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大堀克己著『心不全と診断されたら最初に読む本』読了(追記あり)

 大堀克己(おおほり・かつみ)さんの、『心不全と診断されたら最初に読む本』を読みました。
心不全と診断されたら最初に読む本

心不全と診断されたら最初に読む本

  • 作者: 大堀 克己
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2022/03/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

  例によって、感想は追記をお待ちください。

   追記・要約と感想

 大堀克己さんは、北海道循環器病院理事長で、心臓血管系と呼吸器の疾患に対する外科療法に携わり、現在は心臓リハビリテーションにも取り組んでおられる。

 心不全の患者が増えているのは、社会の高齢化が原因。長期間生きつづけることで、心臓がギブアップした状態が心不全。

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 心不全は「心臓病」の終末。予兆に気づくことが最重要。

 予兆例

・階段や坂道をのぼると息が切れる。

・眠っているときに、呼吸が苦しくなったり咳が出たりする。

・むくみが酷い。または、体重が一気に増加する。

 心不全とは

 なんらかの心臓機能障害、器質的あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果、呼吸困難、倦怠感や浮腫が出現。それに伴い運動耐容機能が低下する臨床症候群。【本文引用】

 心不全になる原因

・心筋梗塞や心臓弁膜症、心筋炎など。

・高血圧。

 心臓が硬くなって伸縮する力が弱くなってしまうと、全身に十分な血液や酸素を送れなくなってしまいます。この状態のことを、「心不全」と呼んでいます。【本文引用】

 血圧とは、動脈の内側の壁に掛かる圧力。

 高血圧の状態がつづけば、血管はつねに血流による激しい圧力にさらされる。

 ゴムホースでも、毎日高い圧力で水を流しつづければ次第にゴムが劣化し、やがてボロボロになる。同じく高い圧力で血液が流れつづければ、血管の壁は傷つき劣化。初めは血管の壁を分厚くすることで圧力を凌ごうとする。やがてそれだけではカバーしきれなくなって、血管は硬くなり弾力性を失う。柔軟性のないガチガチの血管では血液はスムーズに流れなくなるから心臓に負担が掛かる。【本文引用】

 その結果、心臓の筋肉が肥大して拡張機能が低下。筋肉に酸素が十分に行きわたらず、徐々に収縮が弱くなり、心不全の状態が起こる。また、脳でも脳出血や脳梗塞が発生しやすくなる。

 血圧が高いときに出るサイン、頭痛やめまい、肩こりは、高血圧に限らず普段でもよく起こる。そのため、兆候を見逃すこともある。高血圧には、「サイレントキラー」という別名が付いている。

 虚血性心疾患とは、心臓の筋肉に酸素や栄養を送る血管(冠動脈)が狭くなったり詰まったりして心臓に血液が十分に行かなくなる病気。代表的なものが「動脈硬化」。

 初歩的な知識としては、「心臓に血液が十分に~」とは、心臓が全身に送り出したり戻したりしている血液のことではなく、心臓を動かすために必要な心臓の筋肉に酸素や栄養を送る血液・血の流れのことである。

 その他の原因としては、糖尿病。

 心臓の病気以外で心不全のリスクとなっているものには、一つの共通点がある。それは、「動脈硬化」を起こしやすいということ。

 脂質異常賞とは、中性脂肪やLDLコレステロールなどの脂質代謝に異常が起きている状態のこと。特に悪玉コレステロールの値が高いと血液がドロドロの状態となって、動脈硬化がすすむ。その結果、脳梗塞、心筋梗塞、心不全などを招きやすくなる。【本文引用】

 もう一つの原因、甲状腺機能亢進症・低下症。

 甲状腺ホルモンが分泌されすぎてしまう病気、甲状腺機能亢進症。分泌が足りない状態、甲状腺機能低下症。

 亢進しすぎる→心臓が過大に働いたり、心房細動などの不整脈が合併。脈拍が速くなったりする。

 低下→脈拍低下。心臓の収縮力が落ちる。動脈硬化の原因にも。狭心症や心筋梗塞のリスク。

 その他の心不全のリスク。生活習慣。

 薬物の多用、アルコールの取りすぎ、運動のやりすぎ、ストレスなど。

 いささか、耳が痛い。(笑)

 睡眠時無呼吸症。

 歯周病。

 歯周病をそのままにしておくと、患部から血液中に細菌が入る。細菌がインスリンの働きを弱くする。血糖のコントロールがうまくいかなくなり、糖尿病が悪化。

 収縮機能が保たれた心不全、「ヘフペフ」。(詳しくは、本編に譲る)

 心不全にもステージがある。

 一般的には予防と治療は意味が異なるが、心不全の場合はステージやクラスで進行していくため、予防と治療は同様の意味で語られることが多い。

 例 2次予防

 血液検査や尿検査を行うことで、高血圧、脂質異常症、糖尿病の有無がわかる。これらの疾患を発症している場合、血管が動脈硬化を起こしやすくなっているため心不全が引き起こされる可能性が高まる。

