トイレの戸を開けた。
ねずみが居たので、威嚇して閉じ込めた。
用を足してねずみが逃げ出さないように、急いでふたたび戸を閉めた。
それが、昨日の十一時のことである。
朝起きて、トイレの戸を開けると、便器にねずみがいてこっちを見ていた。
退治するのはこのときとばかり水洗をながした。
が、排水溝につまって水があふれだした。
仕方なくすっぽんでねずみをとったら、すでに溺死していた。
お騒がせのねずみを退治したわけだが、ゴミ袋に入れて棄てるには回収の日まで遠い。
ねずみが腐ってきたら衛生上よくない。
そう考えて、玄関先でねずみを燃やした。
そこへ、Bさんがやってきた。
「山雨、何しょんどい? 朝から」
「いや、ねずみ燃やしよるねん」
「ほーん、どうでもエエけど。何か、オモロイ話ないこ」
「別に、これといってないよ」
「それ、食えんのこ?」
Bさんは、面白くなかったらしく早々にかえっていった。
こんなもん食べたら、病気になるよ。
おれは、悟った。
ねずみを燃やしても、全部灰にすることは無理だと。
それで、途中まで燃えたやつを土中に埋めることにした。
だけど、近頃は、どこも舗装されているので穴を掘る場所がなかった。
仕方がないので、家の庭に埋めた。
長年我が家の食材を食べて丸々と肥ったねずみ。
太く短い生涯だった。
最期はあっけなかったな。
南無阿弥陀仏。