 「孤独というものは、それほど酷い状況ではない」「孤独には、なかなか捨てがたい価

値がある」【本文引用】

 友達がいなくて寂しいというのは、友達と過ごすことの楽しさを知っていて、それが出

来なくなった場合に生じる感情。寂しさというものが、そもそもそういった変化(陥落)

を示したものだとも言えるのかもしれない。【本文引用】

 仲間からはぐれることが、生存の危機を意味している。人間の本能のなかに、そう刷り

込まれているから、一人で生きていくことが容易になった現代でも、一人になると人は孤

独を感じるのではないか、と言われる。

 住宅地だけでなく、郊外でも、また田舎でも、広い面積があったとしても人は密集して

家を建てて住んでいる。(ライフラインの利便性だけが理由ではない)

 孤独が厭だと感じる感覚は、食欲や性欲ほど強いものではない。

 仲間や友達の喪失は、自分を認めてくれる存在の喪失。他人に認められているかいない

かの判断は、結局は自分の主観でする。

 自分を認めてもらう手段としては、相手に合わせる(つまり、良い子でいる)こと以外

としては、「凄い子」であると見られることである。絵が上手いとか、走るのが速いとか。

「凄い子」であれば、居場所を得られる。少なくともどん底の孤独に襲われることは少な

い。

 酒好きというのは、酒好きと周りが評価するからそう言われているわけで、周りにそう

思われるということは、評価する人と飲む、他人と飲む、仲間で飲むからである。

 享楽のあとが寂しい、侘しい、と感ずるもので、だから賑やかさを延長するために二次

会をする。だが、その二次会も、やがてお開きになってしまうのだ。二次会にこだわらず、

宴会の後の寂しさも感じない人は、現実の世界に楽しさを持っている。自分の家、自分の

家族などだ。

 寂しさを埋めるために賑やかさを求める人は、思考停止を望んでいる。じっくりものを

考えるとき、人間は一人だし、音楽を集中して聴くときも、静かさが背景にないと聴けな

い。

 エンターテインメントでは、仲間の大切さを誇大に扱う傾向がある。たとえば「家族愛」

などを描いて「感動」を与えるのは、作り手には楽な手法である。

 愛する人が死ねば悲しい、でも、その寂しさから救ってくれるのはやはり仲間だ、とい

うありきたりの「感動」がいかに多いことか。【本文引用】

 スポーツ選手のインタビューへの答え方も、観客受けを意識したステレオタイプのもの

になっている。そこから外れられない。優勝したのは、ファンのお陰ではなく、実は、独

りでもくもくと練習を積み重ねた成果が出たから、というのが本当の理由だ。

 付箋を追ったが、この辺で割愛する。

 何をするにも、準備や修練は、独りでするものだし、独りだから楽しめることもある。

 究極には、複数人で遊ぶより、独りで創作をするときの、その時間の悦びのほうが好き

だ、と思える人もいるし、また、そういう性格にシフトするのもわるくない、と、本書で

言いたかったのはその辺りのことかな、と思った。

 実は、私も、独りで原稿を書いている瞬間が、女遊びや大勢と飲む楽しさと同格に楽し

いのですよ。

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コメント

  1. 山雨 乃兎 より:

    >ゆきママさん
    ナイスを有り難うございます。(^。^)

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