岡崎祥久(おかざき よしひさ)さんの、『文学的なジャーナル』を読みました。
例によって、追記まで、感想はしばらくお待ちください。
追記・感想
Journalという言葉を、この本では「日記」という意味で使われている。
1984年以来、書き残された著者のメモ。そのメモを基に日記を起こされる。つまり、既に書いてあった日記ではなく、メモを頼りに再構築した過去の日記なのだ。
岡崎祥久(おかざき よしひさ)さんのプロフィールを拝見すると、早稲田大学第二文学部卒業後、1997年に、群像新人賞を受賞してデビューされている。
日記は、時系列通りに呈示されるのではなく、概ね三つの時期を往還する。
すなわち、1995年頃と、2001年頃と、2006年頃である。
恐らく著者は、若い内から文筆で生計を立てようという志があったのが窺い知れる。ライターの仕事をしていたように見受けられる。そんな中、それだけでは生計を立てられずに、警備員のアルバイトをした体験。バイクで全国縦断を試みられた旅行の顛末。西瓜子(ニカコ、またはスイカちゃん)との出会い。お互いのアパートへの行ったり来たりの日々。恋愛の危機。結婚生活。小説家になってからの暮らし。編集者との打ち合わせ。プラハへの西瓜子との旅行。等が描かれている。
全体的に、ほのぼのとした情感が伝わってくる。おそらく著者の暖かい性格がそのまま文面から伝わる所為だろう。
まえがきにも紹介されているが、基のメモは本当にメモでしかない。日付と、その日に行った所と買った物ぐらいしか書いてないのである。それを基に、日記は現在形で書き起こされている。
時系列通りに日記を並べないことが却って、著者の輪郭を浮かび上がらせる。
普段の、例えば電車での移動のときに雑踏の中に居て他人をどう意識しているか等が赤裸々に語られる。蘊蓄も厭味ない程度に挟まれている。
僕としては、「そうそう、これ、僕と同じ、分かる分かる」という箇所もあって、読んでいて愉しかった。
爆発的に笑えるところもあった。
僕の『壁蝨出版までの断章』というのも、メモを纏めて加筆したものだが、こういう手記を取捨選択して他人に愉しんでもらえる作品に編纂するのは、著者さんも愉しかっただろうと思う。その楽しさが読み手に伝わるから好循環だ。
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