PR

村上龍『ワイン一杯だけの真実』読了(追記あり)

 村上龍さんの、『ワイン一杯だけの真実』を読みました。
ワイン一杯だけの真実 (幻冬舎文庫)

ワイン一杯だけの真実 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 龍, 村上
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2001/08/01
  • メディア: 文庫
 例によって、感想は、追記をお待ちください。
   追記・感想
 主人公の女たちが、人生で印象に残ったワインを紹介する短編集。
 感想としては、全話、主人公は精神疾患かトラウマを持った女性ばかりで、なにか最近
では、その方が普遍的なのかな、と思った。
 主人公とつき合う、謎の男性は、著者を投影しているのだな、と思わせる。主人公の世
話を焼いてやるが、深い付き合いはしない。
 SMや変態性欲が頻出するが、村上龍氏の日常にも、それはあるのだろうか、と思って
しまう。
 女性が、男性から変態的に愛撫されたい、という記述、心情吐露が多いが、それは現実
の女性たちの多くにも当てはまった欲望なのだろうか。村上氏が女性視点で描いているの
で、本当に当たっているのかは謎だ。
 女性は、困ったら男に頼る、という生き方が出来て、男性に比べて楽だな、と思った。
勿論、そう生きるにはプライドを捨てないといけないのだが……。
 それにしても、相変わらず、読点が少ない文章。しかもひらがなを多用するのでくねる。
 見開きをようやく読み終えて、頁をめくると、改行なしのびっしり詰めこんだ文書レイ
アウト。あーあ、しんどくなる。しかし、読んでみると文体に慣れると読みやすい。
 読者のとっての新事実、というのも、主人公の発言によって聞かされるので興味深い。
戦いに負けたときに、自分の聖地の井戸に、毒を入れるべき、という話が、とくに興味深
かった。
 最終話だけ、毛色が変わっていた。
 他の話は、すべて精神疾患かトラウマを抱えた主人公のストーリーなのだが、最終話だ
けは、快活に司会業で暮らすアラサーの女性の話なのだ。
 しかし、設定の仕掛けがあった。
 どうやら、この主人公は、すでに死んでいて、幽霊として生活しているようなのである。
 それまでの、充実した暮らし、と、レギュラーではなくなってしまった余生との対比が
面白い。
 最後に、ワインの味を、どう感じるか、という問題だが、たとえば、あの世の味がする、
という捉えられかたも、現実にもそう言われているのか、村上龍氏が作品に吹き込んだ評
判なのか、どちらでもいいわけで、むしろフィクションで書かれているならば、その創作
力に感銘する。
PVアクセスランキング にほんブログ村 新(朝日を忘れた小説家)山雨乃兎のブログ - にほんブログ村
タイトルとURLをコピーしました