へんこつなおっさん

 敬意と愛着を込めて、へんこつなおっさん、と呼ばせていただきます。
 僕が幼少の頃の話です。
 同じ町内のとある坂の途中に、模型屋さんがあったんです。
 プラモデルなんかを売っている店です。
 小さな店内に、模型の完成品とプラモデルがぎっしりと並べられています。
 ワクワクした気分で通ったものでした。
 でもね、あまり長時間、何も買わないで見ていると、
「あんたら、見るだけやったら帰り」
 と言われます。
 僕は、ミニカーを買いましたね。
 車のプラモデルも買いました。
 それでね、或る休日、昨晩雨が降って、家のまえの溝が増水して水が勢いよく流れていまして、
それをみて、僕、舟を浮かべて遊びたくなりまして。
 カップラーメンのカップで、舟を作ろうと思ったんですね。
 ただ流されるだけの舟では、面白くない。
 この水の勢いに抗って、上流に進撃する舟にしたかったんですね。
 ということは、駆動力が要りますね。
 モーターは、持っていたので、あとはスクリューだけですね。
 それで、スクリューを買いに、例の模型屋に行ったんですね。
「スクリュー、欲しいんですけど」
 と言うと、おっさんは、現品を出してくれましたが、
小さいんです。
 そら、舟の下部につけるスクリューだから、小さいのは分かりますが、
そんなのでは、川を上れない、と思ったんです。
 ふと目の前の陳列棚の横を見ますと、大きなプロペラが。
「いや、これにします」
「それは、飛行機のプロペラや。舟のスクリューいうたら、こっちや」
「いや、川に浮かべて遊ぶだけなんで、これでいいです」
「アンタ! 舟つくるのか、飛行機つくるのか、どっちや」
 と言って、おっさんは、プロペラは売ってくれませんでした。
 飛行機のモーターは、大体、プロペラに直結です。
 舟のスクリューは、ジョイント部があって、モーターはその奥です。モーターが水に濡れないようにとのことから、そうなっているのです。
 でもね、舟のスクリューにプロペラを使って、舟の底のたった1枚のカップ容器の厚さで直結して、
もしかして、或る程度浸水しても、たかが3ボルトほどのことです。危険はありません。
 スコッと遊ばせてくれよ、と思いました。
 大体、客が買いたいと言ってるのだから、「売れば」ですよね。(笑)
 そこで、僕は、出直して店に行って、「飛行機を作ります」と、嘘を言って
プロペラをゲットしました。
 カップの舟は、結構遊べましたよ。

コメント

  1. sakamono より:

    ウチの近所にも、小さな模型屋さんがあって、いつも
    鼻唄を歌ってる、ちょっとおもしろい感じのおじさんがいました^^;。
    子供の頃の思い出です。

  2. 山雨 乃兎 より:

    >sakamonoさん
    模型を見に行くだけでも愉しかったですね。
    風変わりな店主、昔は大勢いました。
    また、お寄りしますね。(^。^)

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