 身長、体重、腹囲などを計測、肥満度(BMI)がわかる。肥満は、生活習慣病につながりやすい。肥満の人が生活習慣病を起こすと血管に負荷がかかり心疾患のリスクが増加。

 一般的な健康診断で心不全そのものを見つけることは困難だが、リスク要因を見つけ間接的に防ぐことはできる。自分の健康状態を数値化し、目で見て確認することは、生活習慣の振り返りにも役立つ。

 心不全のステージが進んだ段階では、再発と憎悪を繰りかえし、やがて絶命となる。

 そこで、3次予防としては、「心不全の再発と憎悪を防ぐ」ことである。

・生活習慣を変える。発症まえと同じ生活習慣でいると、再発の可能性が高まる。

・心臓リハビリテーション。

 命を救うカテーテル治療と心臓移植(詳細は、本編に譲る)

 TAVI(経カテーテル大動脈弁植え込み術)

 鼠径部の動脈や鎖骨下動脈などから動脈へ、あるいは左肋間から直接心臓内にカテーテルを挿入し、狭窄した大動脈弁の内側に人工の弁を留置し、大動脈への血液の流れをスムーズにします。従来の外科手術では心肺を一時的に停止させて心臓を露出し、狭窄している大動脈弁を人工弁に交換しなければなりませんでした。TAVIでは開胸せずカテーテルを挿入するだけで済みます。体への負担が少ない。【一部本文引用】

 運動の重要性

 リハビリの一環として、運動も必要。

 軽い有酸素運動が望ましいらしい。安静にしているだけでは、心筋の力が弱ってしまう。

 ただ、自分が今、心不全のステージとしてどの状態であるのかをわきまえ、状態にふさわしい運動量にすべきだ。

 心臓リハビリ

・運動療法

・生活習慣の改善

・薬の内服

・カウンセリング

 心筋梗塞になっても心臓リハビリを行えば、約6年間での死亡数は50%以上減少し、心筋梗塞にならなかった場合と同じ寿命が得られる、という最近の研究結果もある。【本文引用】

 著者・大堀さんの病院は、心臓リハビリを重点的に実施している。そのきっかけになったのが、心臓リハビリの先進国ドイツを視察したこと。

 当時の大堀さんの悩み。心筋梗塞を発症した患者や、心臓手術をした患者が、いったんは良くなるものの以前の生活に戻ると再び血糖値が悪化したり、体重が増加したりして、病気を発症するまえの状態に逆戻りしてしまう、ということ。

 ドイツの心臓リハビリは、山岳地帯の自然を上手に取り入れたもの。

 大堀さんの病院では、ドイツの心臓リハビリを参考に、独自の心臓リハビリを完成させ、「札幌モデル」として広く展開している。(詳細は、本編に譲る)

 時期に応じて心臓リハビリの目的と内容は変わる

 症状が起きる「急性期」、治療を行う「回復期」、再発や憎悪を予防する「維持期」の3つに分けられる。

 これに伴い、心臓リハビリも、大きく3つのステージに分類される。「急性期リハビリ」「回復期リハビリ」「維持期リハビリ」。

①急性期の心臓リハビリは、「日常生活への復帰」が目標

 急性の心不全を起こしたときは、合併症を起こさないようにできるだけ安静に過ごし回復を待つことが良いとされていた。しかし、長期間体を動かさないでいると、心臓の機能や筋力が低下し肺炎などが起こりやすくなり、かえって回復までに時間を必要とすることが近年の研究により明らかに。

 安静状態が必要以上に長くつづくことによって起こる心身の機能低下を「廃用症候群」と言う。【本文引用】

②回復期の心臓リハビリで、「社会生活への復帰」を目指す

③維持期の心臓リハビリで、「心不全の再発」を予防する

 近隣で、外来での心臓リハビリを行っている医療機関が見つからない場合、民間のスポーツ施設やフィットネスクラブを利用する。「心臓リハビリテーション指導士」が居ない場合、フィットネスクラブでコーチによる指導を依頼、医師から処方された運動処方箋に沿って運動を行うことを推奨されている。

 心不全治療の4つの柱

「薬物治療」「食事療法」「睡眠療法」「運動療法」

①食事

 塩分の多い食事をつづけると、血液中の塩分濃度が高くなる。そうなると血液の浸透圧を一定に保つために血液中の水分が増え、結果的に体内を循環する血液量が増加。細いホースのなかを通常より多い水が一気に流れるような状態になる。その結果、末梢血管の壁にかかる抵抗が高くなって、血圧が上がり心臓に負担がかかってしまう。【本文引用】

 塩分を多く含むハムなどの加工食品を控える。

 ただし、注意点としては、「食事の量が少なすぎるため結果として減塩が達成されている場合は、エネルギー摂取が不良になっているので、減塩よりエネルギー確保が優先されるべき」である。

