宮本太郎氏編の、『弱者99%社会(日本復興のための生活保障)』を読みました。
例によって、感想は追記をお待ちください。
追記・感想
宮本太郎氏が、ゲストを招いて対談や鼎談をする。
その記録が本編である。
感想と本編紹介は、宮本氏や他のゲスト一人ひとりの意見・提案を細かく紹介すること
はせず、本編での議論の総論という意味の意見・提案を紹介することにする。尚、私の記
憶が曖昧で本編の提案を細かく認識・把握できていないので、充分な紹介が出来ないこと
を、まず陳謝する。
社会保障を充実させて、現役世代が躓いてもたとえば再就職までをフォローすることを
完全にすべきである。と、こういう論旨だった。
老齢年金の国庫負担が大きい。が、老齢年金はどうでもいい、というわけにはいかない。
財源をどうするかだが、先日読んだ河村たかし氏の「銀行にはお金が余っているのだか
ら、国債をどんどん発行して財源を確保すればよい」との案とは真反対で、消費税を増税
して財源に充てるべき、との案だった。
しかも、消費税は、社会保障のためにだけ使う、ということを明確にして、収支報告も
国民に完全に開示すべき、という案である。
段階的な増税にはなるのはやむを得ないが、出来れば一気に高い税率にまでして、その
代わり現役世代を支えるたとえば雇用保険の充実や再就労までの勉学の費用をまかなうな
どといった、現役世代を助ける社会保障を徹底して充実させるべきである、という案であ
る。
この本だけに書かれていたことではないが、女性が結婚・出産・子育てなどで折角のス
キルを活かした総合職を辞めてしまうことは、社会にとって経済的にも大きな損出である、
と。たとえば出産・子育ての子供が幼いうちの時期を長期休職として会社に在籍させる。
その間の本人への保証も会社側への保証も、国の社会保障でまかなう、という案である。
こういう保障を充実させると、各家庭の経済がバックアップされるので、少子化の抑止に
も繋がる。
現役世代三人で一人の老人を支える、という図式が、近い将来1.何人で一人を支える
という肩車型に推移しようとしている。
企業の雇用形態も、正社員の数が減って、正社員に責任のある多量の仕事が任されるよ
うになり、オーバーワークから、彼らが、いつ精神的病などになって脱落してもおかしく
ない。現在でもそういう脱落組が多量に発生している。
これでは、老齢年金を到底維持できない。
脱落組が社会復帰できるまでの保障をする。などを充実させて、その代わり消費税を大
幅に上げる。そうしよう、と。国債の発行で財源をまかなうやり方だと、将来の世代につ
けを回すことになるだけだ、と。
社会保障と経済の相乗的発展も論じられている。社会保障を充実させるだけでは明るい
将来は期待できないからだ。
未来への投資としての「次世代教育」。「家族による子育てか、社会による子育てか」
という対立図式ではなく、として理想の形を議論されている。詳細は本編に譲る。
この本で新しく知ったこととしては、社会保障は金食い虫ではない、ということ。資金
の循環ということでは、年金基金で100兆円以上の金が株式や債券に使われ、潤滑油と
しての大きな役割を果たしている、ということ。【一部本文引用】つまり、集めた金を運
用して利益も出しているということですね。
発達障害を例に、障害者の保障も外国と比べて手薄である、と語られる。雇用支援も充
実させるべきだと。女性の出産・育児のあいだで就労が途切れてしまう問題も、この障害
者が、あと少し社会のバックアップがあれば働ける人もいる、という問題も、こういうカ
テゴリーの人を雇用へとバックアップすることが、社会の経済も押し上げ、年金の負担の
担い手を増やすことにもなる。
内閣府の国民生活選好度調査(2010年3月)では、我が国は外国に比べて高齢世代
で「自分は幸せ」と感じている人の割合が低い。外国に比べても社会保障支出が年金など
高齢者向けに集中していながら、この結果である。
