唐沢俊一さんの、『血で描く』を読みました。
【この本は、どんな 本? →架空の恐怖世界に引き込まれるエンターテインメント小説の本】
タイトルと装丁に惹かれました。
読みかけると、どうも架空の設定である薄幸の漫画家が、どうも僕によく似ていて、これは唐沢さん、僕のことをモデルにしたのではないか等と思って、目が離せなくなりました。
昭和の三十年代に、貸本漫画家というのが居たそうです。
そういえば、僕の町内にも、大分昔、貸本屋があったのを思い出します。
みんなが剰り裕福でなくて、本をやすやすと買えなかった時代。売る 本としてではなく貸す本として作品を書いていた作家も居たそうです。
その男、沼波恭一というのですが、これがまた僕の本名に音がかすっていまして…。
その沼波が 本も売れず妻も病気で死んで、世の中を逆恨みして死んでいくんです。
その沼波の最後の作品が、自身の血を交ぜて絵の具の足しにして書いた『血で描く』という漫画なんです。
漫画自体が生命を持っていて、作品中の沼波に 本のなかに捕らえられるというサスペンスです。
古書業界の話。せどりをしてネットで売る形態が多くなった現代のこと。売れっ子女流漫画家のプライドと自己プロモーションにかけては何でも利用するという貪欲な姿勢。
モチーフとしては、『リング』に似ていると思いましたが、読ませる作品です。
途中に、問題の漫画がストーリーを交代して描くところも安っぽくなくリアルで奇妙でサイケデリックで恐いです。
唐沢さん、僕の今までの文学賞の応募原稿とか読んだのかなぁ(本業の傍ら、下読みをしたとか)、などと一瞬思ってしまいました。
奇妙な世界に浸りたい方にはお薦めです。サスペンス(どうなるのかなぁ、という緊張感)も、永く続く作品です。
【書評ブログ 書評 This is the book review article that Yamame wrote.】
[書評記事は、本の評価を断言するものではありません。是非、本編をお読みください]
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