「フレイル」という加齢にともなう筋力や体力の衰え。タンパク質が不足するとこのフレイルを招きやすくなる。

②運動

 「毎日犬の散歩をしているから」「毎日家事をしているから」と言ってる人は、運動量が足りていない。また、過度な運動は、心臓に負担をかけることも確か。

③睡眠

 6~7時間の睡眠が心不全のリスクを下げる。

 口腔ケアが心不全のリスクを下げる

 歯周病と動脈硬化の関係。

 歯周病菌やそれらを出す毒素が血液中に侵入すると、血管の内側の膜(血管内膜)に定着し、炎症を起こす。その後、菌や毒素は柔らかいコブのようなものになって血管内に蓄積し、どんどん内膜は厚くなる。【本文引用】

 いまや歯周病の予防や治療がとても大切であることは、社会の常識になりつつある。特に高齢者の場合は加齢によって唾液の分泌量が減少しており、本来なら唾液で洗い流されるはずの細菌が増殖し、歯周病に進行しがち。また、加齢によって免疫力が低下しているため、いっそう歯周病には気をつけなければならない。【本文引用】

 ストレス対策

 普段から苦手な人とはできるだけ付き合わないようにして、嫌な気持ちにならないよう努力。どうしても嫌なことがあったら、さっさと布団をかぶって寝よう。

 感染症を防ぐ

 日常生活に潜む急性憎悪のきっかけ。多いのが感染症。

 感染症にかかると体内では常に炎症が起こっている状態となり、炎症性サイトカインという物質が放出。心不全の患者は、炎症性サイトカインの数値が高くなっている。感染症を発症することによってさらに高くなる。炎症性サイトカインは、心不全に対して抑制的に働くため、感染症によって炎症性サイトカインが増えれば心不全は悪化。【一部本文引用】

 虚血性心疾患の再発を予防する

 虚血性心疾患を予防するためにまず必要なのは、生活習慣を見直すこと。

 虚血性心疾患を発症する確率を健常者と比較すると、「高血圧をもつ人は3倍」「脂質異常症をもつ人は4倍」「喫煙者は2倍」。

 その他には、適度な運動、ストレスを減らす、睡眠を十分に取る、ということも大切。

 「怖い不整脈」「怖くない不整脈」

 不整脈のなかには「命に関わる怖い不整脈」もある。予防のためには、普段から自分で脈を測る習慣をもつことが大事。

 自分で脈を測るのが難しい場合は、血圧計の心拍表示が点滅する様子をみて、不整脈をチェックしたり、脈拍数を確認するとよい。また、スマートフォンやスマートウォッチで心拍数を測定し、脈拍数を測ったり、不整脈を検知したりするのもよい。あるいは、市販の携帯型心電計を購入して、心電図を記録する。【本文引用】

 アドバンス・ケア・プランニング

 患者を主体に家族や近しい人、医療・ケアチームが、今後の治療や療養についてあらかじめ話し合う自発的なプロセス。

 〝心臓第一〟で日常に復帰

 心不全を発症して急性期の治療を終えたあと、「心不全を発症する前と同じように、いきなり動こうとしない」ことが大事。

 回復の早さを他人と比べない。

 これまでの生活が心不全という結果を招いたのだから、「誤っていた生活を振り返り改めるチャンス」ととらえて改善するか、「楽だから」という理由で以前の生活に戻るのか、どちらを選ぶかによって今後の人生は大きく変わってくる。【本文引用】

 心臓が健やかな人の生活習慣

 心臓病で先天性や遺伝性のものを除けば、不健康な生活習慣の積み重ねに起因している。

 心臓が健やかな人は良い生活習慣を身につけている。心臓が悪い人は、生活習慣を改めればある程度心臓を強くすることが可能だ、ということになる。

①日常生活に運動習慣を取り入れている

 心臓が健やかな人は毎日30分、速めの速度で歩いている人が多い。歩数の目安、4500歩。

②早寝、早起き

③暴飲暴食をしない

④塩分控えめな食生活

 塩の代わりにハーブや薬味を積極的に取り入れたり出汁を効かせたりして、塩が少なくても満足がいく味を作ります。ハーブや薬味は有害な毒素を排出するなどの役割も担っており、一石二鳥です。

⑤没頭できる趣味をもっている

 趣味に打ち込むことで生きがいややりがいが生まれ、ストレスの発散につながる。

⑥ストレスを溜め込まない

 心臓が健やかな人は、嫌なことがあってもすぐに忘れる能力に長けており、ストレスを引きずらない。

⑦いつも笑顔を絶やさない

⑧相談できる友人がいる

⑨友人と交流する時間をもっている

⑩夫婦仲や家族の仲が良い

 基本は「栄養」「運動」「休養」

 健康な体をつくるために重要なのは、「適度な運動」と「バランスの取れた食事」。

 栄養の状態が良く体を思いどおりに動かす。そんな状態になったときに必要となるのが「休養」。

 「休養」とは、「休む」だけでなく、アートや自然に触れることで人間性を磨いたり、感情を育んだりする「養う」の概念も大切。【一部本文引用】

   感想

 大堀さんが、心臓の治療だけでなく、心臓リハビリを北海道の自然を利用して開催していらっしゃることは、大変頭が下がります。
 心不全になったから、あとの人生、療養メインに細々と、というのではなく、生活習慣を改善して人生を楽しんで長生きしましょう、というメッセージが伝わってきて、大変興味深かったです。

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