自室でくつろいで、鼻くそをほじくっている。
私は、鼻くそをほじくりやすいように、右手の小指の爪を伸ばしている。
玄関のチャイムが鳴った。
「お久しぶりです」
同業で色々とアドバイスをしてくれている、安村だった。
「やあ、久しぶりだね」
私は、歓迎の意味を込めて、右手を差し出した。
信頼を確認する、硬い握手だった。
私は、安村を自室に招じ入れた。
「外は暑いだろう。冷たい物でも飲んでくれ」
私は、そう言って、隣室の冷蔵庫から半分残ったコカコーラの大きなペットボトルを持ってきて、グラスに注いだ。
安村は、旨そうに飲んだ。
このペットボトルは、昨夜、私が口のみした物だ。
「随分、くつろいだ空間ですね。この部屋でお仕事を?」
「まあ、そういうことだね」
「あれは、何ですか」
安村は、床に直に置いてある白い布を指さして言った。
「パンツだよ。いつでも、下着だけは新しい物にしておく習慣があってね。普段から準備してるんだよ」
嘘だった。
それは、私が、昨夜汚してしまったパンツだ。
「あの、済みませんが、タオルを貸していただけると有り難いのですが……。汗がなかなかひかなくて」
私は、部屋に常備しているタオルを、安村に手渡した。
実は、そのタオルは……。
いや、これ以上はやめておこう。



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