職質の記事は、これで最終です。
一回目の家出のとき、ミュージシャンを目指して圧延所の期間工をしていたのですが、
宗教の寮に来ないか、という話に乗って仕事も辞めてころがりこんだことがありました。
住むところさえ確保できていれば、喫茶店でアルバイトでもして、
身体の負担を軽くして、ミュージシャンを目指そう、と思ったのですが、
寮にはいってみると、「きちんとした仕事に就きなさい」と諭されて、
ミュージシャンへの夢も諦めるように指導されまして、
「話が違うじゃないか。こんなことなら圧延所をつづけるべきだった」
と思ったものでした。
宗教の先輩方には逆らえない雰囲気ができていたので、(寮を出たい、とも言ったのですが、とりあってくれません)
仕方なく、面接に行く日々を送っていました。
一件面接を終えて、誰もいない昼間の寮に戻ってきて、
昼食の買い出しに、自転車で出かけたときのことです。
ああ、このまま実家に帰ってしまおうか、などと思いながら駅の近辺をうろうろもしていました。
その動線が不自然だったのでしょう。制服で自転車に乗った警察官に呼び止められました。
「ちょっと、君、この自転車、君の自転車?」
「いえ、寮で借りてるんです」
「ちょっと、そのチェーンロック外してみて」
実家に帰りたいなぁ、などと思って、アテもなくふらふらと自転車を漕いでいたのです。
目的を持たないで走っている、その様が、警察官には不審に思えたのでしょう。
盗難車だと、疑ってかかっているのですね。
寮生から、ダイヤルロックの番号は聞いていたので、すんなりとチェーンロックは開きました。
警察官の顔から、不審の表情が消えました。
「ところで、君、どこへ行こうとしてたの?」
「いや、今日は面接終わったんで、パンでも買おうと思ってたんです」
「君、この辺じゃないの? どこかから出てきたの」
「兵庫です」
ミュージシャンになりたいことも話したと思います。今、寮にはいってしまってにっちもさっちも行かなくなったことも。
「君、実家に帰ったほうがいいよ。……それで、警察官になったらいいよ。君の性格なら」
結局、その後すぐ、実家に帰るのですが、警察官にはなりませんでした。
二十二歳のころでした。
今では、もう、成りたいと思っても年齢的に無理ですが……。
優しい、若いおまわりさんでした。
*職務質問記事1は、こちら→ 職務質問記事1
コメント
>ビター・スイートさん
ナイスを有り難うございます。(^。^)
いい話じゃないですか。少し期待を裏切られましたが・・・。ハードボイルドな展開を予想していたので。しかし、街に住むともっと経験していたのかもしれませんね。滞在が短期だとね。話は変わりますが、殴り合いの喧嘩をしたことってありますか?その時は一方的に殴られましたか。
>のりおちゃんさん
殴り合いの喧嘩は、兄弟でよくしました。だから、他人とはしなかったのだと思います。(どれだけ相手を傷つけるかが分かるので)
サイドバーの内部検索の窓に、「殴りあい」と入れれば、当該の記事が出ます。(漢字とひらがなの比率を遵守してくださいね)
(朝日を忘れた小説家)山雨乃兎[やまめ のうさぎ]のブログーーー総合目録
トップページを固定しています。最新記事は、(<<)ボタンで、ひとつ戻ってくださいね。 桜2013 こちらもご覧ください。→ 小説家、山雨乃兎の副業、『稲見商会』 このブログで真っ先に読むべきは、『ラフに語る、つれづれ記』です。 その後、全体を俯瞰するには、こちらのサイトマップをご覧ください。 現在、休筆中です。(アフィリエイト強化のため) ↑こう一旦は宣言したのですが、休んだのは二日ほどでした。相変わらず、毎日書いています。 ブログに掲載している作品は、ごく一部です。一旦賞に落ちた作品です。四ヶ月で200枚くらいのペースで、200枚程度の中編と300枚越えの長編を、九年間書きつづけていますので、短編も含めて、もう、何作書いたかは、忘れました。最長編は、606枚でした。 閲覧には、余分な緊張の必要がありません。 それが、ブログというツールの優れたところです。 どうぞ、ごゆっくり。(^^:; 1ページの表示記事数を、一件に戻しました。写真は、ほとんど200万画素、「軽い!」「表示が速い!」山雨のブログを、これからもご愛顧くださいね。 拙著『壁蝨(だに)』も、ご購読ください。 もし、このサイトに戻ってこれなくなったら、「山雨乃兎(やまめ のうさぎ)」で検索してみてくださいね。 よろしくお願い致します。 山雨乃兎 山雨フリークの方に、こっそりお伝えします。 このブログの記事を、隅から隅まで読むには、月別アーカイブがお薦めです。 現在の月別アーカイブは、こちら です。 【8件表示にしたので、動作が軽くなりました!】 執筆中の著者 山雨乃兎(やまめ のうさぎ)とは?↓ プロフィール(↑ ご覧になったあと、バックスペースキーで、戻ってきてくださいね) 山雨乃兎(やまめ のうさぎ)詳細プロフィール 本名、稲見良一。1963年6月6日、兵庫県西脇市に生まれる。二回の東京への家出時期を除いて、現在も、西脇市在住。 高卒。男性。現在独身。妻とは死別。 中学時代は、三年間吹奏楽部に在籍。担当楽器はトロンボーン。 三年生の時、友人たちの推薦で部長に抜擢される。同年、同部は全日本吹奏楽コンクール東播大会金賞受賞。 幼年時より、プロ...