『無縁社会』読了(追記あり)

 NHK「無縁社会プロジェクト」取材班編著の、『無縁社会(〝無縁死〟三万二千人の衝撃)』を読みました。


無縁社会 (文春文庫)

無縁社会 (文春文庫)

  • 作者: NHKスペシャル取材班
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2012/07/10
  • メディア: 文庫

 感想は、追記をお待ちください。

 

   追記・感想

 

 ワーキング・プアの取材をした仲間とミーティングを兼ねて飲んでいたNHKのクルー

たち。そこで話題となったのは、秋葉原で焚きだしに参加していた独身男性(ホームレスの男性)と連絡がとれなく

なっていること。つながりのない社会〝無縁社会〟という造語は、その場で自然発生的に

生まれた。

 それをモチーフ(テーマ)にして番組制作のための取材がはじまった。番組は一本に終

わらず、複数回、長期に亘る面的なプロジェクトとなった。

 ひとり孤独に亡くなり引き取り手もない死を「無縁死」と呼ぶ。

 「無縁死」は、いったいどのくらい発生しているのか。

 そこに主眼が置かれた取材。その行程のなかで、取材記者たちは、「行旅死亡人」とい

う言葉に行き当たる。

 「身元不明の自殺」「行き倒れ」「餓死」「凍死」そういう死に方をして、尚かつ、親族

に連絡のつけようがない。或いは、氏名さえ本当のものなのか分からないケース。また、

親族に連絡がついても、親族が遺体・遺骨の引き取りを拒否するケースを、「行旅死亡人」

といい、その死を取材班の造語では「無縁死」と呼ぶ。

 

「核家族化」「少子高齢化」「単身世帯の増加」「生涯未婚率の増加」「共同体の喪失」「地

縁・血縁・社縁の希薄化」などが、「無縁死」の増加を引き起こしている。行旅死亡人の

数、把握できるだけでも年間三万二千人。年間の自殺者数と匹敵するか凌駕している。

 読んでいて思ったのだが、現代では、社縁という縁しかほとんどの場合なくなっている

と感じた。

 集団就職で都会に単身で出てきて、新たに家族をつくり故郷とは疎遠になってゆく。そ

んな時代を経てきている訳だが、現代でも、高校や大学卒業を機に中央に出てくるという

ケースが多いことに変わりはない。

 そこに、まだ、自分の家族を築けるのなら、まだ家族の縁というものが新たに出来るが、

生涯独身である人も少なくなくなった。

 地域のコミュニティーは希薄で、会社の人間関係がなくなると、まったくの孤独になる

訳である。

 自分から派生する家族を得ても、離婚してしまうケースも多々ある。

 本編では、仕事に没頭するあまり、家族を顧みなかった男性が離婚して、その後に長年

の仕事の無理がたたって糖尿病と鬱病を患い、孤立無援で生活保護を受けているケースが

出てきた。

 また、伴侶との死別のあと、核家族となった息子や娘のところに戻れないケースも多い。

 

 そうした事情から、アパートやマンションで一人暮らしの果てに、突然の成人病発作で

死んで、親族からの引き取りも拒否されるというケースが多くなっているのだ。

 故郷に帰ればよいとも、簡単には言えない。

 たとえば、両親は既に他界していて、たった一人の妹も今は嫁ぎ先で自分の家族を持ってい

る。もともと住んでいた家は既にない。といったケースの場合、故郷に帰っても誰も親族

は居ない。

 やはり、核家族化と生涯独身と、自分の兄弟が少ないことと、自分の子供が居ないとい

うことが、人生の最期を淋しくさせてしまう。

 新しい家庭を築いている兄妹に、「迷惑は、かけられないから」という理由が、無縁死

を招いてしまう一番の理由のように感じた。

 複数の記者やクルーの編著であるこの本のなかで一番言われていた書き手の思いとは、

「迷惑は、かけ合ってこそ、社会なのではないか」という事である。

 老いたり、病気になったりしたときに、誰かに頼らなければならないのは当然のことな

のではないか、と、私も思った。

 

 行旅死亡人というのは、死体である。殺人事件なら警察が捜査するが、事件ではない。

この本編では、その行旅死亡人の身元を調べる。社縁、本籍から故郷に出向く、などして

その人の本名、人生の軌跡を探っていく。小説を読んでいるような醍醐味まで感じた。

 

 老人になって孤独なのは、辛いと思う。孤独を癒すには読書もよいが、あまり高齢にな

ってくると長い時間文字を追うこと自体が苦痛になってくる。

 そういう問題と併行して、金銭的に生活に困るという事態が大変である。セーフティー

ネットが的確に機能しないケースも多い。(ベーシックインカムという案も今でていると

ころではあるが……)

 実の子供にさえ、個人主義の風潮から遠慮してしまう。

 人生の最期が、孤独死では、剰りにも淋しい。

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