西 加奈子さんの『しずく』を読みました。
短編集で、日々の生活での思いを正直に書いていらっしゃるように感じました。(著者の現実と必ず一致しているという訳ではないかもですが)
職場のなかでの女同士の思い、とか、同年代の同性が自分より幸せになっているのではないか、とか感じてしまう意識を描写されています。
子供、主人公の結婚相手の連れ子に対する思い。子供全般に関するうざったさ(言葉は悪いですが)、とか、子供を自分だったらこう育てるのに、と思いながら、それを他人の家庭に進言する訳にはいかない歯がゆさ、とか、心象描写が肉薄して伝わってきます。
表題作、『しずく』は、猫の視点なんですが、多分、猫たちはこういう感覚で生きているのだろうな、と思わせます。それに、人間の暮らしの方もストーリーを持って変化していく様が絡んできます。
全然、視点が別の話ですが、西(著者)さん、かなり、形容詞とか、形容に使う擬態語とかを大分吟味されて書かれていると思います。ありきたりにならないように、僕も書く時に苦心する部分です。
光文社さんのホームページに新刊として紹介してあったので図書館で目に入って借りてきました。
収録作中で、『木蓮』は、共感するところ多く、そうそう、と頷きながら読め、後半は爆笑します。(作中の子供の言動が意表を突いているから)
『シャワーキャップ』は、しみじみとします。(ああ、やっぱり年の功で、親は自分の先輩なんだなーと感じます)
表題作『しずく』は、猫が、人間のようには長く記憶を維持できない、という処が、舞台装置として効いて、最後にきて「人間って寂しいなぁ」と感じさせます。
西 加奈子さんと直接関係はない余談ですが、光文社さんの、カッパ・ワンという賞は、殆ど持ち込みの窓口のような賞なので、こういう賞が有ることは救いです。エンタテインメント性を重視される賞ですから、ストーリーの面白いものを充てないと難しいようです。
コメント
西加奈子さんは、気になっていましたが未読でした。
たしか「さくら」という小説だったかと思います。
「しずく」、読んでみようかと思います。
>sakamonoさん
僕は今回、光文社のサイトで西さんを知りました。
女性のホントの心情が、多分こうなんだろうなぁ、と僕は読んでて感じられました。