最近の「幸福」に関する研究においても、一定の経済力を持つと、それ以上の幸福感を
決定するのは所得ではなく、人のつながりだということが言われています。【本文引用】
昔ながらの向こう三軒両隣というようなコミュニティーを復活させる必要はないが、新
しい形の種々の集合体が出来るべきだし、それに参加することで幸福度も上がる、という
論旨だった。
感想として思うのは、日本には宗教の礼拝や集会に参加する習慣がない。あっても少数
派である。礼拝や集会がメインなのだが、礼拝や集会以外でも、同じ信仰を持つ人同士が
語らうコミュニティーが出来るものである。向こう三軒両隣のつき合いがなくなって、社
縁と核家族の縁しかない世の中になってしまったけれども、ボランティアや趣味の集まり
などもこれからは人付き合いの要素になるだろう。
本編は膨大な内容量なので、枝葉末節は本編に譲ることにする。是非、本編を読んでい
ただきたい。
感想としては、本編内容に首肯した、としかならない。
社会保障を充実させることは、正社員はその多くのパーセンテージを負担しているし、
尚かつオーバーワーク気味で、いつ脱落してもおかしくないのが現状なので、現役世代を
しっかりフォローする要素を盛り込んだ老齢年金だけでなく障害者支援も育児休養保障も
雇用保険も盛り込んだ一体型の保障にすることを打ち出して、その財源として消費税を上
げ、収支報告も国民に完全に開示することが良案である、と思った。消費税を社会保障費
を捻出するためだけの税にして、現役世代への保障も盛り込み、現役世代に納得して
もらった上で増税するのである。早い段階で高い税率にし、保障の必要なところ
には行き渡るようにし、それ以上増税する必要がなくなるように社会の経済を
強化することも同時にしなくてはならない。(少子化を食い止め、就労人口を増やす)
ということも、それに含まれる。
以上である。
コメント
消費税 増税 を どうすべきか。
消費税を上げると、国の全体の税収が減るそうです。 景気がわるくなって、所得税収益、法人税収益が、極端に落ちるから、全体の税収もがた落ちになるとか。 社会保障目的税と、明確に名称を決めて、消費税は、全部社会保障費に充てるのが筋ですが……。 それでも、国が財政危機なのに、全体の税収が減るのだから、現実的には、社会保障費だけに充てることが出来なくなりますね。 私の立場から言うと、消費税増税したら、障害基礎年金の支給額も上げてほしいですね。普段の買い物が、増税によって高くなるのですから、財布はきつくなります。 サラリーマンの場合、景気がよくなって、その上で増税された品物を買うなら、今よりいいでしょうが、給料が減って、その上に増税だと辛いですね。 消費税は、万人に影響しますから。 外国には、消費税率の高い国がありますが、社会保障が充実しているそうですが、景気はどうなんでしょうね。 弱者のことだけを考慮しても、一般の人に不満が出る。全体の景気が良ければ、弱者はお零れに預かることも出来る、とも言えますし。 僕のなかでも、考えが二転三転しました。この消費税増税の問題については。 消費税増税するなら、一気に20パーセントにまでするのが筋ですね。しかも、今、財政が苦しいから社会保障の充実は後まわしにして、という増税も、筋が通りません。 資本主義だから、企業が元気にならないと、楽しい社会にはならないでしょうね。 財政破綻は、現実には起こらないのだし、小さな政府で、消費税増税はストップして、景気のもっと上がるのに任せましょうか。 今までに読んだ本の、二つの対立する意見については、下記にリンクを張っておきます。 『復興増税の罠』(河村たかし氏著) 『弱者99パーセント社会』(宮本太郎氏編) うーん、弱者は、国からだけしか助けてもらえない無縁社会が悪いとも言える。(物乞い、も、昔は一つの社会的立場として認知されていた、と思うのだが) そういう風潮だから、社会保障費を云々、と声高に言わねばならない時代なのだろう。 では、また。