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職務質問記事3

 職質の記事は、これで最終です。

 

 一回目の家出のとき、ミュージシャンを目指して圧延所の期間工をしていたのですが、

宗教の寮に来ないか、という話に乗って仕事も辞めてころがりこんだことがありました。

 住むところさえ確保できていれば、喫茶店でアルバイトでもして、

身体の負担を軽くして、ミュージシャンを目指そう、と思ったのですが、

寮にはいってみると、「きちんとした仕事に就きなさい」と諭されて、

ミュージシャンへの夢も諦めるように指導されまして、

「話が違うじゃないか。こんなことなら圧延所をつづけるべきだった」

 と思ったものでした。

 宗教の先輩方には逆らえない雰囲気ができていたので、(寮を出たい、とも言ったのですが、とりあってくれません)

仕方なく、面接に行く日々を送っていました。

 一件面接を終えて、誰もいない昼間の寮に戻ってきて、

昼食の買い出しに、自転車で出かけたときのことです。

 ああ、このまま実家に帰ってしまおうか、などと思いながら駅の近辺をうろうろもしていました。

 その動線が不自然だったのでしょう。制服で自転車に乗った警察官に呼び止められました。

「ちょっと、君、この自転車、君の自転車?」

「いえ、寮で借りてるんです」

「ちょっと、そのチェーンロック外してみて」

 実家に帰りたいなぁ、などと思って、アテもなくふらふらと自転車を漕いでいたのです。

 目的を持たないで走っている、その様が、警察官には不審に思えたのでしょう。

 盗難車だと、疑ってかかっているのですね。

 寮生から、ダイヤルロックの番号は聞いていたので、すんなりとチェーンロックは開きました。

 警察官の顔から、不審の表情が消えました。

「ところで、君、どこへ行こうとしてたの?」

「いや、今日は面接終わったんで、パンでも買おうと思ってたんです」

「君、この辺じゃないの? どこかから出てきたの」

「兵庫です」

 ミュージシャンになりたいことも話したと思います。今、寮にはいってしまってにっちもさっちも行かなくなったことも。

「君、実家に帰ったほうがいいよ。……それで、警察官になったらいいよ。君の性格なら」

 結局、その後すぐ、実家に帰るのですが、警察官にはなりませんでした。

 二十二歳のころでした。

 今では、もう、成りたいと思っても年齢的に無理ですが……。

 優しい、若いおまわりさんでした。

*職務質問記事1は、こちら→  職務質問記事1


コメント

  1. 山雨 乃兎 より:

    >ビター・スイートさん
    ナイスを有り難うございます。(^。^)

  2. のりおちゃん より:

    いい話じゃないですか。少し期待を裏切られましたが・・・。ハードボイルドな展開を予想していたので。しかし、街に住むともっと経験していたのかもしれませんね。滞在が短期だとね。話は変わりますが、殴り合いの喧嘩をしたことってありますか?その時は一方的に殴られましたか。

  3. 山雨 乃兎 より:

    >のりおちゃんさん
    殴り合いの喧嘩は、兄弟でよくしました。だから、他人とはしなかったのだと思います。(どれだけ相手を傷つけるかが分かるので)
    サイドバーの内部検索の窓に、「殴りあい」と入れれば、当該の記事が出ます。(漢字とひらがなの比率を遵守してくださいね)

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