横田増生(よこた・ますお)さんの、『ユニクロ潜入一年』を読みました。
例によって、感想は追記をお待ちください。
追記・感想
この当時、ユニクロは、ブラック企業だった
ともかく、残業させすぎ。
しかも、サービス残業。
サービス残業にも二種類あるが、ユニクロの(少なくともこの本で紹介された時期は)、
残業手当が当たらない残業ではなく、タイムカードを先に押しておいて無償労働をする、
という形。
商品入荷のとき、商品を店舗に搬入する場面でも、台車を滑らす床が一部陥没したりし
ていた店舗もあって、修繕を上に依頼したこともあったそうだが、却下されるという事態。
著者が新宿の店で、外国人の免税レジへの誘導を、張り紙で英語やその他の外国語で表
してみては? という提案にも、上から却下される。
海外の下請け企業にも厳しい労働条件を
サプライヤーという外国の製造下請けの工場の労働条件もきつい。
それぞれの工場の社長の方針の場合もあったそうだが、ユニクロ本部の指示による場合
もあったようだ。1日24時間労働なんてことも。(読後の記憶が定かではないので、正
確な情報は本編に譲る)
横田増生氏のユニクロ潜入
潜入の動機
横田氏は、自身が記した本によって、ユニクロ側に嫌われ、完全に取材を断られる状況
になった。
そこで、横田氏は、柳井社長の新聞記事だったか、ともかく対外的アナウンスで、「我
が社は、ブラック企業ではない。限りなくホワイトに近いグレーの企業だ。従業員に過酷
な労働は強いていない。疑う方は、是非とも一度従業員として働いて体験していただきた
い」(正確ではないが、こういった内容)を聞いて、今回の潜入取材を思い立たれたらしい。
潜入の方法
それにしても、横田氏は、凄いバイタリティーだ。
役所に行って、本名を変えて、田中増生としてユニクロの三店舗の面接を受ける。
最後に就労された新宿の超大型店舗の総合店長との面接でのやりとりが、非常にスリリ
ングで面白い。
読んでいて、店長が一番ストレスを受けて大変だな、と思った。
ユニクロ側が週刊文春に対して名誉毀損で訴えた裁判、結局は、訴えは却下された。
横田氏の書籍や、外国のNGOの活動によって、柳井社長も随分考え方を変えてきてい
ると思われる。
社員の業務状況(環境)
ユニクロでは、サービス残業もあるが、閑散期は、出勤時間を減らすように指示される
こともある。
感謝祭(顧客に感謝する期間)の売り上げが目標に届かないことを理由に、柳井社長は、
内部誌で、「このままでは、倒産します」と従業員を焚きつけるが、実際の経営は、年間
でみれば安泰である。そういうことが従業員には隠されている。
横田氏が潜入した三店舗、それぞれでも、店長の態度は違う。
店長自らがミスをした場面で、新米の横田氏に謝ってくる店長も居た。
過酷な環境を是認する心理に導く、やりがいを与えて給与・環境を我慢させる、「やりがい搾取」
横田氏が、ユニクロの元従業員から聞き取り取材をしているうちに、”やりがい搾取”
という言葉を思い出される。頑張った従業員に賃金で報いることをしないで、「達成感
を得よう」と言うのだ。
それで、東京大学本田由紀教授の『軋む社会』を読み返される。
”やりがい搾取”とは、”ブラック企業”を語るうえで出てくる新語。給与や時給は低
い代わりに、労働者に”やりがい”という報酬を強く意識させることで働く動機づけとす
る詐略。本田教授が例として挙げた居酒屋チェーンの朝礼で幹部社員が言う言葉。「うち
はお金を稼ぐことが出来ないバイトです。でも夢を持つことの重要性を感じ、自分自身が
成長したことを感じることが出来ます」この言葉を読んでいて、私自身体験したルート営
業の仕事の本部の経営理念を思い出した。
従業員を喜ばす、または評価するなら、一番すぐにしなければならないのは賃金アップ
である、と再認識した。
横田氏の柳井社長への提案、「トップも現場を知れ!」
本編後半で、横田氏は、外国から始まった、大企業のトップに身分を隠して変装して自
社の現場で働いてもらう、というテレビ番組を取り上げ、是非とも柳井社長にも、それを
体験してほしい、と仰有っていた。
柳井社長は、ユニクロが本当に労働条件が過酷であることを知らないのではないか、と。
トップダウンの企業体質ではなく、ボトムアップの企業体質に変わるべきであると。
鷹の目線ではなく、蟻の目線を一度体験してほしい、と。
今後の企業のあり方。私の思うことを含めて
感想としては、ブラック企業を改善してほしい、と思った。過酷な労働をさせると、結
局はその人は長くつづかなくなってしまうからだ。
私の若い頃は、印刷会社は、今で言う完全にブラックだった。朝八時から始まって、終
われるのは深夜11時40分だ。休みは日・祝だけで、土曜日もフルタイムで残業ありだ
った。
今や、そんな働き方はさせてはいけない。
仕事は、毎日やる。長くつづけられることが大事だからだ。