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『第一回、東京家出の記』ーーー4

 東京駅に着いた。

 金は充分にある。

 とりあえずはねぐらの確保だ。

 まずは、友達を作る動きにつくつもりだし、(デビューするにはバンド形態の方がいいかも知れないなどと思っていた)そうなれば、渋谷がいいか、と思って、僕は渋谷を目指した。

 大阪の環状線と同じように、東京の山手線は環状に走っていることは知っていた。

 しかも、他の地下鉄とかは、どう駅ごとのアクセスになっているのかまるで分からない。

 JR山手線の地図を見ると、渋谷駅はあった。

 正直、ほっとした。

 僕は、山手線に乗り、渋谷に向かった。

 人は多かったが、当時の僕は神経症でもなく、人混みも堪えなかった。(不眠症はあったが)

 渋谷で降り、泊まるところを探した。

 駅前が凄い人口密度。

 ハチ公前とか、よく、待ち合わせに使われているところなのだが、そのハチ公さえ、人だかりで見えない。

 いつの間にか、山手に来ていた。

 それが、何坂というのか今でも判らないが、とにかく坂の途中にあるシティーホテルにチェックインした。

 凄く立派なホテルだった。

 金は三十数万有る。

 焦ることはない。

 夕方四時頃からチェックインした僕は、まず、近所を歩いてみた。

 坂の途中に喫茶店があった。

 僕は、喫茶店で、マスターと喋り、「田舎からミュージシャンになる為に出てきた」と内情を打ち明けた。

「ちょうど、ウチの最近の知り合いで田舎から君と同じようにミュージシャンになると云って出てきた子が居るよ。彼、今日仕事だから、また、明日、彼と会ってみたらいいよ。しかし、最近多いね。ミュージシャンになるって出てくる子が。彼は大阪からなんだけどね」

 と、マスターは語った。

「どこに泊まってんの?」

「ええー、結構いいとこに泊まってんじゃない? 金有るんだー」

 と、マスターは言った。

 僕は、店を出て、坂の上まで歩いてみた。

 坂の頂上に音楽の練習スタジオがあった。

 ここは、都合がいいなあ、と僕は思った。

 僕は、部屋に戻り、ゆっくりしてから、渋谷の街が見下ろせる部屋でぐっすりと眠った。

*次話は、こちら→  『第一回、東京家出の記』5

*トップは、こちら→  『第一回、東京家出の記』1

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コメント

  1. 山雨さん、頑張ってグランプリに間に合わせて下さい!
     応援してます^^

  2. 山雨 乃兎 より:

    >岩上さん
    既に脱稿している作品を出そうと思っています。
    今書いてるのもありますが、完成しそうにありません。
    応援ありがとうございます。
    頑張ります。(^。^)

  3. 岩上 智一郎 より:

    頑張って下さいね~^^
     自分も「擬似母(ぎじぼ)」頑張ります

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