原作・リリー・フランキーさん 脚本・松尾スズキさん 監督・松岡錠司さん 主演・オダギリジョーさん 樹木希林さんの、映画『東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン』を観ました。
例によって感想は、追記をお待ちください。
追記・感想
【注意・この感想には、ネタバレが含まれています。】
オダギリジョー、何て演技が上手いんだ。しかも、様々な映画に出ている。改めて尊敬し直しました。
樹木希林の、抗がん剤治療の苦しみを表現した演技は、完璧でした。
松たか子演じる、主人公の恋人。どうして二人が最終的には別れることになったのかは不明でしたが、別れても尚、お母さんの前で続いているふりをする気遣い、この設定が却って現実味を増していました。
主人公のボク、も、オカン、も、それぞれに若いとき(幼い頃)の再現として別の役者が演じています。
そのオカンの若い頃を演じている役者が、顔の造りが樹木希林にそっくり。よく捜してきたな、と思いました。
ストーリーは、他の女とも関係を持ち、家庭を顧みない父。そこで母は、離れて生活することにする。
父は、色んな仕事に変わる生き方。それも雇われるのではなく自分で仕事をやっている。この生き方が、後の主人公の生き方にも影響したのかもです。
母は、親戚の小料理屋を手伝ったり、内職をしたりしてボクを育てます。
高校から地元を離れる主人公。大学は、武蔵野美大へと進みます。
「男は、早い内から外へ出たほうがいい」という父の言葉に首肯しました。
ところが、高校・大学と、主人公は勉強をほとんどせず、自堕落な生活に浸ってしまいます。
留年しそうで、もう中退したいと電話で告げる主人公に、母は、留年してでも卒業しなさい、と諭します。
無事に卒業できたのですが、それから、就職もせず借金して遊ぶ生活になります。
母が癌の手術を受けたのを知ってから、経済的にももうどうにもならなくなっていた主人公は、様々な仕事、ライティングやイラスト作成や美術スクール講師などをやっていきます。
借金を完済し、生活に余裕も出てきた頃、母を東京に呼び寄せます。
母は、主人公のこちらの友達たちとも打ち解けて、楽しい数年間がつづきます。
そして、母の以前の手術で取り切れなかった腫瘍が大きくなり癌化していることが発覚し、母の闘病生活、抗がん剤治療とあって、最終的にはお亡くなりになる。
母と主人公と恋人で、外から東京タワーを見ていた夜、「いつかみんなで昇りたいね」と約束していた。
亡くなった母の位牌を抱き、元恋人と一緒に東京タワーの展望台から東京を眺める。
これが、おおまかなストーリーです。
感想としては、ともかく泣けますので、泣きたい方にはおすすめです。人間の充分なストーリーが描かれたあとで、その人が死んでいく物語は、必ず泣けますね。
抗がん剤治療の苦しみのシーンが、強烈でした。
あんなに辛いのなら、途中で止めたのも無理ないことです。
余命を知って、回復のための治療は断って、臨終まで生きる、そういう生き方もアリだな、と思えました。一昔前なら、医師はなるべく長く生きられる治療を強引にしたでしょうが、そういう治療が本人のためとも限りません。
お母さんを東京に呼び寄せるシーンで、お母さんが一人で東京まで出てくるシーンを見ていて、新幹線があるからこれが実現するんだなと思いました。
日本が高度経済成長を遂げたのは、こういう意味でもいいことです。身体が弱っていたり高年齢でも、新幹線なら数時間で移動できます。
平栗くんという高校からの友達が、高卒で地元で就職していたのに、ダンサーを目指して上京してきます。地元を離れるパターンには、このパターンもあるな、と思いました。僕も、このパターンで一度東京へ行ったのですが……。
お母さんを東京に呼び寄せてからは、しばらく主人公と友達大勢での歓談が描かれますが、主人公は交友が広いな、と思いました。関係性が数年以上つづく友達が五人以上居ます。主人公のように、人に好かれる人間にならねばな、と思いました。
この主人公のように、美大出身を活かして、まずはイラストの仕事を獲得し、話があればチャンスを逃さずコラムも書いてみる。紙媒体ライターは、出版社に訪問してライターを名乗り、仕事をくださいと打診する。そうやって仕事の種類と量を増やして一人前に食っていけるようにしたのは、凄いことだと思いました。まずは食えてないから、目先の金のために自分の出来ることをすべて受注する、こういうことを最初にやったのでしょうね。
オカン(お母さん)は、息子が無事、大学を卒業してくれたことが一番嬉しかったのでしょうね。自分が生活費や学費を工面してやって卒業させたというのが、心の中で誇りなのでしょう。息子の卒業証書を見る、樹木希林の演技に、それが顕れていました。
この映画を通して、原作者リリーフランキーという人の人物像が理解できたと思います。
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