齋藤晴司(さいとう・はるじ)さんの、『トコトンやさしいレンズの本』を読みました。
例によって、感想は追記をお待ちください。
追記・感想
詳しく書かれているのだが、やはり、この光学の話自体が難しい。
一番肝腎な話は、レンズには収差があること。
レンズの中心から入った光と、レンズの端から入った光の焦点を結ぶ位置がずれること。
或いは、同じレンズの端から入った光でも、その光の成分の波長によって焦点の位置がず
れること。これを、収差(または色収差)と呼ぶ。
フィルムや画像素子に、きちんとした像を結ぶためには、この収差を、焦点までに複数
のレンズを用いることで補正しなくてはならない。完全に収差ゼロにすることは出来ない
が、収差を少なくすることが精度の高いカメラを作ることになる。
凸レンズなのに、球体ではないレンズもある。
凹レンズは、光を広げるので、覗く側とは反対側に計算上の焦点が出来る。
双眼鏡やカメラのファインダーを覗くとき、目の位置では焦点を結んでいない。それは、
人間の目自体がレンズを持っているので、焦点は網膜に出来るということ。一方、カメラ
の画像素子上、または、投影機でスクリーンに像を映すときには、そこに焦点が合ってい
る。スクリーンに映ったものまたは、完成した写真を人間の目が見ているわけだが、たと
えば、映画のスクリーンの位置に立って映写機の光線を見ても像は見えない。こういう原
理である。
よく誤解されているのは、光はレンズのなかで屈折するという思いこみだが、実は光は、
レンズに入った地点とレンズを出る地点で屈折する。
齋藤さんは、1972年に日本光学工業株式会社(現 株式会社ニコン)に入社されて、
顕微鏡、測定機関連の開発などをされてきた。
この本は、光学を勉強するとっかかりになると思う。
レンズの製造工程の紹介もあった。現代では、収差や歪曲収差などの計算にコンピュー
タが使われていて、設計段階から狙う精度のレンズの設計図が作りやすくなっている。
光透過率や密度の調整のため、昔は鉛や放射性物質なども材料に混ぜられていたが、現
在では、極力人体に有害な物質は使わずに製造されるようになってきているという。そこ
にも、技術の進歩があったからこそ出来たことである。
材料を溶かしたり、その後、切断したり、研磨したり、やはりレンズを作るのは苦労が
要るな、と感じた。
『トコトンやさしいレンズの本』というタイトルになっているが、内容は、素人には難
しい。
是非、ご一読ください。